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ケムステしごと

研究リーダーがPJを成功に導く秘訣

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研究者が民間企業での面接において将来の展望について質問をされると、いずれは研究部門をまとめるリーダーと回答される方は多い。どの職種においても、人を動かし、組織を動かす力というのは目指すべき方向としては真っ当である。ただ「研究のリーダー」と言っても、求められる能力は変化してきている。

昨今、大手製薬企業においても、研究開発から上市まで自社でコンプリートする開発スタイルではなく、基礎研究や開発の段階でベンチャーやアカデミアと連携しながらPJで動くスタイルは非常に多い。また自社内でもポートフォリオマネジメントや研究企画の部門など、研究開発、マーケティング、営業、管理部門など異なった専門性をもった人たちが集まって仕事をする機会は少なくない。さらに目覚ましい技術革新に伴い、ウェアラブルデバイスやAI創薬など、自社内で完結せず、社外の専門家とチームを組んでPJ単位で働くことは今後ますます増えていくだろう。そのため、アカデミアでも企業でも、メンバーが皆研究員というチームより、そうでない場合のマネージをする機会は、今後さらに増えていく。今回は専門が異なるメンバーで構成されるチームを率いるリーダーにおいて、経営者が求める資質について考えてみたい。

1.開発サイドにはfact(事実)、営業サイドはストーリーで動かす

同質のメンバーだけのチームより、異質なメンバーのマネージはいうまでもなく難しい。

メンバーのそれぞれのバックグラウンドが違うので、仕事における価値観も違う。

チームとして成果をだしている、ある新規事業部門のリーダーの方にお話を聞いた際、

同じ指示をするときも、研究開発などの技術系のメンバーと、営業サイドのメンバーには話し方を変えているという。例えば、顧客から急な仕様変更を依頼されたとき、技術系には「fact(事実)」を中心に伝える。数値や写真などを用いながら、具体的に起きた現象について出来るだけ細かく情報を伝えるのがコツだ。PJ開始当初はボイスレコーダーや現場の動画まで使用していたそうだ。技術には強い拘りがあるタイプが多いため、プロダクトが不具合となれば徹底的に問題を解明してアクションを起こしてくれる。

それに対して、営業サイドは顧客、技術担当、事務担当など様々な関係者の利害を調整しながら動く役割のため、点ではなく、線で発想することが多い。「このままだと顧客側ではコストの面でも負担が大きくなり、そうすると資金担当者からおそらく別分野のコスト削減の依頼がくるだろう。そうなると技術サイドにも影響がでて品質を保てなくなるかもしれない」等、全体の関係性の中で何が起きるかというストーリーを中心で話した方が響くという。

こうした職種ごとの特性を理解したリーダーがいると、部門間のコミュニケーションが円滑になり成功が近づく

2.「よいプロダクトだけでは不十分である」という視点をもっているか

かつてApple社のiPodが大ヒットした背景として、プロダクトが良いだけではなく、その卓越したデザイン性だと言われている。これは徹底的にユーザー目線にたった開発の結果である。当時MP3プレーヤーは他にも多数あり、技術だけでは成功しなかった。もちろん、研究開発サイドのミッションはよいプロダクトを創る(あるいは研究成果をだす)ことだ。しかし、よいプロダクトが出来たことが、ビジネスとしてすぐに成功することを意味しない。そこで営業サイドは、顧客の声を良く聞いて本質的な課題を見つけ出し、それを解決していく必要がある。よく現場で耳にするのは営業からプロダクトの変更の提案をすると、研究サイドから「プロダクトについては自分たちが一番分かっているから口を出さないでほしい」「顧客を納得させられないのは営業サイドの問題なのではないか」という意見である。こうした議論は度々起こることが想定されるが、重要なのはプロジェクトを統括するリーダーが、原点である「顧客の本質的な課題解決になるのはどうすべきか」という発想を持って指揮をとれるかどうかである。すばらしい技術を持っている技術者や研究者はもちろんリスペクトするが、その他の営業や事務や経理などそれぞれの役割を専門家の意見として平等に評価することが結果に繋がっていく。

3.ドリームブレーカーではないか

経営者の方に採用したくないタイプの人を聞くと「他人のアイデアの批判ばかりして行動しない人」とよく言われる。いかにも批評家然として出来ない理由を論理的に説明したり、分析したりするが、自分自身はアイデアがない。面接でも意外にこのような評論家のように話をされる方がいて、やはり企業には難色を示されてしまう。なぜならこうしたタイプの人がチームにいると、まわりのやる気を著しく低下させ、全体のモチベーションがなくなり、ついには生産性が落ちるという悪循環を招くことを経営者はよく知っているからだ。みんなの夢を壊すドリームブレーカー。ましてマネージャーがこのタイプだとまず上手くいかない。チームを率いて、研究成果をビジネスに繋げるマネージャーに求められるのは、共感できる夢やビジョンを語れる人だ。メンバーの気持ちをもりあげて、自主性を引き出せるような人と一緒に働きたい。面白い製品やサービスを開発している経営者や新規事業部門のプロジェクトリーダーには、このドリームブレーカータイプはあまりいないのではないかと思う。そもそも面白いと顧客の心を動かせることができるのは、まだ世の中に無いものだからであり、世の中にないということはまだ誰もその分野に手を付けていないという意味だ。真っ新な市場で前例がないことを「チャンス」と思って試行錯誤する人と、「リスク」と思って全力で出来ない理由を分析する人。技術をビジネスにする上で、リーダーに求められるマインドは明らかに前者である。

 

こうした資質はリーダーシップが求められる時代において重要視されることは間違いないし、どんなポジションであっても経営者が面接時に見ているポイントでもある。

まとめ

<成功しているプロジェクトリーダーの資質>

  • 職種や相手の特性を理解したコミュニケーションをとること
  • 顧客の「本質的な問題解決」を理解して指揮をとること
  • 自らがドリームメーカーになること

今回ご紹介した事例以外にも、たくさんの職種で実績事例があります。製薬・化学・バイオ業界での転職をお考えの方はぜひLHH転職エージェントまでお気軽にご相談ください。

[文]太田 裕子(おおた ひろこ) [編集] LHH転職エージェント(アデコ株会社)

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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