[スポンサーリンク]

chemglossary

フラグメント創薬 Fragment-Based Drug Discovery/Design (FBDD)

[スポンサーリンク]

フラグメント創薬(Fragment-Based Drug Discovery/Design, FBDD)は、2000年代の初頭に基礎が出来上がり、発達してきた低分子生物活性物質の開発手法である。

標的タンパク質と効率よく結合する分子を見つけることを最優先し、フラグメントと呼ばれる分子量300未満の小さな分子のスクリーニングから始まることが特徴。これらのフラグメントは一般に生理活性をほとんど持たず、通常のアッセイでは評価できない。そのため、NMRやX線結晶構造解析などの分析学的検出法を用いる。

利点と欠点

メリット
  • 比較的少数のフラグメントを用いて、空間的に小さなポケットを精密に探索することが可能
  • 薬理活性の弱いフラグメントを出発点にしても、自由度の高いメディシナルケミストリーによって活性の向上をスピーディに実現できる
デメリット
  • NMRやX線結晶構造解析など、複数の解析を組み合せなければいけない
  • 標的タンパク質の大量調製が必要である

現在、FBDDはハイスループットスクリーニングと相補的な生物活性物質の開発手法として、多くの製薬企業において運用されている。

参考文献

  1. “A decade of fragment-based drug design: strategic advances and lessons learned” Philip J. Hajduk and Jonathan Greer Nature Reviews 6(3), 211-219
  2. “Fragment-Based Drug Discovery : その概念と狙い” 田中大輔 YAKUGAKU ZASSHI 130(3) 315-323
  3. “Fragment-Based Drug DiscoveryのためのNMRスクリーニング” 半沢宏之,滝沢剛 YAKUGAKU ZASSHI 130(3) 325-333
  4. “The rise of fragment-based drug discovery” Christopher W. Murray and David C. Rees Nature Chemistry 1(3) 187-192
  5. “Allosteric non-bisphosphonate FPPS inhibitors identified by fragment-based discovery” Wolfgang Jahnke, Jean-Michel Rondeau, Simona Cotesta, Andreas Marzinzik, Xavier Pellé, Martin Geiser, André Strauss, Marjo Götte, Francis Bitsch, René Hemmig, Chrystèle Henry, Sylvie Lehmann, J Fraser Glickman, Thomas P Roddy, Steven J Stout & Jonathan R Green Nature Chemical Biology 6(9), 660–666.

関連書籍

[amazonjs asin=”0470058137″ locale=”JP” title=”Fragment-Based Drug Discovery: A Practical Approach”][amazonjs asin=”047025761X” locale=”JP” title=”Lead Generation Approaches in Drug Discovery”][amazonjs asin=”B0193AJEYK” locale=”JP” title=”Fragment-based Drug Discovery: Lessons and Outlook, Volume 67 (Methods and Principles in Medicinal Chemistry)”][amazonjs asin=”1493946145″ locale=”JP” title=”Fragment-Based Methods in Drug Discovery (Methods in Molecular Biology)”]

関連リンク

Avatar photo

らくとん

投稿者の記事一覧

とある化学メーカーで有機合成関係の研究をしている人。一日でも早くデキる企業ケミストになることを夢見ているが、なかなか芽が出ない残念ケミスト。化学も好きだけど生物も大好きな農芸化学出身。

関連記事

  1. GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)
  2. キレート効果 Chelate Effect
  3. レドックスフロー電池 Redox-Flow Battery, R…
  4. ラマン分光の基礎知識
  5. HKUST-1: ベンゼンが囲むケージ状構造体
  6. コールドスプレーイオン化質量分析法 Cold Spray Ion…
  7. 銀イオンクロマトグラフィー
  8. 光親和性標識 photoaffinity labeling (P…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 初めてTOEICを受験してみた~学部生の挑戦記録~
  2. 有機反応を俯瞰する ー付加脱離
  3. C70の中に水分子を閉じ込める
  4. フランシス・アーノルド Frances H. Arnold
  5. 渡邉 峻一郎 Shun Watanabe
  6. メルドラム酸:Meldrum’s Acid
  7. E.・ピーター・グリーンバーグ E. Peter Greenberg
  8. 二酸化炭素をメタノールに変換する有機分子触媒
  9. タンパク質の定量法―ローリー法 Protein Quantification – Lowry Method
  10. マダニを外しやすくするある物質について(諸説あり)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年5月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP