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Advanced Real‐Time Process Analytics for Multistep Synthesis in Continuous Flow

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In multistep continuous flow chemistry, studying complex reaction mixtures in real time is a significant challenge, but provides an opportunity to enhance reaction understanding and control. We report the integration of four complementary process analytical technology tools (NMR, UV/Vis, IR and UHPLC) in the multistep synthesis of an active pharmaceutical ingredient, mesalazine.   (引用: Angewandte Chemie 4月6日)

こちら、どこかのニュースサイトで紹介された論文ではありませんが、いろいろな分析機器をリアルタイム分析に使用したという点について興味深く思い、またAngewandte ChemieVery Important Paperにも選ばれているため紹介します。

まずこの研究の背景ですが、連続的なフロープロセスで化合物を合成することは、医薬品や汎用化学品の分野で広く行われていて合成にかかる時間の短縮、収量や安全性の向上に一役買っています。また、昨今のデジタル化の動きによってデータ取得・解析を多用したマルチステップの合成は重要度を増しています。プロセス分析技術についても自己最適化や反応速度分析、キラリティの分析、プロセスコントロールなどへの応用を目的としたリアルタイム反応分析が中心的な役割を持つようになっています。しかし現状は簡単なデータプロセスに留まり、反応の進行度や相対的な生成物の分布のみが得られている状況で、よりパワフルなデータプロセス技術を活用できれば、生成物や不純物の濃度まで調べることができ、複雑な反応生成物の場合における中間体のワークアップや分離のステップについてプロセスの向上に役立つと主張しています。

本論文の研究グループでは、インラインIRとNMR、UPLCを使って有機金属反応をそれぞれモニターした研究を最近、報告しました。そして今回、一つのコンピュータープログラムが分析機器やポンプ、センサー、温度計、フローメーターなどすべてと通信し、マルチステップの反応を管理・コントロールするプラットフォームの開発を行いました。

では、実験結果のパートに移りますが、本研究では 2‐chlorobenzoic acid (2ClBA)からMesalazine (5‐ASA)を合成する合成を行いました。目的物まで3つの反応ステップがあり最初のステップはNitrationで5‐nitro‐2‐chlorobenzoic acid (5N‐2ClBA) が得られますが、ニトロ基の位置異性体も生成します。続くHydrolysisでは、 5‐nitrosalicylic acid (5‐NSA)が生成しますが、前記の異性体にヒドロキシ基が置換された副生成物も観測されました。最後にニトロ基の還元でmesalazine (5‐ASA)を合成しますが、前記のアミノ化合物に加えてクロロ基が置換しなかった化合物も観測されました。このように、単純な反応ではあるものの分離なしでは副生成物も続くステップで反応してしまう反応でフロー合成を試行しました。

a: 合成ルートと検出方法 b:想定される副生成物(引用:原著論文

まず、定常状態の反応条件や解析方法の開発を目的として、個々のステップの実験を行いました。Nitrationのステップにおいて2ClBAに硝酸を作用させる工程では、硝酸溶液の粘度が高いため、2液がなるべく接触するような構造を持つSplit‐and‐recombine typeのマイクロミキサーが使用されました。このミキサーの使用下で温度や滞留時間の最適化により、なるべく少ない硝酸の過剰量で高い収率の5N‐2ClBAを得ることに成功しました。反応後にはクエンチが必要ですが、このステップでも溶液の量を増やさないようにマイクロリアクターを使用しつつ、水と酢酸イソプロピルの流量の最適化を行いました。次のHydrolysis反応は塩基下で行う必要があるため、抽出のプロセスが必要です。この実験では、二つのメンブレンのセパレーターを使い、クエンチした溶液を一つ目のセパレーターで生成物を含む酢酸イソプロピル相と酸性水溶液相を分離し、酢酸イソプロピル相に水と水酸化ナトリウム水溶液を加えて、生成物を含む塩基性水相と酢酸イソプロピル相を再度分離しました。

a: ニトロ化反応、クエンチ、抽出、分析における装置図 b:得られたNMRスペクトル(引用:原著論文

生成物の収率は、卓上型NMRで測定しました。卓上NMRは通常のNMRのほど分解能が高くなく、またインラインでの測定のため積算時間もとれないため、ピークを単純に積分して収率を計算できません。そこで、ピーク分離モデルを使用してソフトウウェア上で解析を行い、そのピークで検量線を作り濃度を計算できるようにしました。また水のピークシフト値で水酸化ナトリウムの濃度を計測できるようにしました。測定の結果、水酸化ナトリウムの濃度は常に理論値よりも低い値を示すことが分かり、分離できなかった酸の中和に消費されていることが分かりました。重要なことは、その理論値と実測値の差は約0.3 Mであるものの流量によって変化していることです。

水酸化ナトリウム濃度の理論値とNMRによって算出された実測値、二つの値の差(引用:原著論文

次にHydrolysis反応では、反応温度と時間、水酸化ナトリウム濃度の最適化を行い、210℃に加熱したステンレスのコイルを5分で通過することで高い変化率を得ることを発見しました。さらに、濃度を推定するためにUV/Vis吸収スペクトルを2秒ごとに測定しましたが、ノイズレベルが高いため、ニューラルネットワークを使って各波長の吸光度とNMRによって判明している原料の濃度から転嫁率や生成物の濃度を推定しました。様々な転嫁率を示した35000ものスペクトルで学習させた結果、5‐NSAの収率誤差で2.8mMととても低くなりました。

a: Hydrolysis反応における装置図 b: UV/Visスペクトル c: ニューラルネットワークのインプットとアウトプット(引用:原著論文

最後のニトロ基の還元では、パラジウムがメッキされた触媒コーティングミキサーを使用しました。原料を含む水溶液と水素がガスがステンレスの筒を通過すると、その中のミキサーによって還元される仕組みです。他の反応と同様に、温度や時間、水素ガスの圧力などを最適化し80 °C、12気圧という条件で高い変化率を示しました。リアルタイムでこの反応における定量を行うため、IRスペクトルを測定し各波数における吸光度をPLS回帰モデルで処理しました。その結果、主生成物5-ASAの収率誤差で 7.7 mMとなり、高い定量性が示されました。最後に系内のすべての化合物を定量するためにUHPLCを組み込み、7.5分ごとに定量ができるようにしました。

a: 還元反応の装置図 b: 測定されたIRスペクトル c: 測定されたUHPLCのチャート(引用:原著論文

個々のステップが最適化されたところで、すべてのステップを通して3.5時間の定常運転を試みました。

統合させた装置図(引用:原著論文

結果、スタートしてから54分後ごろから目的物の濃度は一定の濃度で安定され始め、プロセス終了まで安定した目的物の生成が続きました。重要なポイントとして各生成物の濃度が上昇し始め一定になるまでの傾きは、プロセス全体の流量の分散を示します。この系ではHydrolysis反応の前にバッファー容器があり、フローを分散させる不安要素でしたが容量を小さくしたことでその影響は最小限となり、各ステップで極端に傾きが小さくなることなく、狭い分布の結果になり、パラメーターの変更が即座に応答できるシステムになったと言えます。15:14にNMRのシムを失いましたが、NMRの流路を切り替えてシム用の溶液を流せるようになっていたため、6分以内に回復し、最終生成物の濃度や不純物に影響はありませんでした。

a: 初期の生成物の濃度変化 b: 実験のスタートから終了までの生成物の濃度変化(引用:原著論文

最後に、それぞれのプロセス分析技術と予測技術の相乗効果を実演するために、反応温度を変えて的確にシステムが検出できるかを調べました。初期では、Hydrolysis反応の温度を最適の条件よりも低くしたところ、IRでの測定でUHPLCより低い値が検出され、PLS回帰による予測の制限が浮き彫りになりました。14:45には、ニトロ化の反応温度を下げました。すると未反応の原料の濃度増加が全ての検出機器で確認され、加えて16:20の還元反応の温度の変更でもIRとUHPLCで未反応中間体の増加が確認されました。

a: 温度条件 b: NMR c: UV/Vis d: IR e: UHPLCによる生成物の濃度変化(引用:原著論文

結果、三つの合成ステップと三つの分離ステップを連続的に運用し Mesalazine を1.6 g h−1で合成することに成功しリアルタイムでステップごとに生成物を分析する方法を確立しました。UHPLCでの定量結果を元にNMRやUV/Vis、IRの分析にモデルを学習させたり、ニューラルネットワーク分析において、前段の分析結果を取り込んでモデルをより良くできたように複数の分析を組み込む相乗効果もこの研究で証明されました。研究室では、この研究を発展させ、次の展開として自己最適化やモデルによる予測コントロールなどの応用を研究しているそうです。

論文中には、最適化の過程や装置の構成が簡潔にまとめられていますが、Supplement informationには、反応条件を検討した際のたくさんの結果や細かい装置の写真などが載せられており、試行錯誤を重ねてこの成果が得られたことを認識させられます。リアルタイムで分析をする以上、測定装置を並列にしない限り、積算する時間は限られてしまいます。その欠点をデータ分析技術でカバーしたことは大変興味深いと思います。化学品の製造において、品質管理は重要で問題が起きたらなるべく早く原因を発見して対処する必要があります。プロセス中で、この論文で測定したような品質の原因に近い証拠が得られるようになれば、問題の回避、早期解決が可能になると思います。また、プラントのAIコントロール化なども検討されていますが、それには中間データの多様性が高いほど、モデルの能力が高くなる可能性があります。スケールは大きくありませんが、本研究ではDIY的に実験装置の構築が行われており、別の反応やスケールで応用するのに参考になるのではないでしょうか。この研究の続報に期待します。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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