[スポンサーリンク]

スポットライトリサーチ

湿度変化で発電する

[スポンサーリンク]

第324回のスポットライトリサーチは、国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間拡張研究センター(スマートセンシング研究チーム・駒﨑 友亮さんにお願いしました。

ジメジメと雨が降る日々が続き、何をするにも嫌な気分になってしまいがちですね。なんと!今回はそんな身近な「湿度」の変化を使って発電できちゃうよ、という研究成果が産総研の研究チームから論文発表されています。Sustainable Energy Fuels誌 原著論文およびFront Coverプレスリリースに公開されています。産総研公式 YouTubeチャンネルでも本研究成果は紹介されているようです。

“Energy harvesting by ambient humidity variation with continuous milliampere current output and energy storage”
Sustainable Energy Fuels 2021, 5, 3570. DOI: 10.1039/D1SE00562F

それでは今回もインタビューをお楽しみください!

Q1. 今回プレスリリースとなったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

環境中の湿度変化を利用して発電する電池を開発しました。原理としては、潮解性のある塩化リチウムの吸湿平衡と濃淡電池(逆電気透析)を組み合わせています。塩化リチウム水溶液の濃度と相対湿度の間には平衡関係があり、湿度が低ければ水分が蒸発して塩化リチウム水溶液は濃く、湿度が高ければ吸湿して薄くなります。つまり、この性質を使うと湿度の変化を水溶液の濃度変化に変換することができるわけです。塩化リチウム水溶液で濃淡電池を作製し、片方の部屋を空気に開放してもう片方の部屋を密閉しておけば、空気に開放された部屋の濃度のみが湿度に応じて変わりますから、2つの部屋の間に濃度差が生じて電気を取り出すことができます。

今回の研究では、実際にこの電池を試作し、湿度変化を用いて発電ができることを実証しました。得られる電力は微弱ですが、エネルギーハーベスティングの新手法としてIoTセンサなどの電源への応用が期待できます。

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

本研究で一番思い入れのあるところは、根本となる原理を思いついたことです。私は元々潮解性を利用した湿度センサの研究をしていたのですが、たまたま逆電気透析の仕組みを知って、この2つを組み合わせれば湿度を使って発電ができるのではないかと気付いたときにはワクワクしました。

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

塩化リチウム水溶液の濃度が湿度変化に十分に追従するようにするためには、水溶液の量を極力減らす必要があるのですが、そうすると電極を水溶液にしっかりと浸すことができなくなります。この両立が難しかったですね。最終的には水溶液をよく吸うろ紙の上に銀ペーストを使って電極を印刷することで解決しました。

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

こんな研究をしていながらお恥ずかしい話ですが、化学は専門ではなく、この研究を始めてから電気化学を必死で勉強しています。どちらかと言うと苦手意識がありますので、これからも勉強を続けて知識を深めていきたいと思っています。

 

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

最後まで読んでいただいた読者の皆様、ありがとうございます。湿度変動電池はまだまだ生まれたばかりの技術ですので、よりパワーアップを目指して研究を続けていきたいと思っています。

この研究成果はNEDO「エネルギー・環境新技術先導プログラム/未踏チャレンジ2050」の委託業務の結果得られたものです。この場を借りて関係される方々に深く御礼申し上げます。

研究成果に関する動画

研究者の略歴

名前:駒﨑 友亮
所属:国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間拡張研究センター スマートセンシング研究チーム
研究テーマ:湿度変動電池の開発、布状湿度センサの開発

ふぉとん

ふぉとん

投稿者の記事一覧

博士(工学)。大学教員。発光物質が大好物。いつも分子になった気持ち(思ひ)で分子を設計しています。

関連記事

  1. セルロースナノファイバーの真価
  2. JSRとはどんな会社?-2
  3. 『元素周期 ~萌えて覚える化学の基本~』がドラマCD化!!!
  4. むずかしいことば?
  5. スタチンのふるさとを訪ねて
  6. 化学パズル・不斉窒素化合物
  7. 【予告】ケムステ新コンテンツ「元素の基本と仕組み」
  8. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」④

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. アルメニア初の化学系国際学会に行ってきた!①
  2. 石テレ賞、山下さんら3人
  3. ビッグデータが一変させる化学研究の未来像
  4. 化学者のためのエレクトロニクス講座~化合物半導体編
  5. ハラスメントから自分を守るために。他人を守るために【アメリカで Ph.D. を取る –オリエンテーションの巻 その 2-】
  6. 安全なジアゾメタン原料
  7. 金属イオン認識と配位子交換の順序を切替えるホスト分子
  8. 山本明夫 Akio Yamamoto
  9. ジェイ・キースリング Jay Keasling
  10. マリウス・クロア G. Marius Clore

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年7月
« 6月   8月 »
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

注目情報

最新記事

薬剤師国家試験にチャレンジ!【有機化学編その1】

薬剤師国家試験は、医療系国家試験の中でも比較的ハイレベルな化学の知識が問われる唯一の…

化学知識の源、化学同人と東京化学同人

化学の専門家なら化学同人と東京化学同人の教科書や参考書を必ず一冊は購入したことがあると思います。この…

天才プログラマー タンメイが教えるJulia超入門

概要使いやすさと実行速度を兼ね備えた注目のプログラミング言語Julia.世界の天才プ…

【Spiber】新卒・中途採用情報

【会社が求める人物像】私たちの理念や取り組みに共感し、「人を大切にする」とい…

飲むノミ・マダニ除虫薬のはなし

Tshozoです。先日TVを眺めていて「かわいいワンちゃんの体をダニとノミから守るためにお薬を飲ませ…

MEDCHEM NEWS 31-2号「2020年度医薬化学部会賞」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

有機合成化学協会誌2022年5月号:特集号 金属錯体が拓く有機合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2022年5月号がオンライン公開されました。連…

高分子材料におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用とは?

開催日:2022/05/18 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

300分の1を狙い撃つ~カチオン性ロジウム触媒による高選択的[2+2+2]付加環化反応の開発

第 381回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 …

ポンコツ博士の海外奮闘録⑥ 〜博士,アメ飯を食す。おうち系お肉編〜

引き続きアメリカでの日常グルメ編をお送りいたします。(実験で面白いネタがないとか言えない)ポンコ…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP