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化学者のつぶやき

小スケールの反応で気をつけるべきこと

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前回はスケールアップについて書いたので、今回は小スケールの反応での注意すべきことについてつらつらと書いてみようかと思います。特に全合成をやっておられる方などは、ほぼ常識的な内容かと思いますが、研究室に配属された新人向けの内容ですので、生暖かく見てください。

コンタミに気をつける。

  • 小スケールだけでなく、どんな反応をするときも当たり前のことですが、フラスコは毎回しっかりと洗います。反応によっては、アルカリバスにフラスコやスターラーバーを漬けるなどすることでコンタミを防ぎます。
  • 机の上を整理します。きれいなサンプルを乾燥させるときなども、予めアセトンなどで洗った三方コックなどを用いる。

反応の仕込み

  • 小スケールの場合はより厳密な無水条件、無酸素条件など、要求された水準での反応を行うことが重要です。1 g以上のスケールでは、低温の禁水反応でも塩カル菅を付けておくだけでうまくいくことが多いですが、小スケールの場合はそうはいきません。
  • 溶媒量が少なくなる場合は、梨型フラスコを使う、先の尖ったマイクロウエーブチューブを使うなど、工夫する。
  • 正確な計量が求められる試薬や触媒を入れる必要がある場合、面倒臭くてもストック溶液を作成し、正確な量を反応させるように気を配る工夫も必要です。
  • シリンジは使い捨ての1 mLのものではなく、容量に合わせてガスタイトシリンジ(10 uL, 25 uL, 50 uL, 100 uL, 250 uL, 500 uL)などの正確なシリンジを用いること。(強酸、強塩基の導入に使用したのちにはすぐに洗うこと。)
  • ある程度過剰量用いても差し支えない試薬の場合、例えば、TBS化の場合は3 eqの2,6-lutに2 eqのTBSOTfを用いる、エステルの還元に小過剰の還元剤を用いるなど、試薬の失活も考慮に入れて反応条件を設定することが重要です。また、LDAなどの試薬は大きめのスケールで調整、そのうちいくらかを反応に利用するなどの方法もあります。
  • 溶媒量が少なく、DCMなど揮発性の高い溶媒を使う場合は、しっかりとシーリングできるマイクロウェーブのバイアルを使う、もしくは途中で溶媒を足すこと。またその際はチューブのシーリングをしっかりすること。
  • 均一系触媒などの場合はストック溶液を作れば事なきを得ますが、不均一系触媒系での反応の場合、触媒の失活も考慮に入れて、通常よりも多めに触媒を入れるなど工夫が必要です。

精製と計量

  • 少量のコンタミでもNMRで見えてしまうレベルになる場合もあります。精製には十分な注意が必要です。エバポのトラップもコンタミが無いようにしっかり予め、アセトンなどで洗ってから濃縮します。
  • 溶媒は必要ならば、蒸留したものを用います。例えば、THFやEt2Oに含まれるBHTなどはNMRで見えてしまうことがよくあります。
  • 精製は、パスツールカラムやPTLCを用いて行い、希釈されすぎて化合物を見失うといったことのないようにします。特に、薄まりすぎたカラムのフラクションの場合、副生成物が見えずにきれいなフラクションと混ぜてしまうこともあるので注意が必要です。
  • 精密天秤を用いて、化合物の重さを正確に量りましょう。計量の際はサンプルに埃クズやシリカゲルなどが残らないように気を配る必要があります。もし、残っている場合、パスツールに綿を詰めてろ過します。

分析

  • MSは超微量分析でも大抵可能なので、問題なし。
  • 一方でNMRはちょっと厄介。分子量が大きく、微量の合成を強いられる場合、測定してみるとやはりS/N比があまり良くなくて。。。となるもの。解決策としては、シムが問題にならない程度の少な目の溶媒に溶かし、積算を重ねるというのが簡単な方法です。が、Cryo-TCI probeのついたマシンなどがあるならば、1 mgを切っていても8 scanで綺麗なスペクトルが得られます。それが無理でも、常温BBI probeのついているマシンでも64回程度叩けばかなり感度良く測定できますので、積算を重ねるだけでなくどのマシンを使うかも検討してみてはいかがでしょうか?
  • 例えば、分子量800ぐらいの化合物が0.5 mg程度用意でき、Cryo-TCI probeかCryo-BBO probeで4000回(3.5 h)ほど叩くことができれば13Cでも、シグナルを拾うことは十分可能です。
  • また、signalのbroadeningなどの影響で13Cが拾えなかったとしても、同程度の時間HMBCかHSQCを用いれば、殆どのシグナルを拾えるかと思われます。
  • かなり薄い溶液でNMRを取った場合、CDCl3の両脇にsatellite peakが見える場合もありますが(CDCl3に1%程度含まれる13Cによる1JC-H coupling (= 209 Hz))、こればかりはどうしようもありません。

反応に失敗した場合

  • その反応をどれくらいの濃度で行ったか確認する。濃度が著しく低い場合、反応速度が遅くなることがあります。
  • 試薬の失活が起こっていないか確認する。重水素化実験などがこの手の実験でしょうか。

あとがき

一般的に、気をつけることと言えばこんなところでしょうか。皆様の、仕事がうまくいくことを祈って今日のところは筆を置きたいと思います。

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Gakushi

東京の大学で修士を修了後、インターンを挟み、スイスで博士課程の学生として働いていました。現在オーストリアでポスドクをしています。博士号は取れたものの、ハンドルネームは変えられないようなので、今後もGakushiで通します。

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