[スポンサーリンク]

Long interview

【第一回】シード/リード化合物の創出に向けて 2/2

[スポンサーリンク]

PartIにつづいて、

研究体制について
成功と失敗
化学とコンピュータ
目標、アドバイス
についてインタビューしていきたいと思います。

  • 研究体制について
司会者:会社内ではどのようなグループ分けで研究されているのですか?例えば体の場所等でわかれているのですか?
田中さん:いえ、まあ難しいのですが、疾患と場所が混在したような感じです。例えば糖尿病とか、骨・関節に関する疾患とか、中枢系の薬を合成しているところとか、循環系というようなグループに分かれているんです。
司会者:それでは、学校を卒業してそのグループへの配属というのはどのように決まるのでしょうか?
田中さん:どのように決まっているかは、知りませんが、重要なのは誰の下に就くかということですね。しかし移動もかなりあります。
司会者:今までやってきたことと全く違う分野への配属というのもありえるわけですか?
田中さん:あります。同じ上司の下でも、違うテーマになるということはありますので。もちろん上司が変わり全く異なる分野を研究することもあります。例えば、私は11月にテーマが変わったんですよ。なぜかというと、今までやっていたテーマの上司が移動になり、今は新しい上司の下で新しいテーマをやることになったんです。一応同じ中枢系のテーマなのですけど内容は全く違いますね。
司会者:大学で言うと研究室が変わったような感じですね。そのテーマというのはやはり上から与えられてその中で研究を行うということですか。
田中さん:そうですね。まあ細かいところに関して自由にやれるかどうかは上司が誰かということにも関係してきますけど。私のところは、結果を出せばいいと言う感じなので。「ものをつくらなくてもいいから、効くのを作れ」ということで。それが出来れば苦労無いですけど(笑)。
司会者:(笑)そうですね。それでは、その研究に対する資金は余裕があるのでしょうか?
田中さん:そうですね。研究室単位で振り分けられるのですけど、必要なものは使い放題という感じです。まあ使い放題と言っても試薬とか溶媒なんてたかが知れてますし、NMR等の分析機器は特別な予算を組んでいるので。
司会者:試薬に関して、どこかに中間体を外注するという場合はどうなのですか?
田中さん:それは上司に話を通してOKが出れば出来るのですが、こちらも別の予算を使うので、実際グループに割り当てている予算は、日常使う消耗品だけです。化学系の予算は生物系に比べたら少ないのですけど、生物系よりコストがかからないので、十分ですね。
  • 成功と失敗
司会者:それでは話の論点を変えて、現在は中枢系のテーマをなされているということですけど、今まで研究をなされてきて、面白かった、やっててよかったと思ったことがあったら聞かせてください。
田中さん:いやーやっててよかったというのはすくないですね(笑)。会社に入ったころは「液晶」の研究をしていたんですよ。最近になって液晶がここまで市販されていると、そのときの知識が役に立って特をしているという感じはありますけれど。まあ、合成をやっている以上は、なかなか作りにくい化合物が出来たときが一番うれしいのではないでしょうか。
司会者:やはり効果の高い薬が出来た時とか。
田中さん:そういうのはなかなかないですよ。
司会者:そうですよね。やっぱり失敗の連続なんですか?
田中さん:全部が駄目というわけではなくて、良いときは全部良いのですけれど、ずば抜けて良いというのがでないですね。ですから結果的に失敗なわけです。でも、生物系の人と違って例えばここにこんな置換基を入れたらどうなるか、というのが考えることが出来る、つまり自分の意見を反映ができるから、そういう点では面白いですよね。
司会者:そうですね。それでは逆に「大きな失敗」「やってしまった」という体験はありますか?
田中さん:たくさんありますね。よくあるのは「もの」だと思って合成したら「違ったもの」だったとか。そういう時は結構ショックで立ち直れないときもありますね(笑)。その他にも実験上の失敗もたくさんあります。
  • 化学とコンピューター
司会者:それでは次にコンピュータ関連についてお聞きしたいと思います。今のお仕事にコンピュータは必要ですか?またその理由は?
田中さん:必要だと思います。例えば、オンラインジャーナルですね。雑誌で取ると届くまでに通常1ヶ月近くかかりますよね。それが、すぐ読めるのは大きいですよね。他にも、文献が会社の別の遠い研究所にあって自分の所にはないというときも、自分でオンラインでダウンロードして持ってくることができますし。
司会者:そうですね。
田中さん:特許情報にしても、少しのお金を払えばすぐ全文読めますよね。オンラインじゃなくても出来ることですけど、少なくても3、4日はかかりましたから。
司会者:そうですね。インターネット関連では他にもありますか?
田中さん:最近データベース関連もしっかりしているので使っています。例えばCASのデータベースとか。最近はパソコンがないとどうしようもないですね。あまり知識のない薬理の情報を知る際にもインターネットは便利ですし。
司会者:そうですか。わかりました。それでは、会社で使われているパソコンはWindowsですかそれともMackintoshですか?
田中さん:5年くらい前まではChemDrawc)等の関係があり、Macが多かったのですけど、現在はWindowsですね。社内の標準規格がWindowsになっていますから。今はMacを残しているのは、外部とデータのやり取りをする必要があるところや、昔マックで作成したファイルを蓄積しているところですね。長く合成をやっている方はMac の方がいいと言っていっている人もいますけれど。
司会者:そうですか。それでは先ほどの話で、合成とコンピュータを専門にやっている人の考え方の違いがあるといいましたが、どういうことなのでしょうか?
田中さん:合成を古くからやっている人は、昔のコンピュータを使
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 第37回 糖・タンパク質の化学から生物学まで―Ben Davis…
  2. 第173回―「新たな蛍光色素が実現する生細胞イメージングと治療法…
  3. 第34回 生物学と合成化学のハイブリッド高分子材料を開発する―J…
  4. 第13回 化学を楽しみ、創薬に挑み続ける ―Derek Lowe…
  5. 第115回―「分子機械と天然物の化学合成」Ross Kelly教…
  6. 第92回―「金属錯体を結合形成触媒へ応用する」Rory Wate…
  7. 第39回「発光ナノ粒子を用いる生物イメージング」Frank va…
  8. 第106回―「分子の反応動力学を研究する」Xueming Yan…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ハネシアン・ヒュラー反応 Hanessian-Hullar Reaction
  2. コランヌレン : Corannulene
  3. アレ?アレノン使えばノンラセミ化?!
  4. トビン・マークス Tobin J. Marks
  5. 『夏休み子ども化学実験ショー2019』8月3日(土)~4日(日)、科学技術館にて開催
  6. 多様なペプチド化合物群を簡便につくるー創薬研究の新技術ー
  7. Discorhabdin B, H, K, およびaleutianamineの不斉全合成
  8. ポンコツ博士の海外奮闘録⑦〜博士,鍵反応を仕込む〜
  9. ノーベル賞への近道?ー研究室におけるナレッジマネジメントー
  10. 有機合成化学協会誌2024年5月号:「分子設計・編集・合成科学のイノベーション」特集号

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年5月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

岩田浩明 Hiroaki IWATA

岩田浩明(いわたひろあき)は、日本のデータサイエンティスト・計算科学者である。鳥取大学医学部 教授。…

人羅勇気 Yuki HITORA

人羅 勇気(ひとら ゆうき, 1987年5月3日-)は、日本の化学者である。熊本大学大学院生命科学研…

榊原康文 Yasubumi SAKAKIBARA

榊原康文(Yasubumi Sakakibara, 1960年5月13日-)は、日本の生命情報科学者…

遺伝子の転写調節因子LmrRの疎水性ポケットを利用した有機触媒反応

こんにちは,熊葛です!研究の面白さの一つに,異なる分野の研究結果を利用することが挙げられるかと思いま…

新規チオ酢酸カリウム基を利用した高速エポキシ開環反応のはなし

Tshozoです。最近エポキシ系材料を使うことになり色々勉強しておりましたところ、これまで関連記…

第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り拓く次世代型材料機能」を開催します!

続けてのケムステVシンポの会告です! 本記事は、第52回ケムステVシンポジウムの開催告知です!…

2024年ノーベル化学賞ケムステ予想当選者発表!

大変長らくお待たせしました! 2024年ノーベル化学賞予想の結果発表です!2…

“試薬の安全な取り扱い”講習動画 のご紹介

日常の試験・研究活動でご使用いただいている試薬は、取り扱い方を誤ると重大な事故や被害を引き起こす原因…

ヤーン·テラー効果 Jahn–Teller effects

縮退した電子状態にある非線形の分子は通常不安定で、分子の対称性を落とすことで縮退を解いた構造が安定で…

鉄、助けてっ(Fe)!アルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化

鉄とキラルなエナミンの協働触媒を用いたアルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化が開発された。可視光照…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP