[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

芳香族ボロン酸でCatellani反応

[スポンサーリンク]

パラジウム触媒を用いた芳香族ボロン酸を基質とするCatellani反応が報告された。ホスフィン配位子を必要とせず、多くの基質において空気下で反応が進行する。

Catellani反応とその応用

炭素–水素結合を直接炭素–炭素結合へと変換する反応は最も効率的な炭素–炭素結合形成法の一つとして注目され、現在精力的に研究がされている。その中でも、Catellani反応は信頼性の高い手法として知られている。Catellani反応はノルボルネン(NBE)を助触媒として、パラジウム触媒により芳香族ハロゲン化物のオルト位のC–H変換とイプソ位でのカップリングを一挙に進行させる反応である(図1A)[1]。これ以降、Catellani反応を基にNBEを助触媒とした芳香環上のC–H結合の直接変換反応が盛んに研究されてきた。2011年Bachらは、Catellani型の反応様式によりインドールC2位のC–Hアルキル化を報告した(図1B)[2a]。インドール窒素上へのパラジウムの配位が起点となり、C2位のC–H変換が進行する。2015年Yuらは、配向基を利用し、オルト位C–H活性化を経由するCatellani型のメタ位選択的C–Hアルキル化に成功している(図1C)[2b]

 今回、武漢大学のZhouらは、芳香族ボロン酸(エステル)を用いるCatellani反応を報告した(図1D)。なお、Zhouらとほぼ同時期に、Zhangらが同様に芳香族ボロン酸のCatellani反応を開発している[2c]

図1. NBEを用いたCatellani型C–H変換反応

 

The Discovery of a Palladium(II)-Initiated Borono-Catellani Reaction

Chen, S.; Liu, Z.-S.; Yang, T.; Hua, Y.; Zhou, Z.; Cheng, H.-G.; Zhou, Q. Angew. Chem., Int. Ed.2018, 57, 7161.

DOI: 10.1002/anie.201803865

論文著者の紹介

研究者:Qianghui Zhou

2001–2005 B.S., Peking University (Prof. Weihong Li and Prof. Jin-Guang Wu)
2005–2010 Ph.D., Shanghai Institute of Organic chemistry(Prof. Dawei Ma)
2010–2011 Research Associate, Shanghai Institute of Organic chemistry(Prof. Dawei Ma)
2011–2015 Posdoc, Scripps Research Institute (Prof. Phil S. Baran)
2015.6– Professor, College of Chemistry and Molecular Sciences, Wuhan University
2015.8– Joint Professor, Institute for Advanced Studies, Wuhan University
研究内容:天然物合成、反応開発、プロセス化学

論文の概要

本反応はNBE誘導体、炭酸カリウムおよび触媒量の酢酸パラジウム存在下、芳香族ボロン酸(エステル)と臭化またはヨウ化アルキルおよび末端オレフィンをDMA溶媒中空気下30 °Cで反応させることにより、オルト位のアルキル化とイプソ位での溝呂木–Heck型反応が一挙に進行し、中程度から良好な収率で三成分連結体を与える(図2A)。NBE誘導体としては5位にシアノ基をもつもの(図1D[NBE])が効果的であった。ボロン酸としてはベンゼン環上にハロゲンをもつものやオルト位にイソプロピル基など嵩高い置換基をもつもの、さらにはヨードピリジンでも反応が進行する。また、一級の臭化アルキルに限られるが、シアノ基やヒドロキシ基といった高反応性官能基をもつものが適用できる。オレフィンとしてはa,b-不飽和カルボニルおよびスチレン誘導体が反応する。

 著書らはヨードアレーン部位とアリールボロン酸エステル部位をあわせもつ基質1を用い応用展開を示している(図2B)。化合物1を従来のCatellani反応の条件に付すと、分子内鈴木–宮浦カップリング体3が優先して生成し、ヨードアレーンのみが反応したCatellani体2の収率は2%にとどまる。一方で、1に対して今回開発した反応を適用すると、反応は化学選択的に進行し、ボロン酸エステル部位のみが反応して生成する化合物4を収率67%で与えた。残るヨードアレーン部位はさらなる変換が可能であり、例えば4を従来のCatellani反応の条件に付すことで、5へと誘導できる。

 以上のように芳香族ボロン酸のCatellani反応が報告された。今後本反応が天然物合成などに応用されることを期待したい。

図2. (A) 基質適用範囲 (B) 1を用いた化学選択的なCatellani反応

参考文献

  1. Catellani, M.; Frignani, F.; Rangoni, A. Angew. Chem., Int. Ed. Engl.1997, 36, 119. DOI: 10.1002/anie.199701191
  2. (a) Jiao, L.; Bach, T. J. Am. Chem. Soc.2011, 133, 12990. DOI: 10.1021/ja2055066(b) Wang, X.-C.; Gong, W.; Fang, L.-Z.; Zhu, R.-Y.; Li, S.; Engle, K. M.; Yu, J.-Q. Nature 2015, 519, 334. DOI: 10.1038/nature14214 (c) Shi, G.-F.; Shao, C.-D.; Ma, X.-T.; Gu, Y.-C.; Zhang, Y.-H. ACS Catal. 2018, 8, 3775. DOI: 10.1021/acscatal.8b00637
webmaster

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. #おうち時間を充実させるオンライン講義紹介 ーナノテクー
  2. カーボンナノベルト合成初成功の舞台裏 (1)
  3. ヒュッケル法(後編)~Excelでフラーレンの電子構造を予測して…
  4. 地球外生命体を化学する
  5. 多検体パラレルエバポレーションを使ってみた:ビュッヒ Multi…
  6. アメリカ大学院留学:卒業後の進路とインダストリー就活(2)
  7. 光誘起電子移動に基づく直接的脱カルボキシル化反応
  8. 酸化反応を駆使した(-)-deoxoapodineの世界最短合成…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学で何がわかるかーあなたの化学、西暦何年レベル?ー
  2. Nsアミン誘導体
  3. 水素化ホウ素ナトリウムを使う超小型燃料電池を開発
  4. “Wakati Project” 低コストで農作物を保存する技術とは
  5. スティーブン・リパード Stephen J. Lippard
  6. 乙種危険物取扱者・合格体験記~Webmaster編
  7. 2011年ロレアル・ユネスコ女性科学者 日本奨励賞発表
  8. ビス(ピナコラト)ジボロン:Bis(pinacolato)diboron
  9. ゴム状硫黄は何色?
  10. 研究職の転職で求められる「面白い人材」

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

注目情報

注目情報

最新記事

作った分子もペコペコだけど作ったヤツもペコペコした話 –お椀型分子を利用した強誘電体メモリ–

第311回のスポットライトリサーチは、埼玉大学大学院 理工学研究科 基礎化学コー…

【マイクロ波化学(株)環境/化学分野向けウェビナー】 #CO2削減 #リサイクル #液体 #固体 #薄膜 #乾燥 第3のエネルギーがプロセスと製品を変える  マイクロ波適用例とスケールアップ

<内容>本イベントでは、環境/化学分野の事業・開発課題のソリューションとして、マイクロ波をご紹介…

医療用酸素と工業用酸素の違い

 スズキは29日、インドにある3工場の生産を一時停止すると明らかにした。インドでは新型コロナウイルス…

世界初のジアゾフリーキラル銀カルベン発生法の開発と活性化されていないベンゼノイドの脱芳香族化反応への応用

第310回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府 (根本研究室)・伊藤 翼さんにお願い…

キムワイプをつくった会社 ~キンバリー・クラーク社について~

Tshozoです。本件先日掲載されたこちらのArticleの追っかけでネタ色が強いですが書いてみるこ…

Advanced Real‐Time Process Analytics for Multistep Synthesis in Continuous Flow

In multistep continuous flow chemistry, studying c…

三角形ラジカルを使って発光性2次元ハニカムスピン格子構造を組み立てる!

第309回のスポットライトリサーチは、木村舜 博士にお願いしました。金属と有機配位子がネット…

第148回―「フッ素に関わる遷移金属錯体の研究」Graham Saunders准教授

第148回の海外化学者インタビューは、グラハム・サウンダース准教授です。ニュージーランドのハミルトン…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP