[スポンサーリンク]

一般的な話題

海外のインターンに参加してみよう

みなさま就活の進捗状況はいかがでしょうか? 今回の記事ではヨーロッパのインターンについて紹介したいと思います。最近、一般就職においてはインターンを重要視する会社が増えてきたようですし、これからは化学系の就活の一段階として利用されるような気もします。今の所、日本の研究関連のインターンは主に研究所や工場の見学を数日にわたって行うことが多いように思われますが、ヨーロッパのインターンは研究所で普通に働きます。今回の記事ではそんなこちらの状況を、紹介したいとおもいます。

アカデミックと企業どこが違う?

何と言っても、働く場所が会社なので、お金があります。機器がそろってます。大学の研究室と違い、周りはみんな何かしらのプロです。ちょっと聞けば、大抵その道のことは何でも知っていて教えてくれます。研究室にはラボスケールの合成に必要な反応機器はもちろん、プロセス研究で使われる5-20リットルのジャケット付の自動ラボリアクターやウォークインヒュームフードなどもあり、1 kg以上のスケールでの反応なども可能です。使う機器や方法論は研究内容にもよりますが、例えばアカデミックでは到底できない実際のパイロットプラント内でプロセス研究を行うエンジニアリングの研究などもできてしまいます。

ウオークインドラフトとジャケット付きラボリアクター(credit: peakdale molecular)

また、コストに対する意識がアカデミックとは異なります。大学では教育的な面を考慮に入れなけらばならないのに加え、特に日本の大学では労働力がタダということもあり、試薬を買うより自分で調整することが多いように私は感じています。一方で、先進国の企業では人件費がコストの大部分を占めるため、購入できるものはできるだけ買うという方針が徹底されています。

その他に、安全に対する意識、チームワークの重要性、勤務時間の管理など様々な面で違いが見られます。

インターンに参加する学生

ヨーロッパでは研究室ローテーションや修士論文研究を企業で行い、それらを大学の単位として認定するシステムが一般的に認められています。また、大学や職業訓練専門学校によっては、企業でのインターンが義務付けられている場合もあります。そのため、多くの修士課程や学部の学生が研究インターンに応募します。多くの場合、学生は大学での指導教官に企業を紹介してもらったり、自分で企業のHPや求職サイトからインターンの募集を見つけ応募します。一方で、大学の修士課程を終え博士課程までの間(ギャップイヤー)に働く学生や、ポスドクを終え正規雇用の試用期間として働く人もいます。

学生のメリット

では、なぜそんなにも多くの学生がインターンに応募するのでしょうか?答えは、やはり万国共通。就職のためです。ヨーロッパではインターンを経験していると、多様な経験を積んでいるとみなされるので、CV(履歴書)が良くなり就職に有利であると考える人が多くいます。実際に、研究遂行能力の向上は見込めるでしょうし、様々な労働環境に適応できる力を身につけることも可能だと思われます。また、同じ分野を掘り下げて研究することも勿論大事ですが、自分の専門外のスキルや知識を積むことも時には重要なので、貴重な経験となるはずです。将来、インターンの後以前研究していた分野に戻るにしても、真面目に取り組んでいれば何かしらインターンで得ることはあるので、その後の研究生活に役立つこともあるはずです。最後に、大学の研究室いては会えないような人、例えば、自分のキャリアパスのターゲットの一つとなるメンターを見つけ、自分の将来のキャリアをより明確にすることもできます。

応募と手続き

では、学生はどうやって応募しているのでしょうか? 基本的にインターンの募集は、製薬企業や化学系の企業のHPのJob Opportunityなどサイトに告知されます。研究内容は募集要項に書かれており、メドケム、プロセス、バイオ系など多岐にわたっており、募集と自分の研究したいことがマッチしたら直接応募します[1] 。その後、書類選考などを通過すればインターンとして働くことができます。正式に採用されると、まずは労働許可関連の手配をHRがしてくれるので、要求された書類を送付して手続きを待ちます。インターンが始まると、まずHRが会社の紹介をしてくれ、秘密保持契約などの3cmぐらいの分厚い書類を渡されるので、サインします[2]。次に、直属の上司を紹介してもらい実際のインターンが始まります。

労働環境

インターンの期間は募集条件にもよりますが、短い学生で5か月、長い学生だと1年半程度まで可能なようです。労働条件はスイスの場合、30万円程度の給料と年間の休暇日数25日、事故保険のカバーなど諸手当(Ph. Dの学生相当)があります。ヨーロッパの会社は本当に終業時間にだいたい皆帰るので(多少は前後しても問題ありませんが)残業は基本的にできません。という訳で、実験はアカデミックの大学や研究所にいる時よりも計画的に行わないと仕事が進みません。基本的に海外の化学系の企業の研究所では、Ph.Dを持っているラボヘッドの元に3人ほどのPh.Dを持っていないテクニシャンがいるチームで研究を行うのが一般的です。インターンの学生はテクニシャンと同列の扱いでラボヘッドに付く場合、もしくはテクニシャンの下に付く場合がありますが、基本的にはチームの方針に従った研究をPIであるラボヘッドとディスカッションしながら進めていきます。成果が出ればパテント若しくは学術誌に名前が載るので、自分のキャリアのプラスにもなります。

最後に

こんな感じでヨーロッパは研究の分野でもインターンが盛んです。確かに、海外はそもそも日本と異なり企業の採用が通年採用で、インターンなどの経験のために1年ぐらい大学を休学したり、ギャップイヤーをとることに抵抗がないのでインターンが盛んなのかもしれません。そのためヨーロッパのようなインターンを日本で行うには、企業秘密の面や、日本企業が忙しすぎて受け入れる余裕がなかったり、修士の研究を仕上げるのに学生が必死で企業が募集しても学生が集まらないなど、越えなければいけないハードルはいくつもあるのかもしれません。ですが、現在多くの化学系の企業が行っっている、たった数回の採用面接だけでは採用する学生の資質をしっかりと見極めるのには限界があります。ならば、安定的に仕事ができる本当に優秀な人材を発掘するという目的のもと、3ヶ月でも学生をインターンとして働かせてみた方がトータルベネフィットが大きいかもしれないのでは? と思った今日この頃です。

最後に、日本から海外のインターンに応募するのは大変だと思いますが、貴重な経験となると思いますので、関心のある方は是非応募してみてください。今日はこの辺で。

  • [1] 修士課程や専門学校の論文研究の場合は学校の教授が仲を取り持ってくれることが多いです。ヨーロッパでは、インターンを含め一般的にジョブハントの際にはアプライする会社で働いている人やその会社の幹部、その企業のコンサルをやっている教授などがreference(その人をよく知っていて、参考人として、CVの最後に載せる人のこと。通常3-4人程度。)に入っていたりすると、HRの対応(書類選考の通過率など)がまるで違うと言われています。そのため、その会社に関係する人とのコネをなんとか作って応募するという作戦は、意外に遠回りなようでいて確実であると言えるかもしれません。
  • [2] 会社で得られた研究成果は一部の例外を除き、口外できないようになっています。マスターの研究を企業の研究所で行った場合、Ph.Dの応募するときに必要となるマスターの研究の発表が制限されることがあります。

リンク

The following two tabs change content below.

Gakushi

スイスでPh.Dの学生をしています。ハンドルネームはGakushiですが、修士号を持っています。博士号をとって、Hakaseになる予定です(なりたいです)。

関連記事

  1. 学生に化学論文の書き方をどうやって教えるか?
  2. えれめんトランプをやってみた
  3. こんな装置見たことない!化学エンジニアリングの発明品
  4. なぜクロスカップリングは日本で発展したのか?
  5. 中学入試における化学を調べてみた 2013
  6. Kindle Paperwhiteで自炊教科書を読んでみた
  7. アメリカ化学留学 ”入学審査 編”!
  8. 【書籍】「ルールを変える思考法」から化学的ビジネス理論を学ぶ

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

注目情報

ピックアップ記事

  1. Chem-Station9周年へ
  2. ニホニウムグッズをAmazonでゲットだぜ!
  3. 反芳香族化合物を積層させ三次元的な芳香族性を発現
  4. 中皮腫治療薬を優先審査へ
  5. 檜山爲次郎 Tamejiro Hiyama
  6. 出発原料から学ぶ「Design and Strategy in Organic Synthesis」
  7. ミノキシジル /Minoxidil
  8. 可視光酸化還元触媒 Visible Light Photoredox Catalyst
  9. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」②
  10. 【速報】2013年イグノーベル化学賞!「涙のでないタマネギ開発」

注目記事

関連商品

注目情報

試薬検索:東京化成工業



最新記事

ストックホルム国際青年科学セミナー参加学生を募集開始 ノーベル賞のイベントに参加できます!

一週間スウェーデンに滞在し、ノーベル賞受賞者と直接交流するなどの貴重な機会が与えられるセミナーSto…

「電子の動きを観る」ーマックスプランク研究所・ミュンヘン大学・Krausz研より

「ケムステ海外研究記」の第13回目は、第6回目の志村さんのご紹介で、マックス・プランク量子光学研究所…

岩澤 伸治 Nobuharu Iwasawa

岩澤 伸治 (いわさわ のぶはる、19xx年x月x日-)は、日本の有機化学者である。東京工業大学 教…

NCL用ペプチド合成を簡便化する「MEGAリンカー法」

ワシントン大学・Champak Chatterjeeらは、独自開発した固相担持ユニット「MEGAリン…

有機合成化学協会誌2017年5月号 特集:キラリティ研究の最前線

有機合成化学に関わる方ならばおなじみの有機合成化学協会誌。有機合成化学協会の会員誌であり、様々な有機…

エッセイ「産業ポリマーと藝術ポリマーのあいだ」について

Tshozoです。先日Angewandte Chemie International Edition…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP