[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

Name Reactions: A Collection of Detailed Mechanisms and Synthetic Applications Fifth Edition

[スポンサーリンク]

 

内容

In this fifth edition of Jack Jie Li’s seminal “Name Reactions”, the author has added twenty-seven new name reactions to reflect the recent advances in organic chemistry. As in previous editions, each reaction is delineated by its detailed step-by-step, electron-pushing mechanism and supplemented with the original and the latest references, especially from review articles. Now with addition of many synthetic applications, this book is not only an indispensable resource for advanced undergraduate and graduate students, but is also a good reference book for all organic chemists in both industry and academia.

Unlike other books on name reactions in organic chemistry, Name Reactions, A Collection of Detailed Reaction Mechanisms and Synthetic Applications focuses on the reaction mechanisms. It covers over 320 classical as well as contemporary name reactions.

(引用:書籍紹介ページより)

対象

大学院生以上、研究者

解説

有機人名反応の書籍で定評があるJack LiのName reaction。2009年の第4版以来、4年(5年弱)ぶりの第5版である。人名反応の書籍では一昔前にStrategic Applications of Named Reactions in Organic Synthesis(日本語訳本:人名反応に学ぶ有機合成戦略)が名著として話題になり、世界中でこの分野のベストセラーとなった。しかしながら英語版、日本語訳本ともに改訂はなされておらず、もうすぐ発売10年となる。ぜひともそろそろ改訂版をというところだが、今のところ予定はないようである。

それに対して、本書籍は2014年に発売された、現在人名反応で最も新しい書籍といってもいいだろう。とはいえど、全くの新書でなく人名反応の書籍としての走りとして発売され、改訂を重ねた第5版であるため信頼性も高い。特に日本より、米国ではこの書籍はこの分野の中で最も人気が高い書籍であり、知らないものはほとんどいない。

さて、具体的な内容であるが、これまでの第4版に比べて、27個の新しい人名反応を加えている。本当にその名前で呼ばれているかは真偽があるところではあるが、開発者、反応形式ともに認知されている反応である。また、当然ではあるが、夫々の人名反応にそれを使った合成反応の例として新しいものを追加している。また人名反応の開発者の簡単な略歴が参考文献の1番目に紹介されており、初学者にとっても化学者の自身の経歴も学びやすい。さらに、正直どうでもいいところであるが、時折反応の開発者にまつわる小さな挿絵が挿入されている。例えば、Beckmann rearrangementには ベックマン温度計の絵Büchner ring expansion にはブフナー漏斗の絵(しかもタイトルの前に謎のアイコン!)といったところである。そんなものが意味があるかと言われればないが、著者の遊びゴゴロが入っているところであろう。

反応形式で引くことができないのが難点であるが、人名反応をひと通り学ぼうと思っている学生、もしくは名前は聞いたことがある学生、研究者には辞書的に使うことができるだろう。最近はインターネットで調べるのも簡単で、我々の有機合成反応データベース「ODOS」やOrganic Chemistry Portalなどがあるので、以前よりは需要が減っていることを最後に付け加えておこう。

 

関連書籍

 

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 医薬品の合成戦略ー医薬品中間体から原薬まで
  2. 密度汎関数法の基礎
  3. 化学者たちのネームゲーム―名付け親たちの語るドラマ
  4. クロスカップリング反応関連書籍
  5. くすりに携わるなら知っておきたい! 医薬品の化学
  6. だれが原子を見たか【夏休み企画: 理系学生の読書感想文】
  7. 論文・学会発表に役立つ! 研究者のためのIllustrator素…
  8. 基礎から学ぶ機器分析化学

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ふるい”で気体分離…京大チーム
  2. 日本コンピュータ化学会2005秋季年会
  3. アメリカの大学院生だってパーティするっつーの! 【アメリカで Ph.D. を取る –Qualification Exam の巻 後編】
  4. 【書評】きちんと単位を書きましょう 国際単位系 (SI) に基づいて
  5. 農薬DDTが大好きな蜂
  6. 【好評につきリピート開催】マイクロ波プロセスのスケールアップ〜動画で実証設備を紹介!〜 ケミカルリサイクル、乾燥炉、ペプチド固相合成、エステル交換、凍結乾燥など
  7. クリック反応に有用なジベンゾアザシクロオクチンの高効率合成法を開発
  8. Baird芳香族性、初のエネルギー論
  9. フェン・チャン Feng Zhang
  10. 製薬系企業研究者との懇談会(オンライン)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年5月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP