[スポンサーリンク]

ケムステしごと

長寿企業に学ぶたゆまぬ努力と挑戦

[スポンサーリンク]

 日本は世界に類をみない長寿企業大国と言われているが、その大きな区切りとなるのが創立100年。戦争や天災、経済情勢の変動など幾多の困難に遭いながらも1世紀の歴史を歩んできたのは、たゆまぬ努力と数々の挑戦を重ねてきた結果である。ファインケミカル分野でも創立100周年を迎える企業が相次いでいる。経済環境がますます厳しくなるなか、長寿企業の経営手法から学ぶべきことは数多くあるはずだ。
本州化学工業は今年、創立100周年を迎えた。第1次世界大戦勃発で、染料輸入が途絶えた繊維産業の苦境打開のため、1914年に和歌山市で日本で初めてベンゼン精留装置を建設、染料用アニリンの工業化に成功。以来、合成フェノールやビスフェノールA、ビタミンEの原料であるトリメチルフェノール製造を相次ぎ開始した。
88年に、ビスフェノールA事業を三井石油化学工業(現三井化学)に譲渡、これを機に業態が転換する。90年にはフォトレジスト材料の製造を開始して電子材料分野に進出し、91年には液晶ポリマーの原料となるビフェノールの製造を開始するなど、事業領域を広げていく。
2004年には、特殊ビスフェノールを手掛ける独ハイビス社が営業を開始した。ハイビス社では自動車部品に用いられる特殊ポリカーボネート樹脂の原料となる特殊ビスフェノールを製造している。ハイビス社も今年で創業10年を迎えたが、既存プラントと同規模の新規プラントを増設した。創業以来、確実に実績を拡大、グループの業績に大きく貢献している(引用:化学工業日報 2014年12月22日 画像出典:本州化学工業)。

 

化学工業の歴史は他と比較して比較的新しいため、数百年!という歴史をもつ化学会社は少ないように思えますが、100周年となるとかなりの数がみられます。そういう企業の歴史を学びながら、化学を学んでいくのも面白いですね。昨年100周年を迎えた化学企業は住友化学。製薬関係でいえば持田製薬です。最古の化学企業というと正確かどうかわからないですが、荒川化学工業(1876年創業)が挙げられます。アメリカですとユニオンカーバイド(1898年創業)。医薬品製造分野をいれると数百年前のものがあります。

日本は長寿企業が最も多い国であり、2014年現在で100周年以上の企業はなんと2万7335社(帝国データバンクより)。古い体質や一族経営で長けりゃいいってもんじゃないという話はありますが、長く続けていないとできないことや、続けるためにチャレンジしていることも多くありますので、参考にしたいところです。

 

長寿ウェブサイトへの道

ところで話はかわりますが、インターネットの世界はどうでしょう。日本でも利用が始まって30年ほど、商用化されてからまだ20数年なので、既存の感覚で言う100年=長寿というわけにはいきませんので10年ほど続けていれば「長寿ウェブサイト」になるのでしょうか。日本の化学の分野においては、例えば、ケムステは15年弱、有機化学美術館は16年、生物化学環境の部屋は18年と長寿ウェブサイトとして活躍しています。

それに対して、以前人気を誇っていたTotallySynthetic.com の中断が先日発表されました。2006年から続いていた有機化学とくに天然物の全合成に関するブログです。すでに2年ほど更新が殆どなかっただけにしかたがないかもしれませんが、これを楽しみにしていた化学者も多いのではないかと思います。もっと短いもので言えば、実際に実験をして報告された反応を検証する「Blog syn」というウェブサイト(関連記事:実験化学のピアレビューブログ: Blog Syn)も10個ほどの記事を残してほぼ停止状態。こういうウェブサイトをいままで何度となくみてきました。

なぜ続けることができないのか。様々な理由があると思います。ただ、継続している立場でいえることは、続けることでみえる「世界」は素晴らしいものです。最近はじめた秀逸な科学ブログやウェブサイトもそれを信じて続けていってほしいものと思います。まずは「長寿ウェブサイト」を目指してください。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4492533516″ locale=”JP” title=”創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか”][amazonjs asin=”4492502084″ locale=”JP” title=”日本の持続的成長企業 ―「優良+長寿」の企業研究”][amazonjs asin=”4047315141″ locale=”JP” title=”百年企業、生き残るヒント (角川SSC新書)”][amazonjs asin=”4883384691″ locale=”JP” title=”成功長寿企業への道”]

 

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 「第22回 理工系学生科学技術論文コンクール」の応募を開始
  2. トムソン・ロイター:2009年ノーベル賞の有力候補者を発表
  3. 理研、放射性同位体アスタチンの大量製造法を開発
  4. 万有製薬、つくば研究所を閉鎖
  5. “加熱しない”短時間窒化プロセスの開発 -チタン合金の多機能化を…
  6. 科学:太古の海底に眠る特効薬
  7. CASがSciFinder-nの新しい予測逆合成機能を発表
  8. 企業の研究を通して感じたこと

注目情報

ピックアップ記事

  1. 【第14回Vシンポ特別企画】講師紹介:宮島 大吾 先生
  2. 拡張Pummerer反応による簡便な直接ビアリール合成法
  3. 化学大手4社は増収 4-6月期連結決算
  4. 研究室での英語【Part1】
  5. アルキンメタセシスで誕生!HPB to γ-グラフィン!
  6. 三菱化学:子会社と持ち株会社設立 敵対的買収を防ぐ狙い
  7. ネバー転位 Neber Rearrangement
  8. 【書籍】「喜嶋先生の静かな世界」
  9. UCLAにおける死亡事故で指導教授が刑事告訴される
  10. 『Ph.D.』の起源をちょっと調べてみました② 化学(科学)編

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年12月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP