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ベックマン転位/Beckmann Rearrangement

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概要

ベックマン転位(Beckmann Rearrangement)は、1886年、ドイツの化学者Ernst Otto Beckmannにより報告された。ベックマンは精密な凝固点降下測定に用いる「ベックマン温度計」の発明者としても知られる。

Ernst Otto Beckmann

Ernst Otto Beckmann

オキシムを酸で活性化すると、C=N窒素上へ炭素置換基が1,2-移動し、続く水の付加・互変異性によってアミドが得られる。環状ケトンのオキシムを用いると、炭素骨格に窒素が1原子挿入された形の環拡大ラクタムが得られる。

工業的に最も重要な適用例は、シクロヘキサノンオキシムからの ε-カプロラクタム合成である。ε-カプロラクタムはナイロン6のモノマーであり、世界規模で生産されている。同様に、シクロドデカノンオキシムからはラウロラクタム(ナイロン12原料)が得られる。

「ケトンのC–C結合を切ってC–N結合を貼る」という意味で、現代的にはアミド結合構築法の一つ、あるいは骨格編集(skeletal editing)における窒素原子挿入の古典的原型として捉え直されつつある[2][3]

反応機構

教科書的な描像
  1. オキシムのOHが酸によりプロトン化(または脱離基化)され、良い脱離基となる。
  2. 脱離基に対して anti-ペリプラナーに位置する炭素置換基が窒素へ1,2-移動し、同時にN–O結合が開裂する。移動する炭素は速度論的に遊離せず、移動基上の不斉中心は配置保持で移動する。
  3. 生じたニトリリウムイオンに水が付加し、互変異性を経てアミドとなる。
現代的に修正・精緻化された点

(a) 律速段階は「プロトン化そのもの」ではない。 計算化学的研究によれば、気相での1,2-Hシフト障壁は約225 kJ/molと非現実的に高いが、溶媒分子を1個明示的に反応系へ組み込む(active solvent effect)と障壁が半減し、水中で約97 kJ/mol、ギ酸中で約79 kJ/molと実験値(約80–100 kJ/mol)に接近する。すなわち律速段階は、N-プロトン化体から O-プロトン化体(=脱離基H2Oを持つ形)への1,2-Hシフトであり、溶媒分子はプロトンリレーの足場として能動的に関与していると考えられる[4]。濃硫酸が単なるプロトン源以上の働きをしている可能性を示唆する結果である。

(b) 「協奏的か段階的か」には単一の答えがない — 基質依存である。 酸性溶媒をクラスターとして明示的に扱ったDFT計算では、基質によって経路が切り替わると報告されている[5]

基質 H⁺(CH₃COOH)₃ 中 H₃O⁺(H₂O)₆ 中
アセトンオキシム 2段階(σ型カチオン錯体を経由) 2段階(σ型カチオン錯体)
アセトフェノンオキシム 3段階(π型・σ型の両錯体を経由) 2段階(σ型カチオン錯体)
シクロヘキサノンオキシム 協奏的(錯体を経ずε-カプロラクタムへ)

アリール基はπ錯体(フェノニウム様)を安定化して段階的経路を開き、シクロヘキサノンオキシムでは環ひずみの解消が駆動力となって中間体を経ない協奏経路になる、とフロンティア軌道論で説明されている[5]。「ニトリリウムイオンは常に独立した中間体として存在する」という教科書的な描像は、必ずしもすべての基質に当てはまらないと考えられる。

(c) ニトリリウムイオンは実観測されている。 ¹⁵N標識シクロヘキサノンオキシムをゼオライト(Silicalite-1、H-ZSM-5、H-[B]ZSM-5)に吸着させ、昇温しながら固体¹⁵N CP/MAS NMRで追跡した研究では、ニトリリウムイオンに帰属される δ ≈ −237 ppm のシグナルが観測されている[6]。同研究では、プロトン化オキシム(−160 / −153 ppm)、ε-カプロラクタム(−260 ppm)、プロトン化カプロラクタム(−347 ppm)、開裂副生物の5-シアノ-1-ペンテン(−199 ppm)なども帰属されており、ことが示されている。

(d) anti選択性の「破れ」は、syn転位ではなく先行するE/Z異性化に由来すると考えられる。 アセトフェノンオキシムを多孔質固体上で反応させた固体NMR研究では、オキシムのC=N回転(E/Z異性化)はプロトン化されたときにのみ促進され、それが“間違った”位置異性体(N-メチルベンズアミド)の生成を可能にしていると報告されている[7]。実際、強いブレンステッド酸点をもつH-betaではN-メチルベンズアミドが副生するのに対し、弱酸性シラノールのみをもつシリカライトではアセトアニリド(アリール移動=正規生成物)への選択性が高い。

つまり、転位そのものは立体特異的なanti移動であり、実験室で観測される位置選択性は「どちらのオキシム異性体が優勢に存在するか(=転位前の平衡)」で決まる、という二層構造になっていると考えられる。酸性度を上げすぎると立体特異性が犠牲になるという実務的教訓につながる。

転位適性の一般則については、「aryl, alkenyl > tert-alkyl > sec-alkyl > prim-alkyl」という序列が広く紹介されている一方、教科書・解説サイトによっては「tert-alkyl > sec-alkyl > aryl > prim-alkyl」と、アリール基の位置づけが異なる記述も見られる。共通しているのは「遷移状態で発生する正電荷を安定化できる(=電子豊富な)基ほど移動しやすい」という原則であり、細かい序列は基質・条件に依存するとみるのが安全である。

転位と開裂の分岐

ベックマン転位と「異常ベックマン(Beckmann fragmentation)」は、同じ立体電子要求を共有する競合過程として理解できる。dihydrolevoglucosenone(Cyrene)由来オキシムの系統的研究では、脱離基能を高めていくとN–O結合とC1–C2結合がともに伸長し、¹³C–¹³Cカップリング定数が減少すること、NBO解析でn(O) → σ*(C1–C2) および σ(C1–C2) → σ*(N–O)の相互作用が系統的に増大することが示された[9]。分岐の予兆は遷移状態ではなく基底状態の構造にすでに現れている。

まとめると、anti-ペリプラナーに並んだ結合が σ*(N–O) に電子を送り込む点は転位も開裂も同じである。電子を送り出した先の炭素が正電荷を担えるかどうかである。担えなければ炭素は窒素へ移動してニトリリウムイオン → アミド(転位)へ、担えれば結合が切れてカルボカチオン + ニトリル(開裂)へ向かう。

近年では、この開裂中間体を求核剤で捕捉して立体特異的な官能基化に転用する研究も報告されており、「副反応」から「合成手法」への読み替えが進んでいる[10]

特徴・適用範囲・類似反応との比較

強み
  • 炭素骨格に窒素を1原子挿入できる数少ない古典反応。環状ケトンからの環拡大ラクタム合成は、他法では代替しにくい。
  • 立体特異的(anti移動、移動基上の配置保持)であるため、原理的には位置・立体を設計できる。
  • 原料のケトンが安価・入手容易であり、工業スケールで実績がある(ε-カプロラクタム、ラウロラクタム、パラセタモール)。
弱み・限界
  • 古典条件(濃硫酸、PPA、P₂O₅、SOCl₂、PCl₅、TsCl/py)は強酸性かつ化学量論的であり、官能基許容性が低い[11]
  • 非対称ジアルキルケトンオキシムでは位置選択性が低いことが多い。両オキシム異性体のエネルギー差が小さいためと考えられる(上記「反応機構(d)」参照)。
  • カチオン安定化基がα位/隣接位にあると、転位ではなく開裂(異常ベックマン)に流れる[9][10]。ステロイド17-オキシムのように、異常ベックマンの抑制自体が研究テーマになる系もある[12]
  • アルデヒドオキシムを基質にすると、アミドではなくニトリルが生成しやすい(脱水が競合)。
  • N–Hフリーのインドリンオキシムなど、酸性条件で分解する基質群がある(N-アルキル化が必要)[10]

類似反応との比較

反応 基質 → 生成物 窒素源 主な長所 主な注意点
ベックマン転位 ケトン(→オキシム)→ アミド/ラクタム ヒドロキシルアミン 環拡大に強い。立体特異的。工業実績が豊富 2段階(オキシム化が必要)。強酸条件。非対称ジアルキルケトンで位置選択性が低い
シュミット反応 ケトン → アミド/ラクタム HN₃ / TMSN₃ 1段階で窒素挿入できる アジド試薬の毒性・爆発性。非対称ケトンでの位置選択性は予測が難しい
バイヤー・ビリガー酸化 ケトン → エステル/ラクトン (酸素挿入) 転位適性の考え方はベックマンと同型。窒素を入れたくない場合の対応物 過酸の取り扱い。酸化されやすい官能基との共存
クルチウスホフマンロッセン転位 カルボン酸誘導体 → アミン(イソシアナート経由) C–N結合を作り、炭素を1つ減らす ベックマンとは出発物も生成物も別物。用途で選ぶ
ネバー転位 オキシムスルホナート → α-アミノケトン 塩基条件(アザイリン経由)でベックマンとは分岐する 塩基性条件が必須。基質が重なるため条件選択に注意
ティフェノー・デミヤノフ転位 アミノアルコール → 環拡大ケトン 環拡大でケトンが欲しい場合 ジアゾ化が必要
使い分けの目安
  • 環拡大ラクタムが欲しい/スケールアップを見据える → ベックマン転位。オキシムが結晶として単離でき、品質管理しやすいのも実務上の利点。
  • 工程を1つ減らしたい・オキシム化が難しいケトン → シュミット反応(ただしアジド試薬の安全管理が前提)。
  • 酸に弱い官能基が同居している → 古典条件は避け、Ca触媒[11]、光レドックス[13]、電気化学[14]、メカノケミカル[15]などの穏和条件を検討する。
  • 「置換の少ない側」を移動させたい(非古典的位置異性体が欲しい) → 酸触媒系では原理的に難しい。三重項増感による光化学的経路が、古典条件では得られない位置異性体を与えると報告されている[16]
触媒化をめぐる論争

「触媒量の有機分子でベックマン転位が進行する」とされてきた系の一部について、実際には触媒ではなく開始剤(initiator)として働き、生成したアミド自身が自己伝播的に反応を進めているのではないかという指摘が、計算と実験の両面からなされている[17]

反応例

ε-カプロラクタム合成(工業プロセス/気相接触ベックマン転位)

シクロヘキサノンオキシムを、高シリカMFI型ゼオライト(Silicalite-1)上、気相で転位させる。この触媒はNH₃-TPDでは酸性度がほとんど検出されないほど弱酸性であり、活性点は細孔口近傍の「ネストシラノール」と推定されている。オキシムのN–OH基がネストシラノールと水素結合することで活性化されるため、強酸を使わずに転位が進行する[18]。メタノールを添加して表面末端シラノールをメトキシ基に変換すると、選択性が工業的水準まで大幅に向上する[18][19]

住友化学はこのプロセスを、TS-1チタノシリケート/H₂O₂によるアンモオキシム法(シクロヘキサノン+NH₃+H₂O₂→オキシム)と組み合わせて工業化した。年産6万トンの流動床プラントが2003年4月に稼働し、従来法で不可避だった硫酸アンモニウム(硫安)の副生をゼロにした[19]。古典的な発煙硫酸法ではラクタム1トンあたり数トンの硫安が副生していたことを考えると、環境負荷の観点で大きな転換点である。

また、無触媒でも超臨界水中でベックマン転位が進行することが第一原理分子動力学計算とともに報告されており、水素結合ネットワークがプロトン移動を仲介する描像が示されている[20]

塩化シアヌル+ ZnCl₂:化学量論から触媒へ

山本・石原らは、触媒量の塩化シアヌル(2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン, TCT)がベックマン転位を促進すること、ZnCl₂の共触媒添加で活性が大きく向上することを見出した[21]。オキシムのOHがトリアジン環へ求核攻撃してO-トリアジニルオキシムを与え(Meisenheimer型錯体を経由)、転位後に触媒が再生する「求電子触媒」型の設計である。化学量論的活性化剤を必要とした古典条件からの転換点として位置づけられる。

この系は学生実験に組み込めるほど再現性が高く、シクロドデカノンオキシム → ラウロラクタムの変換が、塩化シアヌル 0.5 mol%・無水ZnCl₂ 1 mol%、アセトニトリル還流60分で収率90%と報告されている。その後、塩化シアヌルとホスファゼン触媒を組み合わせた系がプロセス化学の観点から検討されている[22]

Ca触媒による官能基許容性の拡張

カルシウム塩を触媒とする穏和なベックマン転位が報告されており、アリールアセタール、Boc保護アミン、遊離アミン、ピリジン、インドール、ベンズイミダゾールなど、古典的な強酸条件では耐えられないと考えられる官能基の共存下でも進行すると報告されている[11]。医薬化学におけるアミドライブラリ合成を意識した設計である。

パラセタモール(アセトアミノフェン)合成 — メカノケミカル

4′-ヒドロキシアセトフェノンオキシムのベックマン転位(アリール移動)はパラセタモールを与える。近年、ビーズミル技術による無溶媒・メカノケミカル条件でこの変換を行うルートが報告されている[23]。「ケトンのC–C結合を切ってC–N結合を貼る」というベックマン転位の本質を、アミド結合構築法として捉え直した“cut-and-paste”戦略の一環である[15]

Pinnaic acid の全合成 — MSH試薬によるα-四級アミンの構築

Uemura らは pinnaic acid の不斉全合成において、MSH試薬(O-メシチレンスルホニルヒドロキシルアミン)を用いたベックマン転位により、α位に四級炭素をもつアザスピロ環を立体選択的に構築した[24]。MSHはケトンから直接O-スルホニルオキシムを生成させ、そのまま転位させられる点が特徴で、立体的に厳しい系で威力を発揮した例である。

Isocryptolepine の形式全合成 — ラジカル型ベックマン転位

抗マラリア天然物 isocryptolepine の形式全合成において、ラジカル的に進行するベックマン転位とC–H活性化を組み合わせた戦略が報告されている[25]。強酸条件が使えない基質に対する解法として、「古典的なカチオン性転位」対「ラジカル条件」という対比が示された例である。

光化学的経路による「非古典的」位置異性体

可視光による三重項増感を用いると、オキシムから古典的な酸触媒ベックマン転位では得られない位置異性体(nonclassical Beckmann rearrangement products)が得られると報告されている[16]。転位適性の序列が「絶対のルール」ではないことを示す例として興味深い。

実験手順

下は、塩化シアヌル/ZnCl₂触媒系[21]を用いたシクロドデカノン → ラウロラクタムの代表的な手順である。大学の学生実験プロトコルに記載された条件を紹介する。ベックマン転位の初回検討の出発点として使いやすい。

(1)オキシムの調製

シクロドデカノン 1.5 g を95%エタノール約8 mLに溶かし、塩酸ヒドロキシルアミン 0.6 g、水 25 mL、10%水酸化ナトリウム水溶液 15 mL を加える。還流冷却器を付けて加熱還流し、ときどき撹拌する。約35分後、液面に大きな結晶が浮いてくるのが反応完結の目安である。氷冷後、ブフナー漏斗で結晶を濾取する。

精製は、粗結晶1 gあたり熱エタノール10 mLに溶かし、粗生成物1 gあたり水15 mLを加えて冷却・濾取する。得られるシクロドデカノンオキシムの融点は132–133 ℃(収率 約95%)。

(2)ベックマン転位

塩化シアヌル 8.0 mg(基質に対し約0.5 mol%)と無水塩化亜鉛 11.5 mg(約1 mol%)を無水アセトニトリル 12 mL に溶かした触媒溶液を調製し、これに(1)で得た再結晶オキシムを加える。82 ℃(還流)で約60分加熱する。

反応の進行はTLCで追跡する。展開溶媒はメチル tert-ブチルエーテル/石油エーテル = 1:1、検出はヨウ素チャンバーによる。原料オキシムの消失を指標にするとよい。

(3)後処理・精製

反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 20 mL でクエンチし、酢酸エチル 15 mL で3回抽出する。有機層を無水硫酸マグネシウム 0.5 g で約10分間乾燥し、濾過後に減圧濃縮する。

粗ラクタムは、加熱せずに 1 gあたり95%エタノール7 mLに溶かし、エタノールに対して体積比2倍量の水を加えて析出させ、濾取・乾燥する。ラウロラクタムの融点は148–149 ℃、収率は約90%。

実験のコツ・テクニック

オキシムの調製段階
  • オキシム化では E/Z混合物になるのが普通。溶媒・反応温度・試薬濃度がいずれもE/Z比に影響するため、特定異性体が必要な場合は条件検討が要る。ただし、酸性条件下ではE/Z異性化が速いため、多くの場合はE/Z混合物のまま転位させて差し支えない。
  • オキシム化の温度を上げすぎると副反応が進行し不純物が増える。
  • ピリジンを用いる系では、ピリジンが塩基兼脱水促進剤として働く。後処理でエーテル抽出後に0.5 M塩酸で2回洗うとピリジンを除去できる。
転位段階
  • 塩化シアヌル/ZnCl₂系は水に弱い。無水条件が必須である。「新鮮な無水アセトニトリルを使うか、毎日蒸留する」「塩化亜鉛は必ず無水品を使う」「塩化シアヌルは水と激しく反応するので乾燥保管する」といった注意が、学生実験用資料の指導者向け注記に明記されている。触媒溶液はその日のうちに調製するのが望ましい。
  • 反応追跡は原料オキシムの消失をTLCで見るのが実務的である(ヨウ素発色)。
  • オキシム・ラクタムとも結晶性が高い系では、融点が最も手軽で確実な確認手段になる(例:シクロドデカノンオキシム 132–133 ℃ → ラウロラクタム 148–149 ℃)。
  • ラクタムの再結晶は加熱せずにエタノールに溶かし、水で析出させるとよい。
望まない結果が出たとき
  • ニトリルが主生成物として出てきた場合異常ベックマン(Beckmann fragmentation)を疑う。オキシム炭素の隣接位にカチオン安定化基(第三級炭素、α位ヘテロ原子など)がある基質で起きやすいことが、査読文献でも指摘されている[9][10][12]。アルデヒドオキシムを基質にした場合も、脱水によるニトリル生成が競合しやすい。
  • 位置選択性が低い場合:酸性度を下げる(ネストシラノールのような弱酸点、あるいはCa触媒[11]などの穏和な活性化)ことで、転位前のE/Z異性化を抑えられる可能性がある[7]
  • 酸に弱い保護基が壊れる場合:古典条件を捨てて穏和法(Ca触媒[11]、光レドックス[13]、電気化学[14]、メカノケミカル[15])に切り替える。
試薬の安全性
  • MSH試薬は極めて不安定であり、単離・保存を前提とした通常の試薬としては扱いにくい。フロー系でその場調製・その場消費する手法が開発されている。調製・使用・安全性については論文を参照[26]
  • ヒドロキシルアミン-O-スルホン酸(HOSA)は吸湿性で、室温保管可だが冷暗所(<15 ℃)・不活性ガス下が推奨される。GHS区分は H302+H312+H332(経口・経皮・吸入で有害)、H314(重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷)、H290(金属腐食性のおそれ)。
  • 塩酸ヒドロキシルアミンも皮膚刺激性・腐食性があり、手袋の着用が必須とされている。
  • 塩化シアヌルは水と激しく反応する。アセトニトリルは経皮吸収される点にも注意。
  • 濃硫酸・PPAを用いる古典条件、およびシクロヘキサノンオキシムの大スケール転位は発熱制御が本質的な課題であり、スケールアップ時には反応熱量計(RC1)等による事前評価が標準的とされている。マイクロリアクター化を本質的安全設計の観点から評価した研究もある。

参考文献

  1. Gawley, R. E. Org. React. 1988, 35, 1–420. DOI: 10.1002/0471264180.or035.01
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第43回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

テーマ「創薬化学の新たな潮流 多彩なアプローチで未来を創る」 日時2026年11月11日…

圧力は「設定値」だけで決まらない【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

査読に AI を使われた体験談

生成 AI の普及は加速しており、調べもの、英文校閲など研究者の皆さんも活用していることと思います。…

フィーゼルマン チオフェン合成/Fiesselmann Thiophene Synthesis

概要フィーゼルマン チオフェン合成(Fiesselmann Thiophene Synthesi…

“とび跳ねる水滴”に潜む物理 〜接触時間とエネルギー源で読む撥水・防氷のテク〜

熱したフライパンに落ちた水滴が、玉になってコロコロと走り回り、冷えた面では、結露水が合体した瞬間に跳…

AI時代に研究者がすでに持っている力・これから伸ばしたい力

論文要約や文献検索など、研究現場でもAI活用が日常化する一方、「自分の仕事の先行き」に漠然とした不安…

miHub®を活用した探索的データ解析の実践

開催概要研究開発においてデータ活用が進む中、機械学習モデルの構築や予測解析に…

“ある特効薬”のはなし ~本田宗一郎氏の回想から

Tshozoです。最近実家に戻っては色々と廃棄するなどの店じまいを少しずつ進めているのですが、中…

高分子鎖を束ねた新しい共重合体「束状共重合体」が誕生

第715回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科(植村研究室)に所属されていた亀谷…

2026年「有機溶媒危機」へのアンサー。北大発・メカノクロスが挑む、溶媒に依存しない新たな合成法 = “メカノケミカル有機合成”の社会実装

株式会社メカノクロスは、メカノケミカル有機合成技術の社会実装に挑む北海道大学発の…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

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