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一般的な話題

ウコンの成分「クルクミン」自体に効果はない?

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香辛料抽出物クルクミンは広範な評価試験でニセの反応を示す分子であると、注意を呼びかける論文が発表された。

タイトルおよび説明はシュプリンガー・ネイチャーの出版している日本語の科学まとめ雑誌である「Natureダイジェスト」4月号から。最新サイエンスを日本語で読める本雑誌から個人的に興味を持った記事をピックアップして紹介しています。過去の記事は「Nature ダイジェストまとめ」を御覧ください。

クルクミンの効果に化学者が警鐘

クルクミン(上図の化合物)は飲み過ぎの人にはとっても有名なウコン(ターメリック)の成分の1つ。抗酸化・肝機能改善・ダイエット・美肌・脱毛症・がん・アルツハイマー治療などなど様々な”効能”が謳われており、多くの研究がなされています。その数といったら、アルテミシニン(マラリア治療原薬・2015年ノーベル医学生理学賞)の数倍。数千の論文が出版され、120以上の臨床試験も行われており、これだけみたら現在、最注目すべき化合物と言えます(下図)。

近年加速してクルクミンに関する研究が行われている(出典:J. Med. Chem. 201760, 1620.)

しかし、なんと実はクルクミンに明確な治療効果があるという証拠はないというのが本記事の内容。2017年に米国ミネソタ大Waltersらが発表した包括的なクルクミン関連の批評論文に基づいて述べられています[1]。

なぜ、クルクミン効果に警鐘がならされているのか?簡単にまとめると、

  1. タンパク質と結合の指標として蛍光を使う際に、そもそも蛍光を発するため「ヒット」してしまう
  2. 不安定であり、異なる特性をもつ別の化合物に変化する
  3. 不純物を含んでいるために独自の生物活性を示す

など、たくさん理由はあります。化学者ならば構造をみれば蛍光を発し、安定でもなさそうなのもなんとなくわかることでしょう。合成した化合物の生物活性試験を行っている化学者ならばときどき体験できるお話です苦笑。

さらに問題は、クルクミンといってもいくつかの類縁体があり、生物活性が報告されている「クルクミン」はどの類縁体なのかわからないものも多く、誤解が誤解を招いているということです。莫大な努力と資金がかけられているクルクミン研究。元々ウコンは漢方なのでよいところもあるとは思いますが(信じたいところですが)、残念ながら、完全にカオスで、なにが正しいのかわからなくなってしまっているのが現状です。

関連論文

  1. Nelson, K. M.; Dahlin, J. L.; Bisson, J.; Graham, J.; Pauli, G. F.; Walters, M. A. J. Med. Chem. 201760, 1620. DOI: 10.1021/acs.jmedchem.6b00975

火星の石を持ち帰れ!

火星の生命を探す最良の方法は、火星の岩石を地球に持ち帰ってじっくり分析することだが、試料を地球や探査機由来の物質で汚染せずに採取し、変性させずに持ち帰るのは至難の業である。NASAは今、その究極のミッション「マーズ2020」の詳細を詰めているところだ。

今月号の特集記事から。人類初、火星の一部を持ち帰りましょう!プロジェクト「マーズ2020」のお話です。早ければ、2020年にロケットが打ち上げられ、2021年に採取できるということ。採取するのはローバーといわれる掘削システム(下図)。意外と早くみれるのかも!と思いきや、それらを回収するために別の探索システムがいって、回収して、戻ってこなければならないので、実際にサンプルをみれるのは数年〜数十年になるとのこと。うーん。この世にいないかも。

それだけではなく、サンプル採取に関する最重要問題は試料の汚染対策。記事ではその汚染の原因や対策、使われる試験管、加えて、探索機や着陸技術、サンプルリーターンの方法に関してビジュアライズされた画像を駆使して紹介しています。

マーズ2020 ローバーの掘削システム(出典:Natureダイジェスト)

ちなみに着陸・探索・サンプル採取までを含む「マーズ2020」計画のコストは単体でおよそ2600億円。日本の1年間の全体の科学研究費(科研費)を超えていますね。回収やその他を含めたらさらに莫大な費用がかかりそうなのは目に見えています。夢とロマンにはお金がかかる!考えさせられますが、とっても面白い記事でした。

その他の記事

4月号は、「海草は除菌も担う海の万能選手」と「 恐怖記憶を消去するニューロフィードバック技術を開発」が無料公開記事です。

前者は、海から多様な生態系サービスを提供する海藻の集まり「海草藻場」が、海水中の病原性細菌を除去する能力があることが明らかになったという話。

後者は、トラウマ(心的外傷)を脳から消し去る技術の開発のお話です[2]。新創刊のNature Human Behaviour掲載された日本人著者(NICT,小泉 愛、天野 薫、川人 光男)の紹介記事です。論文自体も無料で閲覧でき、興味深い対象分野であることから、多くの閲覧数や高いArticle metrics値を叩き出しています(4月10日現在 Views: 20,280 Altmetric: 750)。

責任著者の一人の川人 NICT 脳情報通信融合研究センター(CiNet)副研究センター長(画像出典:CiNet – 脳情報通信融合研究センター

関連論文

2. Koizumi, A.; Amano, K.; Cortese, A.; Shibata, K.; Yoshida, W.; Seymour, B.; Kawato, M.; Lau, H. Nat. Hum. Behav. 2016, 1, 0006. DOI: 10.1038/s41562-016-0006

過去記事はまとめを御覧ください

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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