[スポンサーリンク]

一般的な話題

細胞の中を旅する小分子|第一回

「size (大きさ)」は、物質の違いを視覚的に比較する最も容易なパラメーターの1つです。しかし、我々は、この大きさというパラメーターを軽視する傾向があるのではないでしょうか。私もある映像をみるまでは、そんな一人でした。

 

銀河系から原子核まで

Powers of Ten」という1968年に教育映画として発表されたもので、1977年のカラー化された映像をご存知でしょうか。YouTubeでアップロードされていましたので下記に示します(DVDも書籍も購入可)。作品は9分程度の短いものですので、機会があれば昼飯を食べながらでも一度見ていただければと思います。

 

シカゴの湖畔でピクニックをする二人の男女の映像から作品が始まります。1m x 1mの画面から始まり、徐々に上空に上がっていき、十秒後には10m x 10mの範囲の映像となります。次の10秒で100m x 100mとなり、どんどんその範囲は連続的に拡大し1024m x 1024mまで到達し、銀河団が星のように見える所で停止します。その後2秒ごとに範囲が同様に狭くなり、もとの人の1m x 1mの映像に戻ります。

すると、今度は逆に、10秒間で0.1mx0.1mの世界に次の10秒間で0.01mx0.01mの世界に入っていき、細胞の世界から、タンパク質の世界、そして原子の世界から最後に原子核の世界に辿り着いて(10-16m x 10-16m)映像が終わります。

 

創薬をサイズの視点で考える

創薬をしていく上で、具体的に、化合物の大きさ(size)や形(shape)、物理化学的性質、エネルギー等のパラメーターを比較し、仮説を立てることは重要であると考えています。だいたいの感覚や思い込みで仮説立てることは、むやみやたらに当てずっぽうで鉄砲を打っている行為に等しいものです。ただし、思いつきは大事にして下さい。思いついた化合物は、過去の自分の経験の産物です。

あるインフルエンザ薬を作られた方の言葉で忘れられない言葉があります。それは

 

「思いついたらやってみろ。2−3個作ってダメなら引き返せ。深追いはするな。」

「SAR上どうしてもやる必要がある化合物は何が何でも合成しろ。」

 

というものです。どちらも、「過去の経験と積み上げられた実験結果に基づく仮説の大切さ」と「自分の仮説にしがみつかず実験の結果を尊重しろ」ということも教えてくれています。

少し話が大きくなりましたが、本稿では、仮説を立てる際にもっともシンプルなパラメーターである大きさ(size)の視点から、細胞外から細胞内に小分子が入って行く過程をまとめてみたいと思います。3回に分けて実際に、薬が目的細胞周辺に到着し、標的タンパク質が核内にある場合の薬の動きを大きさの観点から追ってみます

 

*なお本稿においてほぼ全ての図は、Molecular biology of the Cell (5th edition, Garland Science)(Mol. Biol. Cell)から引用させて頂きました。(1)

 

参考文献・動画

1. Molecular biology of the Cell (5th edition, Garland Science)

The following two tabs change content below.
MasaN.

MasaN.

博士(工)。できる範囲で。

関連記事

  1. 質量分析で使うRMS errorって?
  2. 第4回慶應有機化学若手シンポジウム
  3. 2018年 (第34回)日本国際賞 受賞記念講演会のお知らせ
  4. 第10回次世代を担う有機化学シンポジウムに参加してきました
  5. 有機合成化学総合講演会@静岡県立大
  6. このホウ素、まるで窒素ー酸を塩基に変えるー
  7. 第94回日本化学会付設展示会ケムステキャンペーン!Part II…
  8. 2014年ノーベル化学賞・物理学賞解説講演会

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 【読者特典】第92回日本化学会付設展示会を楽しもう!PartII
  2. Medical Gases: Production, Applications, and Safety
  3. エステルをアルデヒドに変換する新手法
  4. Illustrated Guide to Home Chemistry Experiments
  5. 論文執筆&出版を学ぶポータルサイト
  6. 有機薄膜太陽電池の”最新”開発動向
  7. 3.11 14:46 ③ 復興へ、震災を教訓として
  8. ククルビットウリルのロタキサン形成でClick反応を加速する
  9. 三菱化学、来年3月にナイロン原料の外販事業から撤退=事業環境悪化で
  10. 信越化学・旭化成ケミカルズが石化品値上げ

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

「自然冷媒」に爆発・炎上の恐れ

「環境省・経済産業省の指示により、エアコンに使用されているフロン類の入れ替えが必要だ」と偽り、地球環…

効率的に新薬を生み出すLate-Stage誘導体化反応の開発

今回紹介する論文は、Late-Stage-Functionalizationの手法を開発し、新規薬剤…

「次世代医療を目指した細胞間コミュニケーションのエンジニアリング」ETH Zurich、Martin Fussenegger研より

海外留学記第22回目はETH ZurichのDepartment of Biosystems Sci…

チャン転位(Chan Rearrangement)

概要アシロキシエステルに対して塩基を作用させることで、転位を伴い2–ヒドロキシケトエステルを与え…

卓上NMR

卓上NMR (Benchtop NMR)とは、通常のNMRよりも小型で、専用の部屋を必要としないNM…

有機合成化学協会誌2018年5月号:天然物化学特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2018年5月号が先日オンライン公開されました。…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP