[スポンサーリンク]

身のまわりの分子

ペニシリン ぺにしりん penicillin

[スポンサーリンク]

penicillin_1.gif

ペニシリン(penicillin)は、もっとも有名かつ歴史のある抗生物質の一つです。

  • 歴史・用途

 イギリスの科学者A.Flemingによって青カビの一種Penicillium属から単離されました。 

 ペニシリンはβ-ラクタム構造と呼ばれる特徴的な構造を有し、これを含むL-Cys-D-Val構造が細菌細胞壁のD-Ala-D-Ala架橋構造に酷似しています(下図)。架橋酵素(トランスペプチダーゼ)の活性部位にD-Ala-D-Alaの代わりに結合し、酵素を失活させて細胞壁の架橋を妨げます。結果、細胞壁の脆弱化が起こり、菌は溶菌・死滅します。 

penicillin_2.gif

 人間に存在しない細胞壁合成プロセスを標的とするため、細菌に対する選択毒性は非常に高いとされています。  しかし、変異によってβ-ラクタマーゼという酵素を生産するようになったペニシリン耐性菌は、このβ-ラクタム構造を加水分解してしまい、ペニシリンの効力を無効化してしまいます。こういう菌には、別の抗生物質が必要になります。

 ペニシリンは副作用が極めて少なく非常に有用な薬物ですが、しばしばペニシリン・ショックと呼ばれる急性アレルギー反応を引き起こすことがあります。ペニシリン代謝物が生体内タンパクと結合してアレルゲンとなり、発症すると考えられています。

  • 関連書籍
抗菌薬ポケットガイド―これで安心感染症治療のコツ
南江堂
発売日:2005-03
発送時期:通常3~5週間以内に発送
ランキング:484410
おすすめ度:4.0
おすすめ度4 日本語で薄い抗菌薬の本
日本実業出版社
野口 実(著)
発売日:1999-05
ランキング:361713
おすすめ度:5.0
おすすめ度5 抗生物質&感染症早わかり
おすすめ度5 身近な存在である抗生物質に関する話題を提供

 

  • 関連リンク

抗生物質の危機 (1)(2) (有機化学美術館)

抗生物質β-ラクタム系抗生物質(Wikipedia日本)

ペニシリン(Wikipedia日本)

Penicillin (Wikipedia)

Alexander Fleming (Wikipedia)

抗生物質の話 (有機って面白いよね!!)

分子の重ね合わせ(6)/ペニシリンとD-アラニル-D-アラニン (生活環境化学の部屋)

 

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 塩化ラジウム223
  2. アスパラプチン Asparaptine
  3. ミノキシジル /Minoxidil
  4. アクリルアミド /acrylamide
  5. ヨードホルム (iodoform)
  6. 水 (water, dihydrogen monoxide)
  7. ポリアクリル酸ナトリウム Sodium polyacrylate…
  8. ジフェニルオクタテトラエン (1,8-diphenyl-1,3,…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第10回 ナノ構造/超分子を操る Jonathan Steed教授
  2. 文献検索サイトをもっと便利に:X-MOLをレビュー
  3. グルコース (glucose)
  4. トリプトファン選択的なタンパク質修飾反応の開発
  5. 大阪・池田 リチウム電池の実験中に爆発事故
  6. 水素社会~アンモニアボラン~
  7. (1-ジアゾ-2-オキソプロピル)ホスホン酸ジメチル:Dimethyl (1-Diazo-2-oxopropyl)phosphonate
  8. 林 民生 Tamio Hayashi
  9. その電子、私が引き受けよう
  10. リピトールの特許が切れました

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年9月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

実験条件検討・最適化特化サービス miHubのメジャーアップデートのご紹介 -実験点検討と試行錯誤プラットフォーム-

開催日:2023/12/13 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

カルボン酸β位のC–Hをベターに臭素化できる配位子さん!

カルボン酸のb位C(sp3)–H結合を直接臭素化できるイソキノリン配位子が開発された。イソキノリンに…

【12月開催】第十四回 マツモトファインケミカル技術セミナー   有機金属化合物 オルガチックスの性状、反応性とその用途

■セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物を“オルガチッ…

保護基の使用を最小限に抑えたペプチド伸長反応の開発

第584回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 薬学系研究科 有機合成化学教室(金井研究室)の…

【ナード研究所】新卒採用情報(2025年卒)

NARDでの業務は、「研究すること」。入社から、30代・40代・50代……

書類選考は3分で決まる!面接に進める人、進めない人

人事担当者は面接に進む人、進まない人をどう判断しているのか?転職活動中の方から、…

期待度⭘!サンドイッチ化合物の新顔「シクロセン」

π共役系配位子と金属が交互に配位しながら環を形成したサンドイッチ化合物の合成が達成された。嵩高い置換…

塩基が肝!シクロヘキセンのcis-1,3-カルボホウ素化反応

ニッケル触媒を用いたシクロヘキセンの位置および立体選択的なカルボホウ素化反応が開発された。用いる塩基…

中国へ行ってきました 西安・上海・北京編①

2015年(もう8年前ですね)、中国に講演旅行に行った際に記事を書きました(実は途中で断念し最後まで…

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP