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日本人化学者インタビュー

第67回「1分子レベルの酵素活性を網羅的に解析し,疾患と関わる異常を見つける」小松徹 准教授

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第67回目の研究者インタビューです! 今回は第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」の講演者の一人、東京大学大学院薬学系研究科の小松 徹(こまつ とおる)准教授にお願いしました。

小松先生は酵素の活性を定量評価可能な蛍光プローブ分子の開発と、それを用いる網羅的活性評価「enzymomics」を専門分野としておられます。さらに様々な酵素活性を1分子レベルで評価することで、特定の疾患と関連する新たな診断法になります。実際にそのような診断事業を行うベンチャー企業・コウソミルも共同で設立されている、新進気鋭の研究者です。熱意溢れるインタビューをどうぞご覧ください!

Q. あなたが化学者になった理由は?

化学の面白さを本格的に知ったのは,大学で薬学部に進学してからになると思います.薬学部に進学する前は,情報科学,建築学などに興味があったのですが(今は当時の知識は微塵も残っていませんが..),薬を創る研究をしたいと思い薬学部に進学し,その中で化学がもつ力の大きさを知ったのが本格的に化学者の道に入った契機と言えるかもしれません.

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

上記で格好のいいことを言ってしまっていますが,実際は今の進路に進むのは友人や先生との出会いによる様々な縁があってのことでもあったので,もし別の人生があれば自分の進路はその人生で出会った誰かによって大きく変わっていると思います.根底には「面白い人に会いたい」という思いが強くあると思うので,何かに挑戦している人が沢山いるところで自分も何かに挑戦する人生を送れていたらいいなぁと思います.

Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

現在は,血液中などの生体サンプル中のタンパク質の機能を「1分子」のレベルで網羅的に解析し,疾患と関わるタンパク質機能異常を理解することを目指した研究を主に進めています.1分子レベルのタンパク質機能を解析する技術は生物物理学分野の研究者を中心に2000年前後から盛んに開発が進められてきていたのですが,様々なケミカルプローブ(酵素活性を検出する分子)を開発し,疾患と関わる血液中の酵素活性異常を1分子レベルで検出し,疾患の診断に有用な情報を得ることができる可能性を示すことができたことで,研究が大きく進展しました.特に早期での発見が重要視されている膵臓がんの血液中の酵素活性のプロファイリングを進め,いくつかの有用なバイオマーカー候補が見出されてきています.自分は大学の基礎研究を主戦場にしていますが,産学連携で膵臓がんの早期発見を可能にする診断プラットフォームの社会実装に向けた研究も進められています.

図:血液中のphosphatase活性の1分子検出の例.

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

西郷隆盛です.大学院生の頃に司馬遼太郎氏の小説を読み漁っていた時期があったのですが,武士道精神が凝縮されたとも言える幕末を過ごした志士たちの中でも圧倒的な人格的魅力があったというその人物像に生で触れてみたいということをずっと思っていました.後は,(悪い意味ではなく)西郷氏が今の日本を見た時にどう思い,何を述べるのか,聞いてみたいという思いもあります.

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

今でも隙を見つけては実験しています(笑).研究の勘を失いたくないというのが一番の理由ですが,研究のアウトラインを固める実験は失敗が前提なので肩肘張らずにできて全く新しい発見があったりして楽しくもあり.年末年始や夏季休暇の頃など「他の仕事」が減って集中しやすい時期に(家族の許しを得て)まとまった実験を組むのは年中行事で,元気なうちはなるべく続けられればと思っています.ただ,年々体力の低下を痛感しており,今は有機合成の多くの過程を自動化して効率化する方法論の構築に熱を上げて取り組んでおり,本格的に実験ができなくなる前に実装できればと思っています.

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

最近友人に紹介された「嫌われる勇気」という本を気に入って読んでいるので,今であればそれを持っていきたいと思います.アドラー心理学を分かりやすく解説した本で,人が行動する時,行動したくない時にどういった心理がはたらいているかといったことを自分があまり考えたことがなかった視点から論じており,色々な人の色々な行動をこの価値観から考え直したり,自分の行動基準を見直したりするために熟読して噛み砕いてみる時間が欲しいと思っています(ただ,その後の一生を一人で無人島で過ごすとすれば一番いらない本かもしれませんが).あと,この本を読むとなぜかすぐに眠くなるので,無人島でも安眠できるのでは,という実用性も考えました.

嫌われる勇気

嫌われる勇気

岸見 一郎, 古賀 史健
Release date: 2013/12/12
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Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

若い方では水野忠快先生(東大).生物学,情報科学が主戦場の先生ですが,全ての生命現象を数字(行列)で記述して理解したいという哲学をもっていて,化合物と生物の関わりを数学的に記述することにも取り組まれていて,水野先生の目から化学,ケミカルバイオロジーの世界がどのように見えてるのかすごく興味があります.シニアな方では Benjamin F. Cravatt 先生(Scripps 研究所).留学時代の恩師でもありますが,タンパク質の機能を網羅的に解析するケミカルバイオロジー研究のパイオニアかつトップランナーの一人であり,そういった意味ではタンパク質の「機能」を世界一多く見てきた人と言っても過言ではないかもしれません.この間久々に Scripps 研究所を訪ねた際,教授室にメモ書きされた論文が山のように積み上げられていたのを見て,タンパク質に関するものすごい知識量はそうやって支えられていたのかと今更ながら感銘を受けました.同世代は沢山いるのですが,一人に絞れないので敢えて挙げない方向でお願いさせていただければ.

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*本インタビューは2024年10月日に行われたものです

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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