[スポンサーリンク]

一般的な話題

Reaxys Prize 2012ファイナリスト45名発表!

[スポンサーリンク]

 

エルゼビアが主催するReaxys Prize (正確にはReaxys Ph.D Prize)。今回で3回目となり、ケムステでも毎回大々的に宣伝させていただいているのでかなりの認知されつつあると思います。

そう、特に日本では修了見込みの博士課程の学生(主に有機化学、無機化学)がはじめてトライできる国際賞です。応募はCV(履歴書)と推薦書、そして自身が関連した仕事の論文1報だけで応募することができます。第一次選考を勝ち残った”強者”45名(ファイナリスト)には、毎回国際学会へ招待(参加費、一部交通費、宿泊費込)の特典あり!、その内最終選考で選ばれた3名には2000ドルのお小遣い、口頭発表付きともあって競争率が年々あがっています。

今年はフィラデルフィアで行われるACS meetingにご招待!羨ましい限りです。すでに半年ほど前に今年の分の締切は過ぎましたが、昨日最終選考に残った45名が発表されました!

なんと全世界から350通もの応募があったようで、ファイナリストに残るだけでもおよそ13%の狭き門。それを勝ち抜いた未来を担う化学者の卵を日本人(日本の大学在籍)を中心に簡単に紹介したいと思います!

 

 

全部で8名!日本人、日本の大学からファイナリストに選出!

finalist2012.png

昨年はたった1人でしたが、今年は8名も日本の研究室からファイナリストに選出されました(写真は勝手に掲載しています。問題があれば削除しますのでご連絡ください)。ひとまずおめでとうございます!!一人一人簡単に紹介したいと思います。

 

岩井智弘さんは京都大学辻研究室出身。現在は北海道大学の澤村研究室で助教に着任しました。パラジウムやイリジウムなどの遷移金属触媒を用いた変換反応が学生時代の研究です。こないだたまたま一緒に飲みましたがとっても感じのよい方です。

 

“Palladium-Catalyzed Intermolecular Addition of Formamides to Alkynes”

J. Am. Chem. Soc, 2010, 132.  2094–2098. DOI: 10.1021/ja910038p

 

ja-2009-10038p_0015.gif

 

Debashis Mandalさんは名古屋大学伊丹研究室出身。実は彼、筆者の初めての博士課程の学生です。来年からスクリプス研究所のK. C. Nicolaou研究室で博士研究員として働く予定です。酒でも牛でもなんでも飲み食いできるタフなインド人です。芳香環直接連結反応(C-H アリール化)を駆使したDragmacidin Dの全合成を行いました。

 

“Synthesis of Dragmacidin D via Direct C–H Couplings”

J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 19660–19663. DOI: 10.1021/ja209945x

ja-2011-09945x_0004.gif

 

田中隆行さんは京都大学大須賀研究室出身。拡張ポルフィリンの合成、研究で活躍した後、現在ボストン・カレッジのScott研で博士研究員として働いています。

“Aromatic-to-Antiaromatic Switching in Triply Linked Porphyrin Bis(rhodium(I)) Hexaphyrin Hybrids”

Chem. Asian J.  2012, 7,  889–893. DOI: 10.1002/asia.201101039

“Porphyrin–hexaphyrin hybrid tapes”

 Chem. Sci., 2011, 2, 1414-1418. DOI: 10.1039/C1SC00228G

ncontenttanaka2.gif

 

永縄 友規さんは京都大学丸岡研究室出身。キラルアルミニウムルイス酸を用いた不斉非対称化環拡大反応を開発しました。現在は九州大学でWPI研究員として働いています。[追記]明日から名古屋大学工学研究科西山研で助教に着任予定です。

 

“Desymmetrizing Asymmetric Ring Expansion of Cyclohexanones with α-Diazoacetates Catalyzed by Chiral Aluminum Lewis Acid”

J. Am. Chem. Soc., 2011, 133,  8834–8837 DOI: 10.1021/ja202070j

ja-2011-02070j_0001.gif

 

村上慧さんは京都大学大嶌研究室、大須賀研究室出身。銀アート錯体を鍵活性種とする有機ケイ素化合物の新規合成法の開発を行いました。文献はコバルト触媒を用いたアルキンのアリール亜鉛化反応。現在は日本学術振興会特別研究員として働いています。

 

“Cobalt-Catalyzed Arylzincation of Alkynes”

Org. Lett., 2009, 11, pp 2373–2375.  DOI: 10.1021/ol900883j

ol-2009-00883j_0007-1.gif

田中亮さんは東京大学野崎研究室出身。イリジウムーピンサー型錯体を用いた二酸化炭素の触媒的水素化反応の発見と機構研究などを行いました。現在はドイツで博士研究員として働いています。そしてなんと明日6/1から広島大学大学院工学研究科応用化学専攻の塩野研究室の助教に着任予定だそうです。

“Catalytic Hydrogenation of Carbon Dioxide Using Ir(III)−Pincer Complexes”

J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 14168–14169 DOI: 10.1021/ja903574e

ja-2009-03574e_0006.gif

Wei Zhangさんは東京大学相田研究室出身。ヘテロ接合グラファイトナノチューブと光エネルギー変換でScienceに論文を報告しています。

 

“Supramolecular Linear Heterojunction Composed of Graphite-Like Semiconducting Nanotubular Segments”

Science 2011, 334, 340. DOI: 10.1126/science.1210369

480326a-f1.2.jpg

最後にTae Ho Shinさん。残念ながら写真は入手できませんでした。(写真をいただきました。ありがとうございます!追記:2012年9月3日)九州大学石原研究室出身で機能性無機材料の開発を行いました。唯一今回日本の大学の無機材料分野から選ばれました。現在は博士研究員として働いているようです。

“Doped CeO2–LaFeO3 Composite Oxide as an Active Anode for Direct Hydrocarbon-Type Solid Oxide Fuel Cells”

J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 19399–19407 DOI: 10.1021/ja206278f

ja-2011-06278f_0015-2.gif

というわけで日本の研究室から選ばれた8人を紹介しましたが、Reaxys自体がやはり有機化学中心ということもあって有機化学、特に反応開発で博士を取られた方が多いですね。ただし全体をみれば今年は有機化学の割合は6割程度な気がします。無機金属錯体分野が例年よりも増えています。なにはともわれ、1人でも最終選考の3人に選ばれて欲しいと思います。ここまで来ると審査員によるので運ですが、もちろん世界にも多くの強者がいますよ。ちょっとだけ紹介したいと思います。

Reaxys Prizeファイナリストー世界の強者

まず目を引いたのが、米国ボストン・カレッジのHovyda研究室の2人。前回のReaxys Ph.D Prize 2011は同研究室でエナンチオ選択的オレフィンメタセシスを開発したSteven Malcolmson氏が最終選考で3人まで残りました。その際に「ところでHoveyda教授は最近Z選択的オレフィンメタセシスを同じくNatureに出しているので、第一著者は未来のReaxys Prize候補?」と記載しましたが、ほぼ同時に出した速報誌の方の第一著者I(Miao Yuさん)が今回ファイナリストに残っています。この他にも計10報ハイジャーナルに研究を報告しており、ファイナル3人の最有力候補であるといえます。

ishot-81.png

その他にも分野はめちゃくちゃに紹介しますが、Zakarian研でピンナトキシン類の全合成を含む論文を10報ほど報告しているCraig Stivalaさん、Trauner研でloline alkaloidsの合成でNature Chemistry(DOI:10.1038/nchem.1072)に報告したMesut Cakmakさん、プリンストン大学の若手Chirik研で鉄触媒を用いたアンチマルコフニコフ型のアルケンヒドロシリル化反応(DOI: 10.1126/science.1214451)の開発を行ったCrisita Atienzaさん、Toste研で遷移金属の不斉触媒作用を強化するキラルカウンターイオン法を報告したGregory Hamiltonさん、Movassaghi研で(+)-11,11′-Dideoxyverticillin Aの全合成を行ったJustin Kimさん、Ribbe研でバナジウムニトロゲナーゼによるCOを還元(DOI:10.1126/science.1191455)などなどあげたらキリがありません。ここからはほぼ審査員(Prof. A. G. M. Barrett, Prof. B. M. Trost, Prof. H. N. C. Wong)の趣味になってきますね。

今トップを走っている化学者の多くは学生時代に今でも語られる研究を実際に行った本物の”強者”が大半と思います。なぜか今回はハーバードやスタンフォード、スクリプス研究所等の超トップ大学の学生が申し込んでいないのか、みられないのが気になることころですが、有機化学、無機化学分野の博士として世界で認められたことは、今後の研究も大変期待できるところではないでしょうか。

前回前々回と異なり、最終選考結果は6月中旬に発表!今から楽しみですね。それでは長くなりましたが最後にもう一度、ファイナリストの皆様今回の選出おめでとうございます!!

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. mi3 企業研究者のためのMI入門③:避けて通れぬ大学数学!MIの道具と…
  2. 機械的刺激による結晶間相転移に基づく発光性メカノクロミズム
  3. 「理研シンポジウム 第三回冷却分子・精密分光シンポジウム」を聴講…
  4. 「もしかして転職した方がいい?」と思ったらまずやるべき3つのこと…
  5. 「不斉有機触媒の未踏課題に挑戦する」—マックス・プランク石炭化学…
  6. 紫外線に迅速応答するフォトクロミック分子
  7. 水中で光を当てると水素が湧き出るフィルム
  8. 有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ダイハツなど、福島第一原発廃炉に向けハニカム型水素安全触媒を開発 自動車用を応用
  2. Z選択的ホルナー-エモンズ試薬:Z-selective Horner-Emmons Reagents
  3. 光化学フロンティア:未来材料を生む有機光化学の基礎
  4. 第32回生体分子科学討論会 
  5. 化学でもフェルミ推定
  6. 相原静大教授に日本化学会賞 芳香族の安定性解明
  7. 三菱化学、酸化エチレン及びグリコールエーテルの価格を値上げ
  8. MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」
  9. ティム ニューハウス Timothy R. Newhouse
  10. エチレンをつかまえて

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年5月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

海外ポスドクのオファーをもらう【アメリカで Ph.D. を取る: 進路編】

ポスドクとして海外に留学する場合、希望する研究室の教授に直接連絡を取り、面接などを通して適性を判断さ…

MDで観るトライボロジー 〜原子が擦れるその場をシミュレーション〜

軽くて強いのに摩耗に弱いチタン合金は、航空機や人工関節に広く使われています。原子が擦れ合うその場を分…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP