[スポンサーリンク]

化学一般

日本にノーベル賞が来る理由

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4022732520″ locale=”JP” title=”日本にノーベル賞が来る理由 (朝日新書)”]

概要

日本にノーベル賞ラッシュがやって来た! 快挙の背景には国際社会の明確な意思がある。「対称性の破れ」とその「回復」をキーワードに、湯川秀樹以来の16人の受賞者を検証。原爆、核開発からポスト冷戦後まで、パワーポリティクスを鮮やかに読み解き、日本の進むべき道を指し示す。世界の研究と開発を左右する、「最高権威」ノーベル財団の戦略とは。

対象

「ノーベル賞を取り巻く社会情勢・人間模様」に興味のある全ての人。

評価・内容

巷にあふれているノーベル賞関連の書物は、受賞者自身の研究業績、社会へのインパクト、面々と続く科学史における位置づけ・・・などの観点から論ぜられたものがほとんどです。

しかし「日本にノーベル賞が来る理由」は、それらとは一線を画したスタンスをとっています。すなわち、ノーベル賞授与のプロセスに対し、【世界平和という理念の傘の下で、「社会情勢・国際情勢・政治観点」を配慮しつつも、ノーベル賞委員会が大々的に発するメッセージ的企画】という切り口で分析を試みているのです。

たとえば、

● ノーベル賞の基礎理念は世界平和であるがゆえ、原爆製造者はいかに化学に貢献していようが受賞しない
● 平和が崩れないよう、ノーベル賞の受賞者は情勢のバランスをとって決めている。
● 受賞者を推測するには、ノーベル賞委員会の「企画意図」を読むことがカギ。
● 日本にノーベル賞が来る理由―それは日本に期待されている役割、世界が注目する日本の役割を理解し果たすべきだ、というノーベル賞委員会、ひいては世界からのエールである。

・・・などなど。さらにはこういった背景を踏まえたうえで、「日本の科学行政がどうあるべきか」ということに対する斬新なアクションプランをも自ら提示しています。

ピュアな理系研究者視点からは到底想像出来ないような話が満載であり、かなり刺激的な読み物となっています。

詳細の妥当性については各読者の判断にゆだねたいと思いますが、ともあれかなりユニークな立ち位置の書物ではあります。「こういう見方もできるのか!」と筆者自身大変に刺激を受けました。大変に切れのある筆致でもあり、個人的にはこういう書物は大変好みです。

一大イベントであるノーベル賞を、単なる一過性のお祭りで消費してしまわないため、未来への糧と繋げていくためにも、一度は読んでおくに値する書物だと思えます。

関連書籍

[amazonjs asin=”4582856063″ locale=”JP” title=”知っていそうで知らないノーベル賞の話 (平凡社新書)”][amazonjs asin=”4797342005″ locale=”JP” title=”現代科学の大発明・大発見50 なぜその発明・発見はノーベル賞につながったのか? (サイエンス・アイ新書)”]

関連リンク

日本にノーベル賞が来た理由 本書のもととなった日系ビジネスでの連載コラムの一節。本書に興味を持った方は、是非試しに読んでみてください。記事一覧はこちらにまとまっています。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 有機分子触媒の化学 -モノづくりのパラダイムシフト
  2. 手で解く量子化学I
  3. 集積型金属錯体
  4. 桝太一が聞く 科学の伝え方
  5. 構造生物学
  6. 【書評】科学実験でスラスラわかる! 本当はおもしろい 中学入試の…
  7. 書籍「腐食抑制剤の基礎と応用」
  8. Density Functional Theory in Qua…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 元素手帳2022
  2. 2007年文化勲章・文化功労者決定
  3. 高難度分子変換、光学活性α-アミノカルボニル化合物の直接合成法
  4. 積極的に英語の発音を取り入れてみませんか?
  5. エノラートの酸化的カップリング Oxidative Coupling of Enolate
  6. セライトのちょっとマニアックな話
  7. ノビリシチンA Nobilisitine A
  8. 触媒的C-H酸化反応 Catalytic C-H Oxidation
  9. 2015年ケムステ人気記事ランキング
  10. チェーンウォーキングを活用し、ホウ素2つを離れた位置へ導入する!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年9月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP