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化学プラントにおけるAI活用事例

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ENEOS株式会社と株式会社Preferred Networks (PFN)は、大規模かつ複雑であり、長年の経験に基づいた運転ノウハウが求められる石油精製・石油化学プラントを自動運転するAIシステムを共同で開発し、このたび、ENEOS川崎製油所石油化学プラント内のブタジエン抽出装置にて2日間にわたる自動運転に成功しましたので、お知らせします。 (引用:PFNプレスリリース12月2日)

大阪ガス株式会社と株式会社宇部情報システム(UIS)は、人工知能により過去に経験がない異常予兆を早期に検知するシステムを開発しました。UISは2022年4月1日より、対象装置に合わせた本AIシステム構築サービスの提供を開始します。(引用:大阪ガスプレスリリース3月8日)

産業界のデジタルトランスフォーメーションをAIと人の協調により実現する株式会社ABEJAは、三菱ガス化学株式会社(MGC)と協業し、AEBJA Platformを基幹とした化学プラントの腐食配管の外観検査システムを開発し、2022年1月より、MGCの新潟工場で運用を開始いたしましたので、お知らせいたします。(三菱ガス化学プレスリリース3月10日)

研究開発においては、マテリアルインフォマティクスやケモインフォマティクスなどを活用することが活発に行われていますが、製造現場でもAIの活用事例がたくさん報告されています。今回は、最近報告された化学プラントに関わる実例を紹介します。

1件目は、ENEOSのプラントの自動運転についてですが、自動運転の舞台となったのはブタジエン抽出装置です。ブタジエンはエチレン製造で生成したC4混合物を原料として、溶媒を用いた抽出操作で粗生成物が得られます。この試行ではプラント装置に付帯する25個のセンサー値(温度や圧力など)を観測・予測し、12個のバルブ操作をAIが行いました。結果アラームを発砲させることなくまた、運転員が手動で介入操作を行うことなく2日間の自動運転に成功したそうです。

このプロセスにおいては、原料処理量が周囲の状況によって変化する中で、この抽出装置の状態を一定に保つ必要があります。そのため、自動運転のために開発されたAIは、その時点でのバルブ開度を保ったた時に数時間先までにどのような状態になるかを予測し、各センサーの値が上限に到達しないようなバルブ操作が導き出され実行されます。この繰り返しによって自動運転が達成されました。

AIの開発においてキーとなったのは系の持つ遅れ時間であり、装置が大きいため特定のバルブ操作が何時間後にセンサー値に大きな影響を与えることです。そのため、過去のバルブ操作とセンサー値を使った深層学習モデルでは、コントロールが難しいことが分かりました。そこでPFNでは、ENEOSの運転員やエンジニアの方からバルブ操作がセンサー値にどのような影響を与えるのかを経験や物理的知見を集め、それを反映することでデータからの学習効果だけでなく物理知識を持つモデルが完成しました。

PFN と ENEOS ではブタジエン抽出装置の試験運転を重ね、プラントの安定運転を確立していくだけでなく、他の装置への展開についても検討を続けていくそうです。

 

2件目の異常予兆を早期に検知するシステムは、天然ガスなどのエネルギーに関連する事業を行っている大阪ガスと大阪ガスリキッド、品質管理や製造現場に必要なシミュレーションなどに関するツールを開発している宇部情報システムよりプレスリリースがありました。対象の装置は、工業用向けに都市ガスから水素を製造する装置「HYSERVE」で、これまでもAIによる異常予兆検知を導入しており保全メンテナンスの改善が図られています。

これまでのAIは、過去に経験したトラブル時の異常データを学習させることで、同様のトラブルの予兆を検知することが一般的でした。しかし、新しく開発したAIでは、正常時の製造運転データを学習させることで異常な運転データの傾向を検知し、過去に経験したことがないトラブルに対しても対応できるようなったそうです。これにより状態に応じた適切メンテナンスが可能になり、損失を最小限にとどめつつ保全費用も抑えることができるとしています。

また、装置の経年変化によって運転条件が変わりAIモデルの精度低下が起こるため、従来のシステムではエンジニアがAIモデルを再学習させる必要がありました。しかし、新しいAIではユーザーサイドで正常データを入力できるように変更され、精度の維持が容易になったそうです。

UISでは、2022年4月1日よりこのAI、SAILESS(仮称)の提供を開始するそうです。さらに同様の機構を持つシステムを他の装置に展開していく予定です。

 

最後は、三菱ガス化学とABEJAからの発表であり、プラント腐食配管の外観検査システムを構築したそうです。

プラントの配管は時間が経つと腐食が発生し、それを放置すると中を通る液体や気体が漏れて大きな事故になります。そのため日々、腐食を確認して回り、必要に応じて補修を行う必要があります。三菱ガス化学新潟工場においては、担当者が腐食を見つけては写真を撮影し保守担当者がそれを見て対策を判断していました。しかし、確認する画像は膨大で確認作業は大変な作業でありABEJAとともにAIを用いた画像診断技術の開発に着手しました。

具体的には、熟練者が腐食度合いを判定する方法を標準化し、AIモデル構築のための指標化を行いました。おそらく、腐食の色や大きさなどで重大なのか中程度なのかをカテゴリー分けできるようにしたと予想されます。モデルができた後も、AIの判定結果が間違っていたら保守担当者が修正し、AIが再学習を行うプロセスを持ち、精度がより高まるような機能を付与したそうです。これにより新潟工場での検査業務にかかる作業量を約50%省力化できたそうです。

腐食認識のデモ画像と解析スキーム (出典:三菱ガス化学ニュースリリース)

1件目のプラント自動運転に関して、自動車や船、電車などAIを活用した自動運転は大きなトピックとなっており、人が制御している機器はすべてAIにおける自動運転の検討対象になります。ただし機器によって難しい問題は異なり、上記のようにプラントの場合は操作の効果がすぐ現れないことであり、その中でAIがコントロールうまくプラントをコントロールできるようにPFNとENEOSでは物理知識を導入したことに興味深く感じました。データだけを振り返るのではなく、エンジニアのように自然法則に則ってアクションを取れるのであれば現場でも受け入れやすいのかもしれません。2件目の異常予兆を早期に検知するシステムについて、異常の早期発見だけでなくメンテナンスや部品交換の周期を単純な使用時間よりも最適化できる可能性があり、コスト削減や生産性向上に役立つと考えられます。3件目の腐食判定は、簡単に数値化できず、判断基準もあいまいな問題にAIを活用した例であり、現場の方が根気強くAIの再学習に取り組んでこそ高い精度が得られるものだと思います。この取り組みの延長線上にはドローンによる自動撮影や腐食が起きる箇所の分析と対策へのフィードバックがあるかと思います。3件ともいろいろな応用が考えられる事例であり今後の開発に期待します。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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