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スポットライトリサーチ

ビニルモノマーの超精密合成法の開発:モノマー配列、分子量、立体構造の多重制御

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第287回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院 工学研究科(上垣外研究室)・宮島 雅斗さんにお願いしました。

高分子合成における配列制御は、第11回ケムステVシンポでも話題に挙がったとおり、高分子化学における最先端研究課題です。なかでもビニルポリマーは様々な選択性を扱わねばならない都合、制御の難しいものでしたが、環状の合成ユニットを準備するというアイデアで配列制御型ビニルポリマーの合成に成功しています。本成果はJ. Am. Chem. Soc.誌 原著論文およびCover Picture・プレスリリースに公開されています。

“Multifactor Control of Vinyl Monomer Sequence, Molecular Weight, and Tacticity via Iterative Radical Additions and Olefin Metathesis Reactions”
Miyajima, M.; Satoh, K.; Horibe, T.; Ishihara, K.; Kamigaito, M.  J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 18955–18962. doi:10.1021/jacs.0c09289

研究室を主宰されている上垣外正己 教授から、宮島さんについて以下の人物評を頂いています。それでは今回もインタビューをお楽しみください!

宮島雅斗君は、現在、博士後期課程3年生で、博士論文の仕上げに奮闘しています。見た目は細いですが、研究に関しては、幾度も壁にぶち当たりながらも粘り強く取り組むことで、幸運にも恵まれ、予期せぬ成果をあげてきました。とくに本研究では、環状配列制御オリゴマーの精製過程で順次得られた3つの結晶に関して、学内共同研究ユニットの石原一彰先生の研究室でX線構造解析をして頂いたところ、幾多の構造異性体の中でも、ちょうど代表的な3種類の立体異性体であることがわかり、研究がさらに進展しました。文字通り、彼の汗と涙の結晶といえます。これからも内に秘めた粘り強さを発揮することで、幸運にも味方されながら、新しい研究開発に邁進していってくれるものと期待しています。

Q1. 今回プレスリリースとなったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

モノマー配列、分子量、立体構造が多重に制御されたビニルポリマーの合成に関する内容です。一般にポリマーの性質は、分子量や立体構造に加え、モノマー配列に依存しますが、ビニルポリマーではこれら構造の多重制御は、従来の重合反応では困難でした。
本研究では、まず遷移金属錯体を用いたラジカル付加反応により、ビニルモノマーを1分子ずつ順番に付加させ、配列が制御されたオリゴマーを合成し、両末端にオレフィンを導入しました。次に、閉環メタセシス反応により、環状の配列制御オリゴマーに変換した後、開環メタセシス重合により重合して、水添することで、最初につないだビニルモノマー配列を有し、分子量が制御されたビニルポリマーの合成に成功しました(図1)。さらに、立体構造の異なる環状物を再結晶により単離精製して重合することで、ポリマーの立体構造制御も達成しました。

図 1. ラジカル付加とオレフィンメタセシスを駆使した配列制御ビニルポリマーの合成

図 1. ラジカル付加とオレフィンメタセシスを駆使した配列制御ビニルポリマーの合成

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

本研究で一番こだわったのは、イソタクチック、ヘテロタクチック、シンジオタクチック、3種類の立体規則性の異なる環状配列制御オリゴマーを全て単離精製し揃えたことです(図2)。最初の立体異性体を単離できた際に、他の異性体も単離することができたら綺麗だと思い注力しました。しかし、最初のアクリル酸ブチルユニットをもつ環状物では、1種類のみしか単離できませんでした。そこでより溶解性の低いアクリル酸メチルユニットをもつ環状物で検討したところ、上手くいきました。このことにより、モノマー配列、分子量に加え、研究を始めた当初は予想もしなかった立体構造までも制御されたビニルポリマーの合成につながりました。

図 2. 異なる立体規則性をもつ環状物の構造とX線結晶構造

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

上述の3種類の環状物を単離することが難しかったです。環状物は、オレフィンの幾何異性体や置換基の向きなどわずかに構造が違う多くのジアステレオマーの混合物です。理論的にはこれらの異性体は20種類以上考えられました。アクリル酸メチルユニットから成る環状物は有機溶媒への溶解性が低かったため、他の異性体も単離可能であると考えましたが、簡単には分離できませんでした。そのため、地道に、「カラム、NMR」、「再結晶、NMR」を繰り返しいい条件を探しました。最初は、上手くいきませんでしたが、精製を重ねるごとに、複雑だったNMRスペクトルがどんどんシャープになることをモチベーションに乗り越えました。

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

所属する上垣外研究室では、高分子の精密重合に関する研究をおこなっています。来年度からは化学メーカーに就職するため、環境が変わりますが、大学で学んだことを生かし、高分子材料の研究を続けていきたいと思います。そして、化学を発展させ、社会に貢献したいと思います。

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

私がこの研究を続けられたのは、研究室のメンバーのおかげだと感じました。上手くいったときは、喜びを分かち合ってくれ、苦しい時は、励ましてくれたおかげで、粘り強く進めることができました。特に、同期の西田くんには、大変お世話になりました。暗い気持ちでは、やる気も出ないので、うまくいかなかったら笑い話にして、切り替えていきましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。

研究者の略歴

名前: 宮島 雅斗 (愛用2Lナスフラスコとともに)
所属: 名古屋大学大学院 工学研究科 有機・高分子化学専攻 上垣外研究室
研究テーマ: 一分子ラジカル付加反応とオレフィンメタセシスによる配列制御ビニルポリマーの合成

cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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