[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

Louis A. Carpino ルイス・カルピノ

[スポンサーリンク]

ルイス・A・カルピノ(Louis A. Carpino、××年×月×日-、アイオワ州出身)は米国の有機化学者である。マサチューセッツ大学アマースト校 名誉教授。

経歴[1]

1950年 アイオワ大学 卒業
1953年 アイオワ大学 博士号取得(H. R. Snyder教授)
1953-1954年 サウスカロライナ大学 博士研究員(D. F. Detar教授)
1954年- マサチューセッツ大学アマースト校 スタッフ(何年から教授になったかは不明)
2005年 マサチューセッツ大学アマースト校 名誉教授

受賞歴

1989年~1990年 University Samuel Conti Faculty Fellowship Award
1992年 Raloh F. Hirschmann American Chemical Society Award in Peptide Chemistry

 

研究概要

ペプチド合成法から合成に必要な保護基の開発、縮合剤の研究に至るまでペプチドの合成に関わる多くの研究に取り組んでいる。

保護基の開発

Carpinoは1957年に1,1-二置換ヒドラジンの合成の際にBoc基を導入したヒドラジンを用いることで過剰なアルキル化を防げることを発見した[2]

これにより、Boc基がアミノ基の保護基として有用であることを見出した。
また、1970年にはFmoc基がアミノ基の保護基として有用であることを報告し[3a]、その詳細な基質検討を1972年[3b]に報告している(Boc基、Fmoc基の脱保護についてはこちらを参照)。

これら2つの保護基の開発は、後の固相合成法の確立にも貢献したと言える(メリフィールド ペプチド固相合成法を参照)。またこれ以外にもより脱保護容易なBsmoc基d)やそれをNp基へと変化させさらに結晶化しやすくしたNsmoc基[4]、脂溶性の高い保護基としてDcpm基[5]やDmcp基[5]など数多くの保護基を開発している。

ペプチドの縮合方法の開発

Carpinoはペプチド縮合法の開発の大家でもある。1993年、CarpinoはDCCやEDCと既に開発されていたペプチド縮合剤のHOBtやHOAtを組み合わせることにより、これまでよりもラセミ化しない条件でのペプチドの縮合が可能となったことを報告している[6](縮合剤についてはこちらを参照)。本合成法も後にペプチド固相合成法へと応用されている。

LPPSの開発

Carpinoは1986年にFmocアミノ酸の酸塩化物と4-アミノメチルピペリジンを用いた6~8アミノ酸ユニットの液相ペプチド合成法[7a,b]を開発している。また、1990年には用いる脱保護剤としてトリス(2-アミノメチル)アミンが有効であることも報告している[8]。これにより、それまでの液相合成法で問題となっていたベンゾフルベンをアミンがトラップすることでき、目的とするペプチドをより簡便に得られるようになった。さらに2003年にはFmoc基だけでなくBsmoc基やDmcp基なども用いることで22個ものアミノ酸からなるペプチドの液相ペプチド合成法の確立も達成している[9]

関連文献

  1. L. A. Carpino, Acc. Chem. Res., 1973, 6, 191. DOI: 10.1021/ar50066a003
  2. L. A. Carpino, J. Am. Chem. Soc.195779, 4427. DOI: 10.1021/ja01573a050
  3. a) L. A. Carpino, G. Y. Han, J. Am. Chem. Soc.197092, 5748. DOI: 10.1021/ja00722a043, b) L. A. Carpino, G. Y. Han, J. Org. Chem.197237, 3404. DOI: 10.1021/jo00795a005
  4. L. A. Carpino, M. Philbin, M. Ismail, et al.J. Am. Chem. Soc.1997119, 9915. DOI: 10.1021/ja9713690
  5. L. A. Carpino, H.-G. Chao, S.Ghassemi, et al.J. Org. Chem.199560, 7718. DOI: 10.1021/jo00129a005
  6. L. A. Carpino, J. Am. Chem. Soc.1993115, 4397. DOI: 10.1021/ja00063a082
  7. a) L. A. Carpino, B. J. Cohen, K. E. Stephen, et al.J. Org. Chem., 198651, 3734. DOI: 10.1021/jo00369a042 b)M. Bienert, L. A. Carpino, et al., J. Org. Chem.199055, 721. DOI: 10.1021/jo00289a056
  8. L. A. Carpino, D. Sadat-Aalaee, M. Beyermann, J. Org. Chem.199055, 1673. DOI: 10.1021/jo00292a050
  9. Carpino, L. A. et al. Org. Proc. Res. Dev. 2003, 7, 28. DOI: 10.1021/op0202179

 

gladsaxe

投稿者の記事一覧

コアスタッフで有りながらケムステのファンの一人。薬理化合物の合成・天然物の全合成・反応開発・計算化学を扱っているしがない助教です。学生だったのがもう教員も数年目になってしまいました。時間は早い。。。

関連記事

  1. ウォルフガング-クローティル Wolfgang Kroutil
  2. 中村 真紀 Maki NAKAMURA
  3. 高橋 大介 Daisuke Takahashi
  4. 上田 善弘 Yoshihiro Ueda
  5. 池田 菊苗 Kikunae Ikeda
  6. ジョン・アンソニー・ポープル Sir John Anthony …
  7. 砂塚 敏明 Toshiaki Sunazuka
  8. グレッグ・バーダイン Gregory L. Verdine

注目情報

ピックアップ記事

  1. 秋田英万 Akita Hidetaka
  2. 学振申請書の書き方とコツ
  3. 特長のある豊富な設備:ライトケミカル工業
  4. 投票!2014年ノーベル化学賞は誰の手に??
  5. インタビューリンクー時任・中村教授、野依理事長
  6. 総合化学大手5社、4-12月期の経常益大幅増
  7. 東大キャリア教室で1年生に伝えている大切なこと: 変化を生きる13の流儀
  8. 吉田善一 Zen-ichi Yoshida
  9. 個性あるジャーナル表紙
  10. できる研究者の論文生産術―どうすれば『たくさん』書けるのか

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年4月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP