[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

加熱✕情熱!マイクロ波合成装置「ミューリアクター」四国計測工業

純国産のマイクロ波合成装置!その能力はいかに?

 

マイクロ波合成装置が化学反応を加速させることは既に読者の皆さんならばご存知でしょう。丁度2年前、アントンパールのマイクロ波合成装置「Monowave300」を紹介しました(関連記事:アントンパール 「Monowave300」: マイクロ波有機合成の新武器)。そこでも述べましたが、マイクロ合成装置の代表的なものとして、バイオタージの「initiator」やCEMの「discover」などが知られています。しかし、よく考えてみたら、それぞれ代理店や日本法人はあるものの、アントンパールはオーストリア、バイオタージはスウェーデンそして、CEMはアメリカと全部海外製なんですね。

 

代表的なマイクロ波装置は全部海外製

代表的なマイクロ波装置は全部海外製

 

海外製品の好きな我々としては、願ったり叶ったりかもしれませんが、日本法人が撤退したらどうなるでしょうか。部品の受注は?対応は?理化学機器ではそういった事例をよくみてきました。そこで、質問。

「日本製のマイクロ波合成装置はないの?」

探しました。答えは、あるんです

そういうわけで、今回は純国産のマイクロ波合成装置である「ミューリアクター(μReactorMx)」(四国計測工業)を紹介させていただきたいと思います。はじめに、それをつくっている四国計測工業という耳慣れない企業について。

 

四国計測工業とは?

四国計測工業は名前のとおり四国、さぬきうどんのメッカ、香川県に本社があるメーカーです。四国計測を略して、「よんけい」というらしく、てっきり今話題の「下町ロケット」のような小さな会社をイメージしていましたが、四国電力のグループ会社であり、その関連の電力量計や電力会社システム、LED照明、産業関係製品などを扱っているようです。

logo

その産業関係製品の一事業として、マイクロ波関連の機械を制作しており、今回紹介するマイクロ波合成装置は研究向けの製品となります。

 

見た目は電子レンジ?

さて、実際の製品をみてみましょう。はい、これ(下図)。トップ画像にもあるので既におわかりかもしれないですが、他社のマイクロ波装置と形状が異なる気がしませんか?

ミューリアクター外装

ミューリアクターMx外装

では、なかをみてみましょう(下図)。

内装(イメージ)

内装(イメージ)

そう、上面✕側面✕背面からマイクロ波をあてて、中に試料をいれて、加熱!チンといったら取り出して、さあ召し上がれ!

「って、まるっきり電子レンジじゃん!」

と、ノリツッコミをしてしまうぐらい、形状は電子レンジそのものです。正確に言えば、サイズの大きい電子レンジですかね(正確にいっていない)。他社の製品が反応容器を固定してマイクロ波を集中してあてる形状であるのに対して、このミューリアクターは上述したように電子レンジと同じ形状で、満遍なくマイクロ波があたるような形状をしています。では他社のものとなにが違うのでしょうか。

 

電子レンジ風マイクロ波合成装置ミューリアクターMxの利点・欠点

1. 大きなサイズの容器でも対応可能

代表的なマイクロ波合成装置は、反応をかけれるサイズが、溶媒量でいえば0.2mLから20mLくらいまで。それに対して、このミューリアクターMxは汎用品のものでは内部寸法が幅✕高さ(550 mm✕400 mm)あるので(下図)、数百mLのフラスコをつかっても反応をかけることができます。これが最も大きな利点ですね。

内部の寸法

内部の寸法

 

2. 最大3000Wの出力まで可能。時間や出力ももちろんコントロール

電子レンジは業務用のものでも1000W。それに対して、このミューリアクターMxでは最大3000Wまであげることができます。この3000Wというのはミューリアクター全体にかかる出力なので、他社の小さな反応容器に直接かける場合と若干異なるので注意が必要ですが、”半端ない電子レンジ“であることはわかります。反応時間や出力はもちろん外側のコントロールパネルで詳細に制御可能です。

 

Prod_ap_img

コントロールパネル

 

3. 様々なカスタマイズが可能

光ファイバー温度計での内温制御や庫内の排気システム、メカニカル撹拌機などもオプションでカスタマイズができるそうです。また、反応加速だけでなく図のように、マイクロ波で加熱して、化合物を簡単に蒸留することもできます。これは大容量かつ簡単にカスタマイズできるからこそ可能となるものですね。

蒸留塔としてつかってみる

蒸留塔としてつかってみる

 

4. 価格が手頃、なんでもカスタマイズ可能

お問い合わせをするとわかると思いますが、他社のものに比べるとかなり安いです。大きな電子レンジと考えると高価な気がしますが、そもそも業務用の電子レンジでさえ個人ではなかなか手に入れることができないので、そこは比較しなくても良いと思います(比較してるのは私だけ?)。また、国産メーカーなのでなんでもいえば、「どんな難問にも必ず答えがある」といわんばかりに、カスタマイズして解決してくれます(実際、お問い合わせして確認しました)。お問い合わせや修理等も簡単であるのも利点かもしれません。

 

 5. 破裂しても比較的安心?

マイクロ波装置を使った人なら一度は体験する容器の破裂。圧力がかかりすぎたり、金属系の試薬を使っていると起こることが多いです。他社のものは、破裂すると、反応装置の部分が小さいのでお掃除が大変。精密機械なので(これが精密でないといっているわけではないですが)、壊れることも多々有ります。その度数万円の修理費用がかかります。これは個人的な見解で正確かどうかわかりませんが、この機械はおそらく丈夫っぽいですし、電子レンジと同じく中身を拭き取るだけで問題なさそうです。

 

と、大きな利点を紹介してきましたが、弱点としては、逆に小さな容器の反応の場合、反応容器を置く場所などによってマイクロ波のかかり方が変わる可能性があること。再現性のとりにくい反応の場合はあまり適していないかもしれません。ただ、反応最適化に使う場合も、例えば10数個反応容器をいれて、反応をかけてしまえば一度に反応が終わるため、時間の節約にもなるのではないでしょうか。

 

合成反応以外の用途もある

ミューリアクターを紹介している四国計測のウェブサイト「アツアツ245」は、マイクロ波のしくみから、合成反応以外の用途も紹介しています。例えば、ドライフルーツを製造してみたり、アロマオイルを抽出してみたり。合成化学者としてはあまり馴染みのない用途ですが、出力の高いマイクロ波装置ならではの使いみちもあるのではないでしょうか。

ドライフルーツ製造のイメージ

ドライフルーツ製造のイメージ

 

このような様々な用途に特化した、専用モデルもラインナップしているようです。

 

試してみてはいかが?

ここまでかきましたが、昔は、市販の電子レンジで加熱してたんですけどね。もちろん出力が弱くて期待したマイクロ波の効果は得られず、モレキュラーシーブスやシリカゲルの乾燥程度にしか使えませんでした。

というわけで、国産のマイクロ波合成装置の概要を紹介してみました。海外製品もスタイリッシュでよいですが、Made in Japanの復権を信じて、まずはお問い合わせやデモをしてみてはいかがでしょうか。さすがによくわからないのに書くわけにはいかず、既に四国計測の技術者にお会いしてお話を伺っていますので、「ケムステをみた」といえばスムーズに話が進むかもしれません(値引きはわかりませんので、個人的に交渉してくださいね)。

お問い合わせはこちら

 

*本記事に使用した画像は、四国計測工業に引用の許可を得まして、使わせていただいています。ご協力にこの場を借りて御礼申し上げます。

 

関連書籍

 

外部リンク

The following two tabs change content below.
webmaster
Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 細胞の中を旅する小分子|第一回
  2. 水中マクロラクタム化を加速する水溶性キャビタンド
  3. 未来社会創造事業
  4. ボリルアジドを用いる直接的アミノ化
  5. ボリレン
  6. ノーベル週間にスウェーデンへ!若手セミナー「SIYSS」に行こう…
  7. コンプラナジンAの全合成
  8. 化学オリンピックを通して考える日本の理科教育

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 鉄触媒空気酸化を伴う触媒的光延反応
  2. GRE Chemistry 受験報告 –試験対策編–
  3. 円偏光発光を切り替える色素ー暗号通信への応用に期待ー
  4. 不斉触媒研究論文引用回数、東大柴崎教授が世界1位
  5. 福山インドール合成 Fukuyama Indole Synthesis
  6. スイス連邦工科大ジーベーガー教授2007年ケーバー賞を受賞
  7. 信越化学、排水・排ガスからの塩水回収技術を開発
  8. 「電子の動きを観る」ーマックスプランク研究所・ミュンヘン大学・Krausz研より
  9. NICT、非揮発性分子を高真空中に分子ビームとして取り出す手法を開発
  10. 2009年人気記事ランキング

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

モリブデンのチカラでニトロ化合物から二級アミンをつくる

川上原料のニトロアレーンとアリールボロン酸を用いた二級アミン合成法が報告された。空気下で安定なモリブ…

化学的に覚醒剤を隠す薬物を摘発

化学変化を加えると覚醒剤に加工できる指定薬物を密輸しようとしたなどとして、東京税関成田支署と成田空港…

ニコラス-ターナー Nicholas Turner

ニコラス ターナー (Nicholas Turner, 1960年6月2日イギリス、ケント州Orpi…

博士課程に進学したあなたへ

どういった心構えで研究生活を送るべきかについて、昨年ですが面白い記事がNatureに出ていたので、紹…

【書籍】フロンティア軌道論で理解する有機化学

「軌道の見方がわかる!有機反応を一貫して軌道論に基づいて解説。新しい有機化学を切り拓く読者へ…

少量の塩基だけでアルコールとアルキンをつなぐ

カリウムtert-ブトキシドを触媒とするα-アルキルケトン合成法が報告された。遷移金属を用いず、高い…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP