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ResearchGateに対するACSとElsevierによる訴訟で和解が成立

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2023年9月15日、米国化学会(ACS)とElsevier社がResearchGateに対して起こした著作権侵害訴訟において、和解が成立したと発表されました。ACSとElsevier社は同社のジャーナルに掲載された論文がResearchGate上に違法で公開されているとして、ResearchGateに対して著作権侵害訴訟を起こしていました。ACSとElsevier社が加盟する出版社団体Coalition for Responsible Sharing及びResearchGateの発表によると、著作権法に則った方法でResearchGate上で論文を共有できるように技術的措置を講じることで、両者の同意に至ったと述べられています。

(引用:9月21日カレントアウェアネス・ポータル)

ResearchGateは2008年にサービスを開始した科学者・研究者向けのソーシャル・ネットワーク・サービスで、全世界で2500万人が利用している世界有数のSNSとなっています。もちろん日本の研究者も多く利用しており、研究者をGoolgleで検索するとResearchGateのページにたどり着くことがよくあります。このResearchGateでは、自分の経歴や発表した論文を紹介したり他の研究者と繋がりを作ることができます。さらにResearchGate上で論文を公開・共有することができるのですが、著作権侵害の疑いがある論文公開もあり、この機能を巡って出版社と争いが起きていました。

事の発端は2017年の9月に遡ります。学術商業出版社の国際的協会である国際STM出版社協会が著作権を侵害するコンテンツへの対応を求める書簡をResearchGateに送りました。書簡の中でSTM出版社協会は、著者と出版社の間で合意された権利と整合性がとれた運用する解決策として、論文の公開範囲を投稿ポリシーに基づいて自動的に正しく設定できるシステムの実装を検討することなどを提案しました。これを受けてResearchGateは、Springer Natureとはいかに知的財産権を保護しながら、オンラインでの雑誌論文共有を実現するかについて議論を重ねる共同声明を発表し、2018年4月には、Springer Nature社・ケンブリッジ大学出版局(CUP)・Thieme社と著者・出版者の権利を保護する形での論文共有に向けて連携することで合意したと発表していました。

その後もThiemeとは関係を強化している

一方で、ACSとElsevierとは連携とはならず、2018年には著作権侵害でResearchGateを訴えることになりました。2社は提訴した際の声明で、ResearchGateはサイト上の著作権侵害に対処するための実行可能な長期的な解決策を拒否し続け、さらにこの侵害を意図的に利用し、Web サイトへのトラフィックや登録ユーザー、コンテンツ、ベンチャーキャピタルからの収益と投資を増やしていると主張しています。

その後ResearchGateは、ACSとElsevierの要求を受け入れ2021年にサイトから約20万件の公開されていた論文ファイルを削除したことを発表しました。これについてResearchGateは、法を遵守することがコミュニティの利益になるとコメントし、コンテンツをアップロードする際には、ライセンス条項または制限事項に従うことを推奨するとコメントしています。さらに2022年には、ドイツ・ミュンヘン第1地方裁判所がResearchGateに対し、ElsevierとACSの論文を公開することを禁ずる判決を下しました。

ここまでがResearchGateとACS、Elsevierの経緯であり、そして今回、この2018年に著作権侵害訴訟において和解が成立し、両者は著作権法に則った方法でResearchGate上で論文を共有できるように技術的措置を講じることに一致しました。具体的には、ACSとElsevierから出版された論文のアップロード時に、ResearchGateプラットフォームは権利情報を自動的にチェックし、サイト上でコンテンツを共有する方法・範囲が判定されます。著者は、一方で著作権で保護されたACSおよびElsevierの論文をResearchGateプラットフォームに非公開で保存し、他のユーザーからの要求に応じて個別に共有することができます。このプラットフォームは、公開可能であろう論文も識別するとしています。

ACSとElsevierから見れば、公開範囲が自動的に正しく設定されるシステムがResearchGateに実装されるということで、当初の希望の提案が達成されるため、和解案を受け入れたと想像します。一方でResearchGateからすれば、和解を受け入れざるを得なかったと想像します。ドイツの裁判所からは、ElsevierとACSの論文を公開を禁止されており、また2017年には海賊版論文の公開サイトSci-HubによるElsevierの著作権侵害が認定され、Sci-Hubに対し1,500万ドルの損害賠償を命じる判決が下されており、和解を拒めば損害賠償の支払いを命じる判決が下される可能性も十分にあったと思います。ResearchGateでは研究論文の積極的な共有を促進しており、論文のアップロードと公開に制約がかけるのは避けたかったものの、この状況ではそれを受け入れるのが必要だったようです。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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