[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ここまで来たか、科学技術

はじめまして。6月より新しくケムステスタッフの仲間入りをさせていただきました、慶應義塾大学理工学部3年のrunaです。バイオ系について学んでおります。

夏にインターンシップをしようと考えて、「化学 スタッフ募集」でGoogle検索。それが、Chem Stationとの出会いでした。化学に関するさまざまな情報を載せていて、夢中になってしまいました。特に、「化学者のつぶやき」はどのコラムも面白く、まだ研究室にも入っていないながら図々しくも「私も記事を書きたい」と思い、スタッフに応募し、晴れてケムステスタッフになりました。今後ともよろしくお願いいたします。

遺伝子ドライブの脅威

皆さんは遺伝子ドライブ[1]という言葉を聴いたことがありますでしょうか。遺伝子ドライブとは、最近国際研究チームによって発表された、新たな遺伝子操作技術の一つです。CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)と呼ばれる革新的な技術によって、変異をゲノム中の特定要素に的を絞って挿入することが可能になりました。この特異的な遺伝子改変の情報を個体群に運ぶ(ドライブする)技術のことを遺伝子ドライブといいます。

なぜこの遺伝子ドライブが注目されているのか。それは、近年問題になっている外来種の絶滅を誘発させ、殺虫剤などのダメージをほかの生物に与えずに、もとの生態系を取り戻すことができるからです。具体的には、外来種の性別を決定する遺伝子に変異を挿入し、子孫がオスになる確率を高くします。すると、子供を生めるメスの数が減って、最終的に絶滅に追いやられます。なにも性別を決定する遺伝子ではなくとも、繁殖に必要な遺伝子を不能にすることができれば、その外来種はいずれ絶滅するでしょう。ただし、この技術は性交を通じて繁殖する種のみ応用ができ、さらに繁殖のサイクルが短いことが必須条件として挙げられます。

 

DNA Strands

 

この遺伝子ドライブの技術はマラリアを媒介する蚊に対して実用化が検討されているところです。

たしかに、マラリアによる被害は甚大で、この技術によってマラリアに苦しむ人々がいなくなればよいことのように思えます。しかし、この域まで人間が達してもよいものでしょうか。ついに、私たちはほかの生物種の遺伝子の存在を自在に操られる域まで来てしまいました。今はまだ、対象となる生物種が限られていますが、近年の科学技術の発達から考えると、この制限がなくなる日も遠くなさそうです。

 

学部3年生が感じた恐怖

この遺伝子ドライブの技術に限らず、科学技術に関して「ここまで来たか」と感じるニュースは少なくありません。たしかに人類の生活を豊かにするものばかりですが、許されない領域にまで来ているのではないか、という恐怖も覚えます。私たち人間は神ではありません。科学技術の追求はどこまで許されるのか。これから理系分野で生きていく人間として考えなければならないことだ、と心から感じました。

つたない文章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

参考文献

  1. NATIONAL GEOGRAPHIC JAPAN. “遺伝子工学で外来種を駆除” ,Katie Langin.2014年7月22日
  2. Creating Human Genomes and Synthetic People; Destroying Entire Species with Gene Drives | Transgenic News

 

 

The following two tabs change content below.

runa

学部3年生です。生命科学を基本に学んでいます。よろしくお願いします。

最新記事 by runa (全て見る)

関連記事

  1. 化学クラスタ発・地震被害報告まとめ
  2. (-)-Calycanthine, (+)-Chimonanth…
  3. 化学研究ライフハック:ソーシャルブックマークを活用しよう!
  4. アノマー効果を説明できますか?
  5. こんな装置見たことない!化学エンジニアリングの発明品
  6. Google翻訳の精度が飛躍的に向上!~その活用法を考える~
  7. e.e., or not e.e.:
  8. 化学反応を起こせる?インタラクティブな元素周期表

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 夏の必需品ー虫除けスプレーあれこれ
  2. ジェイコブセン・香月エポキシ化反応 Jacobsen-Katsuki Epoxidation
  3. ソモライ教授2008年プリーストリー賞受賞
  4. 網井トリフルオロメチル化 Amii Trifluoromethylation
  5. 理化学研究所が新元素発見 名前は「リケニウム」?
  6. 2009年1月人気化学書籍ランキング
  7. 第四回 分子エレクトロニクスへの展開 – AP de Silva教授
  8. バイオディーゼル燃料による大気汚染「改善」への影響は…?
  9. グレッグ・バーダイン Gregory L. Verdine
  10. ビッグデータが一変させる化学研究の未来像

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

三種類の分子が自発的に整列した構造をもつ超分子共重合ポリマーの開発

第123回のスポットライトリサーチは、テキサス大学オースティン校博士研究員(Jonathan L. …

超分子化学と機能性材料に関する国際シンポジウム2018

「超分子化学と機能性材料に関する国際シンポジウム2018」CEMS International Sy…

アメリカで Ph. D. を取る –研究室に訪問するの巻–

この連載は、米国の大学院で Ph.D. を取得することを目指す学生が日記感覚で近況を記録するためのも…

光触媒ラジカルカスケードが実現する網羅的天然物合成

四川大学のYong Qinらは、可視光レドックス触媒によって促進される窒素ラジカルカスケード反応によ…

有機反応を俯瞰する ー縮合反応

今回は、高校化学でも登場する有機反応であるエステル合成反応を中心に、その反応が起こるメカニズムを解説…

ご長寿化学者の記録を調べてみた

先日、G. Stork教授の論文に関するポストがありました。御年95歳という研究者でありながら、学術…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP