[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

革新的なオンライン会場!「第53回若手ペプチド夏の勉強会」参加体験記

[スポンサーリンク]

夏休みも去って新学期も始まり、研究者としては科研費申請に忙しい時期ですね。学会シーズン到来の足音も聞こえ始めてきています。

毎年夏頃には学生向けの発表・懇親企画、いわゆる「若手の会」が分野ごとに沢山開催されるものですが、昨年はコロナのせいでほぼ全て中止になってしまいました。年が明ければ収まるのかと思いきや、このコロナはしつこい!オリンピック開催やデルタ株発生なども手伝い、過去最大の感染者数を記録するなど、収まる気配を見せません。結局、リアルでの開催は1年経ってもほぼ無理な状況でした。

学生時代に周辺分野の友人をラボ外に作っておくことは、実のところとても大事なことで、後々の研究人生を支えてくれる土台になります。しかし交流機会がほとんどない=友人の輪が広がらないと言うことは、困ったときに気軽に相談できたり、共同研究に持ち込むツテがなくなってしまうことでもあり、研究進捗にボディーブローのように響くのです。既に知り合いの多い有名人やプロ研究者ならまだいいのですが、未来の分野を押し上げるべき若者のほうからつながりが細くなっているとすれば、これは由々しき問題です。さまざまな団体が人的基盤崩壊を等しく懸念しており、オンラインでも楽しめる「若手の会」を実施すべく、頭をひねっている様子です。筆者(副代表)もこの事実に危機感を感じ、交流会主体の若手講演シリーズ「ABC-InFO」を立ち上げたという経緯があります。

そんな折に講演依頼を頂いた縁で、8/9-10にオンラインでの若手ペプチド夏の勉強会(略称:若ペプ会)に参加する機会をいただきました。オンライン会場の作りがとにかく素晴らしく、いち参加者としてとても感動したので、今回ご紹介したく思います。

若手ペプチド夏の勉強会とは?

名前の通り、ペプチド科学関連分野の若手研究者(院生~助教主体)が集うシンポジウムです。日本ペプチド学会主催のもと、今年で53回を数える、歴史ある集まりです(過去の開催実績)。「若手の会」というだけあって、ゆるめの雰囲気で開催されることも特徴です。ペプチド学会員であればかなりオトクに参加できます。

どんなプラットフォームで開催されていた?

Gather.Townで開催されていました。

昔のドット絵RPG風的インターフェースが特徴の、オンライン交流プラットフォームです。会場内を自由に動き回れて近くに居る人だけと話せるため、立食パーティ的な使い方が出来ます。特定のスペースに入ると外部から声が入らなくなり、スペース内にいる人とだけ話すことが出来ます。Zoomブレイクアウトだと気軽に部屋を移動しづらい一方、Gather.Townではこのような気苦労がないため、あちこちで使用例が増えています(ケムステVシンポやABC-InFOの懇親会でもこれを使っています)。

Gather.Townの外観(公式サイトより引用)

ただ、多人数向け講演に使うにはやや動作不安定なことが欠点です。そのため若ペプ会では、口頭発表だけZoomで行う選択をされていました。

こだわりに溢れた自作オンライン会場!!

若ペプ会ではGatherのカスタムスペース作成機能をフル活用したうえで、オンライン会場をイチから自作していました。リアル学会に雰囲気を近づけるための仕掛けが随所に盛り込まれており、まさに「いつもの学会」に参加しているかのような体験を味わえます。優れた工夫をいくつかご紹介しましょう。

講演会場からワンキーでZoom講演スペースに飛べる

講演会場の自由席に座ってxキーを押すと、Zoom講演のURLが開きます一つの会場で一体感を持って講演を聴きたいという思いから来ている設計です。当日は150人以上が会場内にいたので、賑やかな雰囲気作りにも寄与していたと思います。Gatherでも全体向け講演は出来ますが、やや動作不安定なので、信頼性の高いZoomにそこを頼る選択は正しいと思いました。

革新的オンラインポスター会場

ポスター発表はプライベートスペースとして設定され、通りすがりの人には議論が聞こえない作りです。しかしスペースの外から近づくと、発表者名とタイトルだけがポップアップ表示される仕掛けが施されています。xキーを押せばポスター全景も見られます。人だかりの前で、興味ある発表の様子を遠巻きに眺めたい、タイミングがあえば突入して質問したい・・・という参加者心理を上手く汲んで作られています。オンラインポスター発表のフォーマットはどこもほとんど上手く行ってないなぁ・・・と参加のたびに悩ましく思っていたのですが、この構成はとても秀逸です。

立て看のまえでxキーを押すと、インストラクションや発表リストが見られるのも、地味ながら良い工夫だと思えます。

またポスター会場のそばには協賛企業ブースも設置されており、ポスター発表を見るついでに、ふらっと立ち寄って説明聞いとくか~というアノ感じが上手く再現されていました。

講演会場の外に雑談スペースがある

いわゆる「廊下の雑談」スペースが余分に用意されています。講演賞の投票場所なども併設されています。

多くのオンライン学会では、講演を聴く以外にすることがほぼありません。時間いっぱいマジメに講演を聴くにしても、興味ない話の時はラボ内職に逃避することになります。結果として非日常感が薄れますし、常に何かしら作業・集中しているので、一日フル参加するとかなり疲れます。全部聴くのしんどいのでどこかでスケジュール関係無しに休憩したいなぁ、でも聴きたい講演2つある間の待ち時間どうしようかなぁ・・・という思いを、おそらく皆さんも実感されていることでしょう。「廊下の雑談」スペースが用意されていることで、会場を抜け出してうろつきつつも、学会トピックで参加者と交流を深められます。筆者としては、これこそが従来型オンライン学会に決定的に欠けていた要素ではないだろうか?と改めて感じいりました。

発表~懇親会まで全く同じ会場で行える

講演はZoomで行う想定ではあるものの、基本的にはGather会場だけで全てが片付くようにデザインされており、複数のプラットフォームを横断する必要がありません。懇親会もGather会場で行われました。しおりに載っていない位置に、ビル屋上を模したシャレたスペースが用意されていたという、空気を変えるための心づくしもニクイです。

懇切丁寧な参加マニュアル

Gather.Townに慣れない方々でも構成と操作が分かるよう、親切なマニュアル(参加のしおり)が配布されていました。運営チームの丁寧な取り組みに感謝です。

若ペプ会参加のしおりから抜粋

圧倒的なコスパの良さ

Gather.Townは参加人数が増えると有料になるのですが、200人で2日借りても会場費は5-10万円程度です。懇親会は数十人から参加しており、それぞれストレス無く交流できていた様子でしたので、課金プランは十分実用的だといえそうです。リアルの会場を予約して、旅費使って集まって、バイトを沢山雇って進める従来方式を考えると、どう考えても破格のコスパですよね。上手い会場デザインでリアルさながらの体験が再現できさえすれば、オンラインで言うこと無い話なのかも知れません。

Gather公式サイトより引用

百聞は一見にしかず!会場にアクセスして体験してみよう

若ペプ会運営チームとして会場作成を担当された小松徹先生(東大院薬)のご厚意で、バニラ設定会場をご提供頂けました。モデルハウス扱いで一般公開しておきますので、各自アクセスいただいたうえで是非一度体験ください。細部にわたる作り込みにきっと感嘆することでしょう。今後オンライン会合を企画される予定の皆さんは、傑出事例として参考にされてみてください。

モデル会場はこちら

 

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 最も引用された論文
  2. 有機合成化学協会誌2017年5月号 特集:キラリティ研究の最前線…
  3. 第17回ケムステVシンポ『未来を拓く多彩な色素材料』を開催します…
  4. B≡B Triple Bond
  5. 難溶性多糖の成形性を改善!新たな多糖材料の開発に期待!
  6. このホウ素、まるで窒素ー酸を塩基に変えるー
  7. 有機機能性色素におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用とは…
  8. ノーベル週間にスウェーデンへ!若手セミナー「SIYSS」に行こう…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第45回BMSコンファレンス参加者募集
  2. トロスト酸化 Trost Oxidation
  3. ケテンジチオアセタール化による一炭素増炭反応
  4. 房総半島沖350キロに希少金属 広範囲に
  5. 第73回「分子混合物の分離特性を制御する機能性分離膜の創製」金指 正言教授
  6. 三菱化学:子会社と持ち株会社設立 敵対的買収を防ぐ狙い
  7. 新生HGS分子構造模型を試してみた
  8. トーマス・ホイ Thomas R. Hoye
  9. ものごとを前に進める集中仕事術「ポモドーロ・テクニック」
  10. オキシトシンを「見える化」するツールの開発と応用に成功-謎に包まれた脳内オキシトシンの働きの解明に新たな光-

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年9月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

CIPイノベーション共創プログラム「有機電解合成の今:最新技術動向と化学品製造への応用の可能性」

日本化学会第106春季年会(2026)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「有機電解合…

CIPイノベーション共創プログラム「世界を変えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第106春季年会(2026)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「世界を変え…

年会特別企画「XAFSと化学:錯体, 触媒からリュウグウまで –放射光ことはじめ」

放射光施設を利用したX線吸収分光法(XAFS)は、物質の電子状態や局所構造を元素選択的に明らかにでき…

超公聴会 2026 で発表します!!【YouTube 配信】

超公聴会は、今年度博士号を取得する大学院生が公聴会の内容を持ち寄ってオンライン上で発表する会です。主…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part II

さて、Part Iに引き続きPart II!年会をさらに盛り上げる企画として、2011年より…

凍結乾燥の常識を覆す!マイクロ波導入による乾燥時間短縮と効率化

「凍結乾燥は時間がかかるもの」と諦めていませんか?医薬品や食品、新素材開発において、品質を維…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part I

まだ寒い日が続いておりますが、あっという間に3月になりました。今年も日本化学会春季年会の季節です。…

アムホテリシンBのはなし 70年前に開発された奇跡の抗真菌薬

Tshozoです。以前から自身の体調不良を記事にしているのですが、昨今流行りのAIには産み出せな…

反応操作をしなくても、化合物は変化する【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか温度を測ること…

ジチオカーバメートラジカル触媒のデザイン〜三重項ビラジカルの新たな触媒機能を発見〜

第698回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(大井研究室)博士後期課程1年の川口…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP