[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

構造式を楽に描くコツ!? テクニック紹介

[スポンサーリンク]

みなさんは、構造式をどうやって描いていますか? ChemDraw でいちから描くのも楽しいですが、今回は忙しいみなさんのための手抜きで楽に構造式を完成させる方法をご紹介します。

 

1. ダウンロードできる MOL ファイルを活用せよ!

Web サイトの中には、構造式のデータを MOL ファイルという形式で提供してくれている場合があります。たとえば、無料のオンライン化学情報データベースとして有名なものでは

等が挙げられます。例えば ChemSpider で“maitotoxin”を検索してみます。ChemSpider は 2015 年 5 月 21 日にリニューアルし、より使いやすいインターフェースになっています。

ChemSpider-02

検索結果の画面の Save をクリックして MOL ファイルをダウンロードできます。試しに Marvin Sketch で開いてみました(Marvin Sketch は Windows/Mac/Linux などで動く無料の構造式エディタです。もちろん有料の ChemDraw や Windows 用 ChemSketch をお持ちであれば、同じように開くことができます)。

ChemSpider-03

よく見ると微妙に間違っている部分があるかもしれませんが、基本的な骨格はもう完成していますので、まずい部分だけ軽く直して利用できますね!

 

2. 論文から構造式を盗め!

ひとつめの方法は既にやっている方も多いかもしれません。しかし、新しく合成された化合物などはデータベースに登録されていないかもしれません。こうした場合に利用できるのが、Firefox や Chrome ブラウザで動くプラグイン「NCATSFind」です。筆者は Windows/Mac 両方の Firefox/Chrome で試すことができました。

  • Firefox 版
    すぐに使える状態でダウンロードできます。ここをクリックすると、直接 ncats-find.xpi というファイルがダウンロードできますので、通常のアドインと同じように「有効化」してください。
  • Chrome 版(よくわからなければ Firefox 版を試してください)
    「ビルド」という操作が必要なようです。ビルドといっても添付されているバッチファイルあるいはシェルスクリプトを実行するだけで、一瞬です。具体的にはここをクリックして zip ファイルをダウンロードし、解凍します。Windows の場合は chromeBuild.bat をダブルクリックするだけです。Mac などの場合は chromeBuild.sh をターミナルから実行してください。ビルドしたら「拡張機能」のデベロッパーモードで、「パッケージ化されていない拡張機能を読み込む」という機能を使ってインストールします。

ここでは、Chrome 版を Mac で使ったスクリーンショットを使いながら、便利さを実感していただこうと思います。Firefox 版を Mac で使った場合はこちらにスクリーンショットがあります。Windows でもインタフェースは全く同じです。

例えばこちらの論文の Abstract の図で、一番右の構造式を使いたいとします。Chrome では右上にベンゼン環のようなアイコンが出ているので、クリックして「Screen area to Structure」を選択します。

Chrome-NCATS01

使いかたのインストラクションが現れますので、その通りに操作しましょう。

Chrome-NCATS03

構造式部分をドラッグアンドドロップで選び、Process をクリック。すると構造式が OCR 機能さながらに認識されます! 上の「Save Molfile」をクリックすると、MOL ファイルをダウンロードできます。

Chrome-NCATS05

こちらも試しに Marvin Sketch で開いてみました。

Chrome-NCATS06

テキスト認識の OCR 機能を使ったことがある方はお分かりだと思いますが、若干の読み取りミスが起こります。しかし、骨格はあっていますので、ちょっと修正して構造式の完成です。

 

最後に

いかがでしょうか? Web リソースを上手に活用すれば、このように複雑な構造式でも手軽に描くことができます。NCATSFind には「Web サイトから CAS Number を自動的に認識する機能」もあり、こちらも便利です。一度ためしてみては?

 

関連記事

 

Avatar photo

アセトアミノフェン

投稿者の記事一覧

工学(修士);専門は応用化学・生物物理学。会社員です。

関連記事

  1. 第17回日本化学連合シンポジウム「防災と化学」
  2. 「脱芳香族的二重官能基修飾化反応の研究」ーイリノイ大学David…
  3. スルホンアミドからスルホンアミドを合成する
  4. ベンゼン環が壊れた?!ー小分子を活性化するー
  5. 2次元分子の芳香族性を壊して、ホウ素やケイ素を含む3次元分子を作…
  6. キムワイプLINEスタンプを使ってみよう!
  7. 有機合成化学協会誌2020年11月号:英文版特集号
  8. 半導体・センシング材料に応用可能なリン複素環化合物の誘導体化

注目情報

ピックアップ記事

  1. ChatGPTが作った記事を添削してみた
  2. プロパンチアールオキシド (propanethial S-oxide)
  3. ボーディペプチド合成 Bode Peptide Synthesis
  4. 電話番号のように文献を探すーRefPapers
  5. Purification of Laboratory Chemicals
  6. 学振申請書を磨き上げるポイント ~自己評価欄 編(後編)~
  7. 毛染めでのアレルギー大幅低減へ ~日華化学がヘアカラー用染料開発~
  8. サラシノール salacinol
  9. リンを光誘起!σ-ホールでクロス求電子剤C–PIIIカップリング反応
  10. Chem-Stationついに7周年!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年5月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

第32回光学活性化合物シンポジウム

第32回光学活性化合物シンポジウムのご案内光学活性化合物の合成および機能創出に関する研究で顕著な…

位置・立体選択的に糖を重水素化するフロー合成法を確立 ― Ru/C触媒カートリッジで150時間以上の連続運転を実証 ―

第 659回のスポットライトリサーチは、岐阜薬科大学大学院 アドバンストケミストリー…

【JAICI Science Dictionary Pro (JSD Pro)】CAS SciFinder®と一緒に活用したいサイエンス辞書サービス

ケムステ読者の皆様には、CAS が提供する科学情報検索ツール CAS SciFind…

有機合成化学協会誌2025年5月号:特集号 有機合成化学の力量を活かした構造有機化学のフロンティア

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年5月号がオンラインで公開されています!…

ジョセップ・コルネラ Josep Cornella

ジョセップ・コルネラ(Josep Cornella、1985年2月2日–)はスペイン出身の有機・無機…

電気化学と数理モデルを活用して、複雑な酵素反応の解析に成功

第658回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 農学研究科(生体機能化学研究室)修士2年の市川…

ティム ニューハウス Timothy R. Newhouse

ティモシー・ニューハウス(Timothy R. Newhouse、19xx年xx月x日–)はアメリカ…

熊谷 直哉 Naoya Kumagai

熊谷 直哉 (くまがいなおや、1978年1月11日–)は日本の有機化学者である。慶應義塾大学教授…

マシンラーニングを用いて光スイッチング分子をデザイン!

第657 回のスポットライトリサーチは、北海道大学 化学反応創成研究拠点 (IC…

分子分光学の基礎

こんにちは、Spectol21です!分子分光学研究室出身の筆者としては今回の本を見逃…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP