[スポンサーリンク]

ケムステニュース

米FDA立て続けに抗肥満薬承認:Qsymia承認取得

[スポンサーリンク]

Qmysia.gif

 米食品医薬品局(FDA)は17日、Vivus社の新たな肥満治療薬「 Qsymia 」を承認した。Qsymia は食欲抑制剤の Phentermine と抗てんかん薬 Topiramate の配合剤。臨床試験では減量効果が確認された一方で、副作用への懸念も指摘されている。Qsymia はこれまで Qnexa と呼ばれていたが、すでに販売されている別の薬と紛らわしいとの理由からFDAが名称変更を求めた。

先日、FDAが13年ぶりに抗肥満の新薬を承認したとお伝えしました (ニュース「Arena/エーザイ 抗肥満薬ロルカセリンがFDA承認取得」及びつぶやき「肝はメチル基!? ロルカセリン」 を参照)。その僅か1週間後に次の新薬 Qsymia の承認を発表し、立て続けの新薬承認となります。

Phentermineは食欲抑制作用があることが知られ、Topiramateは抗てんかん薬として 使用されるうちに副作用として食欲減少が報告されました。これらを組み合わせれば効果的な食欲抑制剤になるのでは?というアイデアで 開発されました。遅放性持続性放出製剤であり、体重抑制作用のシナジーを利用することで投与量を抑える事が可能となっています。Qsymia 投与で約半数が10%の減量、5%の減量には8割超の人が成功という高い臨床試験成績を示し、抗肥満薬の大本命と目されています。

一方、多くの副作用が懸念されており、多くの使用制限(妊婦緑内障や甲状腺機能亢進症、心臓病の既往歴がある人に処方しない)があり、また承認後の心臓血管系安全性に関する臨床試験については継続されます。2010年の諮問委員会では心血管リスクのために否決、2012年4月に詰問委員の支持を受けたが、販売ルート制限などの対策のため審査期間が3ヶ月延長とされ、今月やっとゴールにたどり着いたという感じです。

また、熱心なケムステ読者の方はお気づきだと思いますが Qsymia の薬効成分の1方 Phentermine は法規制物質なんですよね (つぶやき「化学エンターテイメント小説第2弾!『猫色ケミストリー』」を参照のこと)。こいつは歴とした第3種向精神薬であり、麻薬及び向精神薬取締法にて(一部例外を除き)製造、輸出入が禁止されています。既にネット上で「どこで買えるの?」と話題になってたりしますが、決して怪しげな個人輸入サイトから購入したりしないように。逮捕されるかもよ、マジで。 (過去に、主婦がネットで購入したやせ薬で厚労省が捜査というニュースがありました。)

抗肥満薬は、美容目的のダイエット的な肥満薬ではなく、あくまで病的に太った人を対象にしてます。「病的に太った人が多いアメリカの現状で、薬剤の副作用リスクと肥満が健康に及ぼすリスクを比較して、有利な場合に処方すべき薬である」とされています。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4072698482″ locale=”JP” title=”糖尿病は果たして不治の病だったのか―ここまで効くとは! 最新糖尿病治療薬 (主婦の友パワフルBOOKS)”]

 

外部リンク

 

関連記事

  1. 化学企業が相次いで学会や顧客から表彰される
  2. LG化学より発表されたプラスチックに関する研究成果
  3. 宝塚市立病院で職員が「シックハウス症候群」に…労基署が排気設備が…
  4. 世界的性能の質量分析器開発を開始
  5. 三菱化学、来年3月にナイロン原料の外販事業から撤退=事業環境悪化…
  6. 大阪近海のアサリから麻痺性貝毒が検出される
  7. 大幸薬品、「クレベリン」の航空輸送で注意喚起 搭載禁止物質や危険…
  8. 大正製薬、女性用の発毛剤「リアップレディ」を来月発売

注目情報

ピックアップ記事

  1. 複雑化合物合成にも適用可能なC-H酸化反応
  2. なぜ電子が非局在化すると安定化するの?【化学者だって数学するっつーの!: 井戸型ポテンシャルと曲率】
  3. 乳がんを化学的に予防 名大大幸医療センター
  4. サラ・E・リースマン Sarah E. Reisman
  5. ペプチドのらせんフォールディングを経る多孔性配位高分子の創製
  6. アメリカで Ph.D. を取る –エッセイを書くの巻– (後編)
  7. 炭素繊維は鉄とアルミに勝るか? 番外編 ~NEDOの成果について~
  8. 外国人研究者あるある
  9. NHPI触媒によるC-H酸化 C-H Oxidation with NHPI Catalyst
  10. 化学の成果で脚光を浴びた小・中・高校生たち

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年7月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

岩田浩明 Hiroaki IWATA

岩田浩明(いわたひろあき)は、日本のデータサイエンティスト・計算科学者である。鳥取大学医学部 教授。…

人羅勇気 Yuki HITORA

人羅 勇気(ひとら ゆうき, 1987年5月3日-)は、日本の化学者である。熊本大学大学院生命科学研…

榊原康文 Yasubumi SAKAKIBARA

榊原康文(Yasubumi Sakakibara, 1960年5月13日-)は、日本の生命情報科学者…

遺伝子の転写調節因子LmrRの疎水性ポケットを利用した有機触媒反応

こんにちは,熊葛です!研究の面白さの一つに,異なる分野の研究結果を利用することが挙げられるかと思いま…

新規チオ酢酸カリウム基を利用した高速エポキシ開環反応のはなし

Tshozoです。最近エポキシ系材料を使うことになり色々勉強しておりましたところ、これまで関連記…

第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り拓く次世代型材料機能」を開催します!

続けてのケムステVシンポの会告です! 本記事は、第52回ケムステVシンポジウムの開催告知です!…

2024年ノーベル化学賞ケムステ予想当選者発表!

大変長らくお待たせしました! 2024年ノーベル化学賞予想の結果発表です!2…

“試薬の安全な取り扱い”講習動画 のご紹介

日常の試験・研究活動でご使用いただいている試薬は、取り扱い方を誤ると重大な事故や被害を引き起こす原因…

ヤーン·テラー効果 Jahn–Teller effects

縮退した電子状態にある非線形の分子は通常不安定で、分子の対称性を落とすことで縮退を解いた構造が安定で…

鉄、助けてっ(Fe)!アルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化

鉄とキラルなエナミンの協働触媒を用いたアルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化が開発された。可視光照…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP