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スポットライトリサーチ

カーボンナノチューブを有機色素で染めて使う新しい光触媒技術

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第147回のスポットライトリサーチは、岡山大学大学院環境生命科学研究科高口研究室村上 範武 (むらかみ のりたけ)さんです。

高口研究室では、有機機能性材料の開発を目指し、構造有機化学、ナノ炭素化学、典型元素化学、光化学など様々な分野の視点から研究が行われています。

今回村上さんらは、色素内包CNTを用いたCNT光触媒が非常に高い量子効率をもつことを明らかにしました。この成果は論文として発表され、プレスリリースも行われています。

Noritake Murakami, Hideaki Miyake, Tomoyuki Tajima, Kakeru Nishikawa, Ryutaro Hirayama, and Yutaka Takaguchi

Enhanced Photosensitized Hydrogen Production by Encapsulation of Ferrocenyl Dyes into Single-Walled Carbon Nanotubes

J. Am. Chem. Soc. 2018,140, 3821. doi: 10.1021/jacs.7b12845

この3月に卒業し、新たな道へと進まれた村上さんに対し高口豊准教授ならびに三宅秀明助教(山口大学大学院創成科学研究科)から、コメントをいただいています。

村上君は、広島カープの大ファンで、広島にめっぽう弱い阪神タイガースファンの私に優しくしてくださったのだと思いますが、思いやりに溢れ、いつも私以上に研究のことをよく考え、一つ一つの実験をとても丁寧に行ってくださいました。三宅先生(山口大)が合成してくださった貴重なサンプルを、任せることができる安心感は、メッセンジャーに勝るとも劣りません。企業での研究開発は、大学以上にシビアなところがあるかと思いますが、きっと素晴らしい成果をあげて、世界を照らしてくださると信じています。

高口 豊

私は共同研究者として、色素内包SWCNTを村上君に提供させていただきました。といっても、私がSWCNTを扱うのは今回が初めてであり、むしろ高口研の学生達から教わることだらけでした。どうにか色素が内包されたらしいサンプルが得られたものの、その量も限られており、初めに村上君にお渡しできたのはわずか10 mg程度でした。期待と不安の入り混じる心境でしたが、村上君は限りあるサンプルを上手く使って見事に意義深いデータを引き出してくれました。村上君の丁寧かつ粘り強い検討の賜物であり、大変感動しました。一緒に研究できたことを誇りに思っています。

三宅 秀明

ぜひ原著論文と合わせて、インタビューをお楽しみください!

Q1. 今回のプレスリリース対象となったのはどんな研究ですか?

高口研究室ではこれまで、単層カーボンナノチューブ (SWCNTs) の物理修飾を用いた水素生成光触媒の開発を行ってきました。本研究では、色素内包CNTsを用いたSWCNT光触媒を合成し、その光触媒活性の励起波長依存性を明らかにすることで、内包色素が光増感剤として機能することを明らかにしました。これまでSWCNTに内包された色素を光励起すると、色素からSWCNTへの効率の良いエネルギー移動が進行するため、電荷分離状態を経る光電変換系へと利用することは難しいと考えられていましたが、C60の高い電子抽出能を利用することで、有機色素をSWCNTsに内包させて光電変換に利用するという新しいコンセプトを提案することができたと考えています。

 

 

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

SWCNT光触媒の光触媒活性向上を目的として、SWCNTの内部空間に色素分子を内包させるという斬新な研究テーマを担当することになり、非常にワクワクしながら本研究をスタートさせました。

色素分子を内包したSWCNT光触媒の光触媒活性だけでなく、色素分子を内包していないSWCNT光触媒や色素分子単独の光触媒活性など、様々な実験条件を丁寧に検討した結果が本研究の成果につながったと考えています。

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

SWCNT光触媒に内包した色素分子が微量であったため、内包色素の存在を確認することが難しく、光触媒活性の向上に内包色素が寄与していることを証明するのに大変苦労しました。吸収スペクトルやラマンスペクトルにおいては、何度もサンプル調製を繰り返して測定し、ようやく内包色素由来のピークを確認できた時は非常に嬉しかったことを覚えています。

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

現在は化学メーカーに就職し、勉強は大変ですが充実した日々を送っています。これからも、高口研究室で学んだ化学に対する熱意と探究心を大切にしながら、日本の化学業界に貢献していきたいと考えています。

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

研究生活では、人とのつながりが非常に大切であることを強く実感しました。本研究においても、先輩方から受け継いだ膨大な研究データがあったからこそ、今回の発見に至ることができました。また、三宅秀明先生 (山口大学大学院創成科学研究科) には色素分子の合成と、SWCNTへの色素分子の内包を行っていただき、本研究をスタートさせる機会を与えていただきました。そして、高口豊先生、田嶋智之先生をはじめ研究室の皆様には、研究生活全般において大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。

私は、様々な人とのつながりが新たな発見に導いてくれると信じています。

研究者の略歴

(写真左: 高口先生, 右: 本人)

名前:村上 範武 (むらかみ のりたけ)

前所属:岡山大学大学院 環境生命科学研究科 資源循環学専攻 有機機能材料学研究室 (高口研究室)

研究テーマ:SWCNT光触媒を利用した水分解反応系と活性波長制御法開発

めぐ

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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