[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

Heterocyclic Chemistry

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”1405133007″ locale=”JP” title=”Heterocyclic Chemistry”]

内容

Heterocyclic chemistry comprises at least half of all organic chemistry research worldwide. In particular, the vast majority of organic work done in the pharmaceutical and agrochemical industries is heterocyclic chemistry.

The fifth edition of Heterocyclic Chemistry maintains the principal objective of earlier editions – to teach the fundamentals of heterocyclic reactivity and synthesis in a way that is understandable to second- and third-year undergraduate chemistry students. The inclusion of more advanced and current material also makes the book a valuable reference text for postgraduate taught courses, postgraduate researchers, and chemists at all levels working with heterocyclic compounds in industry.(内容紹介より)

対象

  • 複素環合成を行なう研究者・創薬化学者・大学院生・学部生

解説

700ページにわたる分量で記述される複素環合成の教科書。複素環合成に取り組む方が参照するに適する決定版書籍である。定評があるため版が重ねられ、2010年発刊の第5版が最新版となっている。

大まかな構成は以下の通りである。

1章:複素環の命名法
2章:複素環の構造化学・スペクトルデータ
3~6章:複素環合成の総論
7~30章:複素環合成の各論
31~33章:複素環にまつわるトピック

2章では複素環の構造化学として軌道論や結合長などにに加え、代表的なNMR化学シフト値や吸光波長などもまとめられており(下図)、現場のリファレンスとしても有益な情報源となる。

heterocyclic_chemistry_5th_1

本書より引用

3~6章は、複素環合成に関わる反応性、有機金属化学、実験法、逆合成などの総論である。どういった種類の考え方で複素環が合成されているか、どのような反応形式が世の中にあるのかを概観的に掴めるため、複素環合成に入門したばかりの学生達には特に適したレベルの内容だろう。最新の知見も多数盛り込まれており、たとえば触媒的C-H活性化などにも言及がある。

7~30章では、主要な複素環種別ごとに、どういう考え方・合成法でアプローチしていけば良いのか?が各論的に述べられている。単なる条件式の羅列ではなく反応形式毎に整理されているため、読複素環合成について包括的・体系的な理解が読み進めるうちに持てる構成になっている。たとえば「ピリジン」の項では、「窒素の酸化」「スルホニル化」「トリアジンからの合成法」「求核付加-脱離」「金属-ハロゲン交換」・・・といった具合である。各項目における代表的な実用条件・人名反応などは、もちろん一通り網羅されている。構造式の重要ポイントは赤でハイライトされ、見やすさにも配慮がある。各章末には実際の全合成例や演習問題も付属しており、理解を深める助けとなってくれる。

本書より引用

本書より引用

31~33章では、複素環化合物の応用的な側面について述べられている。具体的には材料・生化学・医薬化学領域に関わる話題に関して簡単に言及されている。合成法が主題ということもあり、本項ではあくまで読者の興味を引く程度の”さわり”しか述べられていない。各内容を深く学ぶには、専門書を当たる必要があるだろう。

ざっと眺めるだけでも、本当にバリエーション豊かな合成法・斬新な逆合成があることが分かる。環構築といえば脱水縮合、置換基導入といえばリチオ化かクロスカップリング・・・といった紋切り型の理解から、一歩進んだ考え方を身につける目的にも本書は役立つだろう。それなりの経験を積んだ合成化学者であっても、これまで見過ごしてきた反応条件を本書で沢山見いだすことができるはずだ。

2012年に本書の抄録版、2016年にその邦訳が刊行されている。複素環合成を学び始めたばかりの方、日本語で読みたい方はこちらも検討候補として欲しい。

[amazonjs asin=”B00A6WOJ18″ locale=”JP” title=”Heterocyclic Chemistry At A Glance”] [amazonjs asin=”4807908790″ locale=”JP” title=”ヘテロ環の化学: 基礎と応用”]

関連書籍

[amazonjs asin=”3527312420″ locale=”JP” title=”Modern Heterocyclic Chemistry”]

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 2016年1月の注目化学書籍
  2. Cyclopropanes in Organic Synthes…
  3. 物質科学を学ぶ人の空間群練習帳
  4. ステファン・カスケル Stefan Kaskel
  5. 固体材料の強度と物性評価のための分子動力学法入門
  6. 【書籍】すぐにできる! 双方向オンライン授業 【試験・評価編】
  7. 有機合成のための新触媒反応101
  8. 有機化学1000本ノック【反応機構編】

注目情報

ピックアップ記事

  1. ベンゼン環をつないで 8 員環をつくる! 【夢の三次元ナノカーボンの創製に向けて】
  2. アーサー・L・ホーウィッチ Arthur L. Horwich
  3. 『Ph.D.』の起源をちょっと調べてみました① 概要編
  4. Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations
  5. 私がケムステスタッフになったワケ(3)
  6. 【速報】2013年イグノーベル化学賞!「涙のでないタマネギ開発」
  7. 世界初、RoHS 指令の制限物質不使用で波長 14.3μm の中赤外光まで検出可能な検出器を量産化
  8. 新たなクリックケミストリーを拓く”SuFEx反応”
  9. 分子研「第139回分子科学フォーラム」に参加してみた
  10. はてブ週間ランキング第四位を獲得

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年11月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

\課題に対してマイクロ波を試してみたい方へ/オンライン個別相談会

プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーである”マイクロ波”について、今回は、適用を検討してみ…

四国化成ってどんな会社?

私たち四国化成ホールディングス株式会社は、企業理念「独創力」を掲げ、「有機合成技術」…

世界の技術進歩を支える四国化成の「独創力」

「独創力」を体現する四国化成の研究開発四国化成の開発部隊は、長年蓄積してきた有機…

第77回「無機材料の何刀流!?」町田 慎悟

第77回目の研究者インタビューは、第59回ケムステVシンポ「無機ポーラス材料が織りなす未来型機能デザ…

伊與木 健太 Kenta IYOKI

伊與木健太(いよき けんた,)は、日本の化学者。東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授。第59回ケ…

井野川 人姿 Hitoshi INOKAWA

井野川 人姿(いのかわひとし)は、日本の化学者。崇城大学工学部ナノサイエンス学科准教授。第59回ケム…

開発者に聞く!試薬の使い方セミナー2026 主催: 同仁化学研究所

この度、同仁化学研究所主催のオンラインセミナー(参加無料)を開催いたします。注目されるライフ…

町田 慎悟 Shingo MACHIDA

町田 慎悟(まちだ しんご, 1990年 06月 )は、日本の化学者。2026年1月現在、ファインセ…

ガリウムGa(I)/Ga(III)レドックス反応を経る化学変換 ―13族典型元素を基盤とする新規触媒設計への道を拓く―

第690回のスポットライトリサーチは、大阪大学大学院工学研究科(鳶巣研究室)博士後期課程2年の向井虹…

持てるキャリアを生かせるUターン転職を その難題をクリアしたLHHのマッチング力

両親が暮らす故郷に戻り、家族一緒に暮らしたい――そんなUターンの希望を持つ方にとって大きな懸念となる…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP