[スポンサーリンク]

化学一般

日本にノーベル賞が来る理由

概要

日本にノーベル賞ラッシュがやって来た! 快挙の背景には国際社会の明確な意思がある。「対称性の破れ」とその「回復」をキーワードに、湯川秀樹以来の16人の受賞者を検証。原爆、核開発からポスト冷戦後まで、パワーポリティクスを鮮やかに読み解き、日本の進むべき道を指し示す。世界の研究と開発を左右する、「最高権威」ノーベル財団の戦略とは。

対象

「ノーベル賞を取り巻く社会情勢・人間模様」に興味のある全ての人。

評価・内容

巷にあふれているノーベル賞関連の書物は、受賞者自身の研究業績、社会へのインパクト、面々と続く科学史における位置づけ・・・などの観点から論ぜられたものがほとんどです。

しかし「日本にノーベル賞が来る理由」は、それらとは一線を画したスタンスをとっています。すなわち、ノーベル賞授与のプロセスに対し、【世界平和という理念の傘の下で、「社会情勢・国際情勢・政治観点」を配慮しつつも、ノーベル賞委員会が大々的に発するメッセージ的企画】という切り口で分析を試みているのです。

たとえば、

● ノーベル賞の基礎理念は世界平和であるがゆえ、原爆製造者はいかに化学に貢献していようが受賞しない
● 平和が崩れないよう、ノーベル賞の受賞者は情勢のバランスをとって決めている。
● 受賞者を推測するには、ノーベル賞委員会の「企画意図」を読むことがカギ。
● 日本にノーベル賞が来る理由―それは日本に期待されている役割、世界が注目する日本の役割を理解し果たすべきだ、というノーベル賞委員会、ひいては世界からのエールである。

・・・などなど。さらにはこういった背景を踏まえたうえで、「日本の科学行政がどうあるべきか」ということに対する斬新なアクションプランをも自ら提示しています。

ピュアな理系研究者視点からは到底想像出来ないような話が満載であり、かなり刺激的な読み物となっています。

詳細の妥当性については各読者の判断にゆだねたいと思いますが、ともあれかなりユニークな立ち位置の書物ではあります。「こういう見方もできるのか!」と筆者自身大変に刺激を受けました。大変に切れのある筆致でもあり、個人的にはこういう書物は大変好みです。

一大イベントであるノーベル賞を、単なる一過性のお祭りで消費してしまわないため、未来への糧と繋げていくためにも、一度は読んでおくに値する書物だと思えます。

関連書籍

関連リンク

日本にノーベル賞が来た理由 本書のもととなった日系ビジネスでの連載コラムの一節。本書に興味を持った方は、是非試しに読んでみてください。記事一覧はこちらにまとまっています。

The following two tabs change content below.
cosine

cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. The Sol-Gel Handbook: Synthesis,…
  2. Handbook of Reagents for Organic…
  3. Classics in Total Synthesis
  4. 活性酸素・フリーラジカルの科学: 計測技術の新展開と広がる応用
  5. 2016年9月の注目化学書籍
  6. 研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ
  7. 【書籍】化学探偵Mr.キュリー5
  8. アルカロイドの科学 生物活性を生みだす物質の探索から創薬の実際ま…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 水素化ホウ素ナトリウム Sodium Borohydride
  2. 化学素人の化学読本
  3. “関節技”でグリコシル化を極める!
  4. どっちをつかう?:cooperateとcollaborate
  5. 第33回「セレンディピティを計画的に創出する」合田圭介 教授
  6. 光線力学療法 Photo Dynamic Therapy (PDT)
  7. 天然物化学
  8. 化学メーカー研究開発者必見!!新規事業立ち上げの成功確度を上げる方法
  9. トロスト不斉アリル位アルキル化反応 Trost Asymmetric Allylic Alkylation
  10. フェイスト・ベナリー フラン合成 Feist-Benary Furan Synthesis

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

有機合成化学の豆知識botを作ってみた

皆さんこんにちは。めっきり実験から退き、教育係+マネジメント係になってしまったcosineです。…

デニス・ドーハティ Dennis A. Dougherty

デニス・A・ドーハティ(Dennis A. Dougherty、1952年12月4日-)は、米国の物…

ベンゼンの直接アルキル化

ベンゼンにアルキル基を導入したいとき、皆さんはどのような手法を用いますか? (さらに&hel…

アメリカ大学院留学:TAの仕事

私がこれまでの留学生活で経験した一番の挫折は、ティーチングアシスタント(TA)です。慣れない英語で大…

2017年の注目分子はどれ?

今年も残りあとわずかとなり、毎年おなじみのアメリカ化学会(ACS)によるMolecules of t…

アルデヒドのC-Hクロスカップリングによるケトン合成

プリンストン大学・David W. C. MacMillanらは、可視光レドックス触媒、ニッケル触媒…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP