[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

青いセレンディピティー

[スポンサーリンク]

化学を好きになった理由に、実験で色が変わった・光った・キレイだったというインパクトを挙げられる方は多いことと思います。

黒色や灰色の材料を扱っていたところに、セレンディピティーな青色が見いだされました(J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 17084, C&E News Nov. 16, 2009, Vol 87,p8)。

筆者らはYInO3にMnをドープし、強誘電かつ強磁性(multiferroic)な材料を探索していました。YInO3は白色・YMnO3は黒色なので、灰色から黒色と考え加熱炉から取り出したところ、鮮やかな青色粉末が得られました。

DFT計算により、Mn(III)への三方両錐配位とアピカル位酸素の短いMn-O結合によって青色になっていることが明らかになりました。彼らはこの結果は、安価・低毒性・耐酸性などに優れた青色顔料の開発に繋がると報告しています。

論文のイントロでは従来の青色顔料の毒性・安定性の問題を挙げています。個人的には、青色材料としてフタロシアニンが一番に思いつくのですが、青色顔料は用途に応じて幅広く、色ひとつとっても色合いで非常に多彩な表現が要求されるようです。

photo01.jpg
信越化学工業 Nature life ラニカイビーチの写真

金属酸化物の物性研究から、全く目的と違う新規顔料の設計指針が見出されたストーリーが面白い内容でした。

【追記 2017.5.10】

なんとこの論文の「青色」crayolaからクレヨンとして発売となるそうです。この青色どんな名前になるのでしょうか。現在この名前を募集中だそうです。

画像:http://www.designboom.com

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4781311733″ locale=”JP” title=”機能性顔料の開発と応用 (ファインケミカル)”][amazonjs asin=”4781305725″ locale=”JP” title=”機能性顔料とナノテクノロジー (ファインケミカルシリーズ)”][amazonjs asin=”4861041201″ locale=”JP” title=”《エレクトロニクス用》 最新 『機能性色素』 大全集”]

lcd-aniso

投稿者の記事一覧

企業にてディスプレイ関連材料の開発をしております。学生時代はヘテロ原子化学を専攻していました。私のできる範囲で皆様に興味を持っていただける 話題を提供できればと思います。

関連記事

  1. ジボリルメタンに一挙に二つの求電子剤をくっつける
  2. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり : ② 「ポ…
  3. 「化学と工業」読み放題になったの知ってますか?+特別キャンペーン…
  4. 不斉をあざ(Aza)やかに(Ni)制御!Aza-Heck環化/還…
  5. 直鎖アルカンの位置選択的かつ立体選択的なC–H結合官能基化
  6. 化学反応を起こせる?インタラクティブな元素周期表
  7. 鴻が見る風景 ~山本尚教授の巻頭言より~
  8. 祝ふぐ!新たなtetrodotoxinの全合成

注目情報

ピックアップ記事

  1. 含フッ素遷移金属エノラート種の合成と応用
  2. 第147回―「カリックスアレーンを用いる集合体の創製」Tony Coleman教授
  3. ダンハイザー環形成反応 Danheiser Annulation
  4. 科学的発見を加速する新研究ツール「SciFinder n」を発表
  5. ジョアンナ・アイゼンバーグ Joanna Aizenberg
  6. 免疫の生化学 (1) 2018年ノーベル医学賞解説
  7. 超塩基配位子が助けてくれる!銅触媒による四級炭素の構築
  8. 日本化学会 平成17年度各賞受賞者決まる
  9. ホウ素-ジカルボニル錯体
  10. 材料開発の未来を語る、マテリアルズ・インフォマティクスに特化したカンファレンスが9/26(火)開催!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年12月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP