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ケムステしごと

アカデミックから民間企業への転職について考えてみる 第2回

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ポスドク及びアカデミアの研究者については、いわゆる民間企業への「就職活動」が初めてという方が少なくありません。

教授からの推薦や古巣での研究の継続、あるいはアカデミアポストへの内定後の論文提出と教授との形式的な面談で現在のポジションを得たというようなケースが多いからです。

そのため、「いざ転職となったときに何からはじめていいのか分からない」という相談を一番多くいただきます。

今回は、前回の「アカデミックから民間企業への転職について考えている」の第2回目として、実際にアカデミアから民間の転職に成功された方の特長についてご紹介するとともに、どういった点が良かったのかまとめてみます。

特長1:研究をビジネスとして捉えることができている

これは選考を突破するためにとても重要なポイントです。

企業にとって研究・開発はビジネスのために行っているもので、研究自体が目的ではありません。これまでの自分の技術、経験、立ち位置を客観的に把握し、それが何の役に立つのか、将来どのような広がりが期待できるのかなどをしっかりと整理し、点だけではなく線や面でもとらえて説明できるようにする必要があります。

スムーズに転職を実現させる方は、ご面談の際に「その技術について先行している企業はどこですか」「ご自身の研究を実用化するには、何か課題ですか」といった求人企業側からの質問に対して、非常に簡潔で的確な回答を返しています。

それは日常的に先行技術のリサーチや、コストや実用化に向けた課題などを意識しているからだと思います。企業への転職では、利益を生み出すような研究成果があるのか、研究成果はビジネスとどのように結びついているのかといった点が重視される場合が多いため、常日頃からご自身の研究を客観的に捉える習慣を持つことをおすすめします。

特長2:自分の研究を専門外の人にも分かりやすく説明することができる

2つ目の特長として挙げたこの“プレゼン能力”は、面接においてとても重要です。

私の下に転職相談で面談に来られた方に「ご自身の研究を簡単に説明していただけますか」とお願いした際、相手の目線に合わせて非常に分かりやすく簡潔に説明いただける場合と、そうでない場合があります。「これは専門の人にしか分からない話だから、詳しく話してもしょうがない」と思われているのかもしれませんが、意外に面接では専門外の人に分かりやすく説明しなくてはいけない場面が多いのです。

例えば、人事担当者、役員、社長は文系出身者も多いですし、研究者であっても全く専門が同じということは少ないものです。社員の採用には大きなコストがかかり、企業にとっては重要な投資です。そのいわば投資家に対して、いかにこれまで携わってこられた研究内容を分かりやすく、興味を持たせ、資金を投じようと思わせることが出来るかが、腕の見せどころです。

加えて入社後も、研究者には出資を募るにためのプレゼン力は必須です。研究開発には時間とお金がかかり、外部資金の調達にしても、社内の開発コストの獲得においても、ただ良い研究をするだけでなく、魅力を理解させて“投資家から出資を引き出す力”は磨いておくべきだと思います。

特長3:「意志」を明確にする

3つ目に、自分の技術や研究の客観的な価値を把握し説明できるようにしたうえで、自分はどう働いていきたいのかという「意志」を明確にする必要があります

なぜ企業に入りたいのか、なぜその研究をしたいのか。大切なのは職種なのか、勤務地なのか、正社員になることなのか。それは誰かが決めるのではなく、ご自身で決めることです。

何となく勧められた企業に、何となく応募して、何となく決まるということはまずありませんし、そうゆう転職をしてほしくないと思っています。

結婚やご家族の事情、世の中にどうしても出したい技術がある、働き方を改善したい・・・など、ご自身が置かれている状況や個人の価値観によってその優先順位は変わります。すべてが理想通りにいくとは限りませんが、まずは「意志」を聞かせてもらえればと思っています。

上記を踏まえ、ここから実際の転職事例についてご紹介したいと思います。

転職事例

ポスドク研究員からベンチャー企業の研究用機器の技術開発職へ転職

大学院を卒業後、アカデミアでポスドクの研究員として2年半勤務されていた20代後半のAさん。

これまでは錯体化学の合成や物性について研究をされておりましたが、任期終了に伴い、民間企業への転職を考え、ご相談に来られました。

新卒の際にはアカデミアのみで、民間企業への就職活動ははじめてでいらっしゃったため、はじめは明確な「意志」はお持ちでなく、「可能性があるところは全て受ける」という方向で進めさせていただきました。そこでまずはこれまでの化学のバックグラウンドが生かせるメーカー、ベンチャー、中小企業の「研究職」に加え、理系出身者を広く採用している「品質管理」や「受託分析」などの職種もご紹介させていただきました。

ただ、実際に選考が進み面接の対策など一緒に練る中で、ルーチン的な要素が強い「品質管理」等の仕事に対しては意欲がわかないということに気づきはじめました。

そこで、あらためてじっくりと転職の目的や実現していきたいことを話し合ったところ、会社の規模や勤務地といった条件面より、「研究開発に携わり続けること」がどうしても譲れない点だとわかってきました。

その後、各応募先では、転職の目的が明確になったことから面接でもはっきりと「新規性の探究」という趣向性を伝えることができました。また、質疑応答もシンプルにまとまるようになり、求人企業側からの評価は高まりました。

Aさんは結果的に、ポスドクやアカデミア出身者が多く活躍するベンチャー企業で研究用機器の技術開発職で見事内定を獲得されました。

今回のAさんのように、私たち転職エージェントにご相談をいただき、転職にあたって具体的な行動を起こしたことで「自分が譲れないものは何か」という点を明確にしていくことはとても有効な手段です。

「転職を考えているが目的を整理しきれていない」「民間企業への応募がはじめてなので不安だ」

そんな思いや気持ちをお持ちの方は、ぜひ私たちLHH転職エージェントのコンサルタントまでご相談ください。

まとめ

転職の目的を整理した、個人の意思をはっきりと求人企業へ示していくことが大切

今回ご紹介した事例以外にも、たくさんの職種で実績事例があります。化学業界での転職をお考えの方はぜひLHH転職エージェントまでお気軽にご相談ください。

[文]太田 裕子(おおた ひろこ) [編集] LHH転職エージェント(アデコ株会社)

 

LHH転職エージェントについて


LHH転職エージェントとは、世界最大の総合人財サービス企業アデコが日本で展開する転職支援サービスのブランド名称です。国内では大都市圏を中心に事業を展開し、各領域に精通した転職コンサルタントがさまざまな業界・職種の転職サポートを行っています。ライフサイエンス・メディカル領域においては、化学業界を軸に、理化学機器、製薬、再生医療、医療機器といった分野でご活躍される方々の転職をサポートしています。

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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