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化学書籍レビュー

持続可能な社会を支えるゴム・エラストマー:新素材・自己修復・強靱化と最先端評価技術

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概要

エラストマーは常温で弾性を示す物質であり,粘弾性を示すゴムが代表だ.タイヤ用途が中心だが,電子材料や医療用材料からビル(免震ゴム)や橋桁などの巨大建造物まで,その用途は広がりを見せている.とりわけ化学架橋構造を持たない熱可塑性エラストマーの利用は大きく進展している.本書では,バイオマス材料である天然ゴムの研究,天然ゴムを凌ぐ新たなゴム素材の開発,熱可塑性エラストマーと新エラストマーの開発や多様な解析手法を,基礎と応用バランス良く紹介する.(引用:化学同人書籍紹介より).

対象者

エラストマー研究に携わっている研究者や学生。タイヤなどの身の回りのエラストマーの物性やその研究トピックに興味のある方。

目次

PartⅠ 基礎概念と研究現場

  1. フロントランナーに聞く:未来エラストマーと科学技術
  2. 活躍するエラストマー
  3. エラストマーの基礎
    • エラストマーの基礎科学
    • エラストマーの素材と応用

PartⅡ 研究最前線

  1. 天然ゴム
  2. トチュウ種子バイオマス由来のエラストマー
  3. 天然ゴムにヒントを得た革新的な合成ゴム
  4. 熱可塑性エラストマー
  5. 環動架橋によるしなやかでタフなエラストマーの開発
  6. 自己修復性エラストマー
  7. 複合架橋エラストマー
  8. ゴムNMR法による架橋点の構造解析
  9. AFMによるエラストマー材料解析
  10. 散乱法によるゴムの階層構造解析
  11. エラストマーのき裂特性の解析
  12. 充填系ゴムの物理
  13. ゴム破壊の本質理解とエネルギー散逸の歪み依存性制御による新しい高強度ゴム材料
  14. エラストマーの粘着・剥離
  15. 高架橋ゴムの構造・ダイナミックス
  16. ゴム・エラストマー材料設計のためのシミュレーション技術
  17. ディープラーニングを用いたゴム中フィラー凝集構造解析
  18. 誘電アクチュエータ用の環動架橋エラストマーの特性
  19. シューズ用エラストマーの進化と深化
  20. 歪みを可視化できるセルロース液晶エラストマー

Part Ⅲ 役に立つ情報・データ

内容

本書は、化学同人社より出版されている「CSJ カレントレビュー」シリーズです。本書では、ゴムといった常温で弾性を示す物質を指すエラストマーに関連した研究を紹介しています。章の構成は他のCSJカレントビューと同じで、専門家による座談会に続いて、基礎知識、最先端の研究紹介と続いています。

Part1 第1章の座談会はエラストマーの歴史から始まっており、コロンブスによる天然ゴムの発見から戦争とエラストマー研究の関連性などについて語られています。話題は続いて天然ゴムの研究に移り、身の回りのエラストマーであるタイヤや、ゴム研究の展開などについて展開されています。座談会に参加されているのは、東大・東工大の西敏夫 名誉教授、長岡技術科学大学の川原成元 教授、京大の竹中幹人 教授、住友ゴムの池田育嗣 会長、ブリジストンの角田克彦 首席研究主幹であり、アカデミックに関する内容だけでなく企業に関する内容も多く座談会で取り扱われていて、特にウクライナ戦争とゴムの関係やミシュランにおける秘密保持についてのエピソードは興味深い内容となっています。

第2章は、活躍するエラストマーというタイトルで各国のゴムの生産量・使用量、ゴム・エラストマーの歴史、タイヤや免震ゴムの機能、将来の展望などが解説されています。本章も第1章同様に読みやすく、特に年表でエラストマーの歴史がまとめられている箇所は、いつの時代にどこまでの技術が開発されていたかを実感することができます。写真も多く掲載されており、タイヤや免震ゴムの構造を視覚でも理解することができます。第3章はエラストマーの基礎を解説しています。前半のエラストマーの基礎科学では、鎖状高分子のエントロピー弾性とそこに基礎を置く古典網目弾性論について解説しています。現象を理解するために数式やグラフが折り込まれていて理論の理解には最適だと思います。一方、後半ではエラストマーの素材と応用として、素材の配合がどのように製品の性能に影響するかを解説しています。内容は、タイヤ、免震ゴム、シールについてで、広く浅く取り扱われており、応用別の観点を理解するのに有用だと思います。

Part2では20の研究例について紹介しており、まず第1章から3章は天然ゴムに関する研究内容です。Part1でも触れられていますが、天然ゴムは古くからある素材であるものの解明されていない部分も多く、研究が続けられています。本章では、天然ゴムの構造、新たなエラストマーの原料の研究、天然ゴムの構造をヒントに開発された合成ゴムについての研究が紹介されています。第4章から7章は、新しいタイプのエラストマーとして熱可塑性エラストマーや自己修復性エラストマーなどの研究を紹介しています。機能の発現には特異なポリマー構造が関連しており、どのような分子構造のメカニズムで効果が表れるのかこのパートを読むと理解することができます。

第8章から17章は、エラストマー解析、シミュレーション研究の新展開という内容です。細かく内容を見ると、8章から10章は、NMR、AFM、X線を使った構造解析で、11章から15章は、機械特性や粘着・剝離などに関する解析、16章、17章はシミュレーションに関する内容となっています。前半の構造解析について分析機器としては他の分野でも使われていても、エラストマーの解析では手法や観点が異なり興味深い内容でした。中盤では、エラストマーに力が加わって形状が変化する時の状態を観測しています。最後のパートである18章から20章では、エラストマー開発の新潮流として新たな応用に関する研究内容を紹介しています。特に気になったのは19章のシューズ用エラストマーについてで、オリンピックや箱根駅伝といったイベントで最新のランニングシューズについて注目を集めることがありますが、素材の進化もパフォーマンス向上に貢献していることがこの章を読んで分かりました。Part2をまとめると、エラストマーの代表的な製品としてタイヤが例示されるように、応用に関する内容がほとんどかと予想しましたが構造解析やき裂特性の解析など、基礎研究的な内容も取り扱われており、広い分野の研究内容を本書から知ることができます。

全体としてエラストマーの専門でなくても理解できる内容になっています。身近な物に関連しているということでそのエラストマーの化学に踏み込んでみたい方は、お勧めの書籍です。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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