[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

有機合成化学の豆知識botを作ってみた

[スポンサーリンク]

皆さんこんにちは。めっきり実験から退き、教育係+マネジメント係になってしまったcosineです。

さてこのたび、ウェブに転がっている実験系豆知識を定期配信するTwitter botを作りました。

その名も

「合成化学TIPS bot」(@OrgSynTIPS_bot)!

はい、なーんのひねりもない名前ですが・・・ご愛敬ということで。

これって何なの?

あちこちのウェブに転がっている有機合成TIPSを、3時間に一度の頻度でURL付きでつぶやくbotです。これをフォローしておけば、知っ得実験テクは一通りOK!!的なものを目指しています。

具体的には下記のようなトピックが100パタンほど登録されています(2017年12月現在)。随時追加予定です。

どうやって使うの?

Twitterがベースですので、単にフォローするだけでOKです。定期で繰り返しつぶやかれるので、以前見逃したテクニックでもいつかは目に触れる仕組みになっています。

ただTwitterだとあまりにライトに流れてしまうので、筆者のグループではSlack内にbotがつぶやき続ける連携チャネルを一つ作り、有機合成技術を日々要するメンバーにフォローさせています。スキマ時間に情報取得して貰うことを意図しています。

なぜ作ったの?

情報を専門家視点でキュレーションした上で、それを自動的に撒く仕組みをつくっておくと、「豆知識についての情報格差縮小が期待できる」と考えたためです。

豆知識伝達の難しさは、相手が必要とするタイミングで伝えない限り、全く吸収してくれない点にあります。たとえばトリフェニルホスフィンを除くのに苦労した経験がない人に、良い除き方を教えてもすぐに忘れてしまいます。それゆえきめ細かくメンバーの様子をモニターし、必要時にさりげなく手を差し伸べるのがデキる先輩・教員だよ!・・・とする意見も、甚だごもっともかと思えます。

ただ筆者は面倒くさがり屋なので、

「毎回ほぼ同じ知識をメンバーに伝えてるんだから、自動性のある定期伝達ツールをフォローさせ、繰り返し目に触れさせておけばそれで事足りるんじゃない?」

と考えたわけです。こういう豆知識はメンバー全員で知っておく必要がないものですから、この程度のゆるーい把握で繰り返し伝えるやり方が効果的に思えました。

多くのラボではその辺りを、メンバー間の口伝に頼っているのが実情だと思います。ただ、メンバーの入れ替わりが多い場合、シニアメンバーが抜けてしまうとノウハウ共有経路が途絶えがちです。加えて長年の伝言ゲームによる不正確化やノイズの混入、伝達漏れも出てきがちです。

また、有機合成を専門としないラボ、地方大学、高専などでは、実験に関して相談できる上級生がそもそも周りにいない、身近な豆知識発信役がそもそも存在しないという話も耳にします。まとめ記事などの形で世に転がっていたとしても、情報の存在や探索法を思いつけないような人には、活用されようがありません。異分野の英語情報ともなれば、経験豊かな人材であっても情報取得がとたんに難しくなるのはご存じの通りです。

何だかんだでうまいやり方を知らず歯がゆい思いをしている人は、日本全国のラボに数多く居るんじゃないでしょうか。botの形でオープンにしておけば、ラボ外にいる方々にも便利に使ってもらえるんじゃないかと思っています。

皆さんも是非作ってみて下さい!

本botの作成に当たっては、ChemDraw botを参考にさせて頂きました。このアプリはまとめサイトどころかマニュアルがあるのでそれ見ろよ、と言う意見もおありでしょうか、スマホと同じで実のところマニュアルなんて誰も丁寧に見ないもんです。だからこそ「専門家視点で要点だけかいつまんだbot」のニーズがあると思えるのです。

またこの方式は、分野を問わず通用する情報共有法だと思えます。分野の学習をはじめたばかりの人が得づらい情報、すなわちネットで検索しにくく、どの教科書に載っているかもイマイチ分かりづらい暗黙知をbotの形で一元化・明文化させておくと、利便性が高まるはずです。

ここまで読んでピンと来られた方は、本事例を参考モデルに是非とも所属分野の豆知識botを作成してみてはいかがでしょう?筆者としても有機合成以外の豆知識botがあればとてもうれしいですし・・・(特に有機金属とかケミカルバイオロジーとか超分子とか)。

Twitterのbotは無料作成サービスを使えば誰でも簡単に作れます。今回はtwittbotを使って作りましたが、50パタン程度なら数時間で揃えられました。一度作ってしまえば放置できるため、管理コストが少なくて済むのもよい点です。作成したら宣伝しますので、是非@chemstationまでお知らせ下さい!

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 光誘起電子移動に基づく直接的脱カルボキシル化反応
  2. 化学者のためのエレクトロニクス入門① ~電子回路の歴史編~
  3. エステルからエーテルへの水素化脱酸素反応を促進する高活性固体触媒…
  4. 研究テーマ変更奮闘記 – PhD留学(後編)
  5. 【12月開催】第4回 マツモトファインケミカル技術セミナー有機金…
  6. 乾燥剤の脱水能は?
  7. マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎
  8. 円偏光スピンLEDの創製

注目情報

ピックアップ記事

  1. XPhos
  2. 高温焼成&乾燥プロセスの課題を解決! マイクロ波がもたらす脱炭素化と品質向上
  3. 書物から学ぶ有機化学 2
  4. 化学企業のグローバル・トップ50が発表【2023年版】
  5. CO2が原料!?不活性アルケンのアリールカルボキシ化反応の開発
  6. 2016年9月の注目化学書籍
  7. 有機合成のための触媒反応103
  8. MEDCHEM NEWS 32-1号「機械学習とロボティックス特集」
  9. 「超分子」でナノホース合成 人工毛細血管に道
  10. 金属容器いろいろ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年12月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

【JAICI Science Dictionary Pro (JSD Pro)】CAS SciFinder®と一緒に活用したいサイエンス辞書サービス

ケムステ読者の皆様には、CAS が提供する科学情報検索ツール CAS SciFind…

有機合成化学協会誌2025年5月号:特集号 有機合成化学の力量を活かした構造有機化学のフロンティア

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年5月号がオンラインで公開されています!…

ジョセップ・コルネラ Josep Cornella

ジョセップ・コルネラ(Josep Cornella、1985年2月2日–)はスペイン出身の有機・無機…

電気化学と数理モデルを活用して、複雑な酵素反応の解析に成功

第658回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 農学研究科(生体機能化学研究室)修士2年の市川…

ティム ニューハウス Timothy R. Newhouse

ティモシー・ニューハウス(Timothy R. Newhouse、19xx年xx月x日–)はアメリカ…

熊谷 直哉 Naoya Kumagai

熊谷 直哉 (くまがいなおや、1978年1月11日–)は日本の有機化学者である。慶應義塾大学教授…

マシンラーニングを用いて光スイッチング分子をデザイン!

第657 回のスポットライトリサーチは、北海道大学 化学反応創成研究拠点 (IC…

分子分光学の基礎

こんにちは、Spectol21です!分子分光学研究室出身の筆者としては今回の本を見逃…

ファンデルワールス力で分子を接着して三次元の構造体を組み上げる

第 656 回のスポットライトリサーチは、京都大学 物質-細胞統合システム拠点 (iCeMS) 古川…

第54回複素環化学討論会 @ 東京大学

開催概要第54回複素環化学討論会日時:2025年10月9日(木)~10月11日(土)会場…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP