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化学者のつぶやき

酸素は見えないが、時に「色」として現れる【プロセス化学者のつぶやき】

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前回まで
1. 設定温度と系内の実温度のお話
2. 温度値をどう判断するか
3. 反応操作をしなくても、化合物は変化する
4. わざと失敗する実験
5. 水分はどこにあるのか
6.蒸留操作で水はどう動くのか
7.酸素は系内に入り込み続ける

見えていなかった酸素が“色”になる

一部の化合物では、酸素の影響が“着色”として現れることがあります。
例えばアニリン系化合物では、酸化により黄色〜褐色へと変化します。
この着色は、「見えていなかった酸素」が可視化された現象とも言えます。

ただし注意が必要で、「色がついていない=酸化していない」とは限りません。
微量でも反応系に影響を与えますが、その多くは目に見えません。
着色はあくまで一部の反応の結果であり、無色のまま進行する副反応も存在します。
ここでは着色と酸素の関係を説明していきます。

微量の酸素でさえ影響は大きい

酸素と反応しやすい化合物では系内を酸素濃度0.0%に保持しても着色するケースがあります。
これは測定下限の酸素や溶存酸素など、見えていない酸素が影響しているためです。

そもそも着色という現象は、数ppmの不純物でも視覚的影響を及ぼすと言われます。
そのため、わずかな酸素管理の差が、着色差として現れるのです。

図1 わずかな酸素でも着色する

着色成分の除去はなぜ難しいのか

着色成分の同定は検出感度の問題から難易度が極めて高い傾向があります。
それに伴い、着色成分そのものの除去難易度も高くなります。
蒸留などで着色成分のみを除去できるケースもありますが、
実務上は「そもそも着色させない管理設計」が重視されることが多く、
目的物のロスを許容して吸着処理などを行うケースもあります。

着色を抑えるためには、不純物の除去や、溶存酸素を含めた酸素管理が求められます。
特に溶存酸素は、気相部の酸素濃度を低下させただけでは十分に除去できないケースがあります。

溶存酸素は、溶媒中に“溶け込んでいる酸素”です。
そのため、気相部を窒素置換しても、液中には酸素が残存しているケースがあります。
この溶存酸素を除去するための操作一例としてN2バブリングがあります。

液中にN2ガスを吹き込むことで、バブル気相側の酸素分圧は0に等しくなります。
すると平衡の関係で溶媒中の酸素が気相側へ移動しやすくなり、
最終的に液中の酸素を極めて低濃度に保持することができます。
つまりN2バブリングは、液中酸素を直接“追い出している”というより、
酸素が“液中に居づらい状態”を作っている操作と言えます。

実際に、このバブリング操作により着色が改善するケースもあります。
そして、改善するということは「系内酸素濃度0.0%」という表示だけでは、
反応場の酸素を管理しきれていないことを示しています。
気相部の酸素濃度を測ったという事実だけでは、反応場全体の酸素を評価しきれないのです。

図2 酸素濃度計で見えていない酸素がある

まとめ

酸素は化合物保存に影響を及ぼす要因であり、
着色は「見えていなかった酸素」が現れた結果と言えます。

そして、測定下限以下の酸素や溶存酸素が存在しうるという前提で操作することが、
酸素管理には必要になります。

 

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化学メーカーで研究、生産技術を経験。
現在は製造スケールのプロセス条件設計を行っています。カメを飼っています。

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