[スポンサーリンク]

日本人化学者インタビュー

第59回―「機能性有機ナノチューブの製造」清水敏美 教授

[スポンサーリンク]

第59回の海外化学者インタビューは日本から、清水敏美 教授です。独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)・筑波ナノアーキテクトニクス研究センター(NARC)の所長を務めています。彼の研究は両親媒性モノマーの自己集合による高軸比ナノ構造の非共有結合合成と構造解析に焦点を当てています。とりわけ現在は有機ナノチューブ材料の開発に従事しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

「趣味は何ですか?」と聞かれたら、切手収集、音楽、ガーデニング、スポーツなどと答える人が多いと思います。私の趣味は化学です。複雑な数式や電気回路、生体系は苦手です。化学は心に残るものであり、身近なものとして育ってきたように感じます。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

長距離トラックの運転手です。車を運転して、長い旅をするのが好きです。特に、運転前に地図を見て、目的地までのベストルートを見いだせれば、達成感でいっぱいになれます!もっとも、最近はカーナビが自動で教えてくれるようになりましたが。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

化学が社会・産業・人類に貢献できることはというと、安全・安心な製品の提供が含まれるでしょう。例えば、分子の自己組織化によって生成され、役割を果たした後に分解される有機物質は、有害な影響を及ぼすことなく、生体や環境に安全に吸収されていくはずです。これを念頭に置いた有機ナノチューブの工業化を現在精力的に進めています。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

現在を生きている我々自身が歴史をつくっているわけですから、歴史上の人物とはできれば食事をしたくありません。彼らと私たちとでは生きる時代が違うので、共通するホットな話題もありません。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

最後の実験はいつだったかと実験ノートを振り返ってみると、1995年10月23日に、様々なペプチド含有合成脂質の示差走査熱量測定を行ったものが見つかりました。当時は結果がどうであれ、形態を変えず、分子自己集合を基盤に機能性脂質を重合させたいと考えていました。しかし、どういうわけかノートはここで終わっています。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

1冊持って行けるなら、非常に詳細な世界地図帳がいいでしょう。無人島に流されても地図が見られるので、頭の中で世界を旅したいですね。

CDは、Brothers FourPeter, Paul & Maryなどのアメリカン・フォークソングがいいですね。学生時代に、アメリカン・フォークソングや日本民謡を歌っていたのです。

 

原文:Reactions – Toshimi Shimizu

※このインタビューは2008年4月11日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第88回―「新規なメソポーラス材料の創製と応用」Dongyuan…
  2. 第26回 有機化学(どうぐばこ)から飛び出す超分子(アプリケーシ…
  3. 第160回―「触媒的ウィッティヒ反応の開発」Christophe…
  4. 第95回―「生物学・材料化学の問題を解決する化学ツールの開発」I…
  5. 第100回―「超分子包接による化学センシング」Yun-Bao J…
  6. 第33回「セレンディピティを計画的に創出する」合田圭介 教授
  7. 第42回―「ナノスケールの自己集積化学」David K. Smi…
  8. 第四回 期待したいものを創りだすー村橋哲郎教授

注目情報

ピックアップ記事

  1. 二酸化セレン Selenium Dioxide
  2. ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド : Bis(tricyclohexylphosphine)nickel(II) Dichloride
  3. マテリアルズ・インフォマティクスの基礎知識とよくある誤解
  4. 【悲報】HGS 分子構造模型 入手不能に
  5. フェティゾン試薬 Fetizon’s Reagent
  6. 付設展示会に行こう!ー和光純薬編ー
  7. 【大阪開催2月26日】 「化学系学生のための企業研究セミナー」
  8. 触媒化学を基盤に展開される広範な研究
  9. 複雑な化合物を効率よく生成 名大チーム開発
  10. Elsevierのニッチな化学論文誌たち

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年2月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
242526272829  

注目情報

最新記事

ブテンを原料に天然物のコードを紡ぐ ―新触媒が拓く医薬リード分子の迅速プログラム合成―

第 687回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 有機合成化学教室 (金井…

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP