[スポンサーリンク]

一般的な話題

有機合成化学協会誌2020年2月号:ナノポーラス スケルトン型金属触媒・フッ化アルキル・2,3,6-三置換ピリジン誘導体・ペプチドライゲーション・平面シクロオクタテトラエン・円偏光発光

[スポンサーリンク]

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2020年2月号がオンライン公開されました。

なんちゃらウイルス関連の出来事が連日ニュースとなっていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
そっちも大変だけど、○論が大変!!というひとも多いかもしれません。

有機合成化学協会誌、今月号も盛りだくさんの内容となっています。キーワードは、「ナノポーラス スケルトン型金属触媒・フッ化アルキル・2,3,6-三置換ピリジン誘導体・ペプチドライゲーション・平面シクロオクタテトラエン・円偏光発光」です。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

追悼:野崎一元会長を偲んで

中部大学総合工学研究所 センター長 山本 尚 教授による追悼記事です。

2019年9月25日、野崎一教授がお亡くなりになりました。有機化学に関わっているひと、合成化学を行っているひとで、直接的ではなくとも野崎先生の御功績の恩恵を受けていないひとはいないんじゃないでしょうか。

それくらい、化学の発展に対する貢献が甚大であった先生であることを、追悼記事を読んで改めて感じました。

心よりご冥福をお祈りいたします。オープンアクセスです。

巻頭言:ゼロから始めるということ

今月号は東京農工大学大学院農学研究院 千葉 一裕 教授による巻頭言です。

何かを始める第一歩を踏み出すことこそが重要かつ難しいのであり、新規テーマを日々考える人たちへのエールとなる内容になっています。オープンアクセスです。

ナノポーラス スケルトン型金属触媒の開拓と有機合成への応用

山本嘉則

2018年度有機合成化学特別賞受賞

*東北大学理学研究科化学専攻 名誉教授

新奇で高性能な不均一系触媒の新概念の創成とそれを用いた高効率・高選択的な触媒反応開発に関する論文です。複数の金属で合金を調製し、そこから1つの金属を化学反応で取り除き、空隙をもつ不均一触媒を合成しています。3種以上の金属を含む合金からは、複数の金属からなる同様の不均一触媒が調製できる画期的な手法です。

フッ化アルキルを求電子剤として利用する触媒的炭素骨格構築反応

岩﨑孝紀

2018年度有機合成化学奨励賞受賞

*東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻

本論文は、著者ら独自のアート型錯体を触媒活性種とするフッ化アルキルのC-F結合の切断を伴うクロスカップリングおよび多成分連結反応について述べています。C-F結合の切断戦略、触媒活性種や反応の速度論的検討について丁寧に述べられており、読み応えのあるものとなっています。是非ご覧ください。

2,3,6-三置換ピリジン誘導体の簡便合成法開発とPKCθ阻害剤の合成研究への応用

加藤泰祐

武田薬品工業株式会社

本総合論文は、2,6-ジフルオロピリジン類の合成法開発とその反応を利用した医薬品(PKCθ阻害剤)の探索について述べています。3位に置換基を有する2,6-ジフルオロピリジンに対して位置選択的に2種類の求核剤と反応することで簡便に多様な化合物ライブラリーを構築し、効率的に高活性化合物を取得しました。

タンパク質化学合成を加速するペプチドライゲーションの新技術

林 剛介1岡本晃充2,3

1名古屋大学大学院工学研究科

2東京大学大学院工学系研究科、3東京大学先端科学技術研究センター

水中において、様々な官能基が内在する巨大ペプチド、タンパク質に対して、高い反応性と選択性でライゲーション反応が実現されています。研究背景の丁寧な解説に加え、境界領域を切り拓く有機合成化学の新発想が凝縮されています。ぜひご一読ください。

平面シクロオクタテトラエンの反芳香族性,反応性,および有機半導体への応用

西長 亨

首都大学東京大学院理学研究科化学専攻

単体では折れ曲がり構造となるシクロオクタテトラエン(COT)骨格を分子修飾で平面構造に強制した。結果、高い反芳香族性を示すも安定であり、両極性の有機半導体特性が発現した。平面COTの特性を理論と実績から引き出した興味深い結果である。

発光ユニットの精密配置に基づく非古典的円偏光発光(CPL)特性制御

今井喜胤

近畿大学理工学部応用化学科

光学活性な有機発光体において、光励起状態において、発光性ユニットが適切なキラル空間配置をとるように分子設計することにより、円偏光発光(CPL)の回転方向を制御することに成功しました。ぜひご覧下さい。

Rebut de Debut:有機溶媒に難溶なCsFを用いる触媒的不斉フッ素化反応の新展開

今月号のRebut de Debutは1件です。オープンアクセスですのでぜひごらんください。

有機溶媒に難溶なCsFを用いる触媒的不斉フッ素化反応の新展開 (立教大学理学部化学科) 堤 亮祐

感動の瞬間:幸運な遭遇が飛躍のきっかけに

今月号の感動の瞬間は、大阪大学産業科学研究所、國立交通大學應用化学系 戸部 義人教授による寄稿記事です。

異分野との融合研究の成功の秘訣、またその過程に潜んでいた感動の瞬間に心打たれます。オープンアクセスです。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

関連書籍

[amazonjs asin=”4759819320″ locale=”JP” title=”企業研究者たちの感動の瞬間: モノづくりに賭ける夢と情熱”] [amazonjs asin=”4759810803″ locale=”JP” title=”化学者たちの感動の瞬間―興奮に満ちた51の発見物語”]

Avatar photo

めぐ

投稿者の記事一覧

博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

関連記事

  1. 動画:知られざる元素の驚きの性質
  2. 触媒量の金属錯体でリビング開環メタセシス重合を操る
  3. 第23回日本蛋白質科学年会 企画ワークショップ『反応化学の目から…
  4. 第18回次世代を担う有機化学シンポジウム
  5. 有機分子触媒ーChemical Times特集より
  6. ノーベル化学賞を担った若き開拓者達
  7. 中国へ行ってきました 西安・上海・北京編③
  8. 映画007シリーズで登場する毒たち

注目情報

ピックアップ記事

  1. ロジャー・チェン Roger Y. Tsien
  2. -ハロゲン化アルキル合成に光あれ-光酸化還元/コバルト協働触媒系によるハロゲン化アルキルの合成法
  3. 友岡 克彦 Katsuhiko Tomooka
  4. 科学は夢!ロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞2015
  5. 紅麹を含むサプリメントで重篤な健康被害、原因物質の特定急ぐ
  6. 竜田 邦明 Kuniaki Tatsuta
  7. 秋の褒章2014ー化学分野からは準結晶研究の蔡安邦教授に
  8. 第94回日本化学会付設展示会ケムステキャンペーン!Part III
  9. シス型 ゲラニルゲラニル二リン酸?
  10. 不正の告発??

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年2月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
242526272829  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP