[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

研究室でDIY!~割れないマニホールドをつくろう~

[スポンサーリンク]

どこでも誰でも使える、ちょっとしたDIYテクニックを共有し、皆でラボを便利に使いましょう・節約しましょうという企画シリーズ記事。題して「研究室でDIY!」

以前にもいくつか取りあげていますが、今回は真空マニホールドをテーマに、「現場ラボのDIY」をご紹介したいと思います(京都大学薬学部の瀧川紘先生からご寄稿頂きました。御礼申し上げます)。

高価なガラス器具、本当に必要ですか?

サンプルの乾燥に油回転式真空ポンプにつないだガラス製真空マニホールドを使っているところは多いと思います。ただ、ガラス製のものは時間が経つとコックが固くなったり、スリのグリースがきれてくると真空漏れを起こしたりします。また、グリースを塗っている最中にコックを落下→破損→スリの部分丸ごと交換(○千円(泣))なんてことも。

そんなときに誰しも思うのは、「これ、なんでガラス製じゃないとだめなの?」ということ・・・。

ガラス製じゃなくてもいいんです!

というわけで、金属製真空マニホールドをDIYしてみました!

金属製マニホールドの完成品

今回作るのはこんな感じの一品です。

①ホースニップル:ここから真空ポンプにつなぎます。
②内・外ソケット:機能的には不要ですが、隣り合うバルブが干渉するのでつけています。
③シールテープ:液体用の配管では基本!気体に効果があるのか定かではありませんが、一応巻いています。

材料と作り方

それでは作り方(というほどのものではないですが)をご紹介します!

用意するモノは下記リスト参照。部品が全て!モノタロウで調達可能です。

アソー ホースニップル HN-1208:1個
アソー 内・外ソケット NF-1022:2個
アソー エースボール ストレート型 ホースニップル一体型 BH-1208:3個
(少し安い『モノタロウ 小型ボールバルブ(ホースニップル一体型)  』でもOK。)
アソー クロス KK-1222:1個
アソー 内・外エルボ LK-1022:2個
シールテープ:適宜

なんてことはないものばかりですが、バルブの種類・サイズは複雑なので品定めが結構面倒なんです・・・。

メリット・デメリット

金属製DIYマニホールドは、ガラス製に比べ、たくさんのメリットがあります。

メリット①:(今のところ)真空漏れがない

「どうせ使っていたら真空漏れ起こすんでしょ・・・」と思っている人は多いと思いますが、弊ラボで1年間使用している限り、全く真空漏れを起こしていません。

メリット②:グリースレス

グリース塗らなくていいんです(当然)。

メリット③:分解できる

「なんかここだけ真空漏れしてそう」「汚れたから洗いたい」そんなときでも分解・交換OK。

メリット④:割れない

(当然)

メリット⑤:増設可能

内ネジチーズ六角ニップルなどと一緒にバルブを買えば、3連だけでなく無限に増やせます。

内ネジチーズ TF-1222

六角ニップル NT-1022

デメリットとしては、結構な重量になることくらいでしょうか。

バルブにガス風船をつければ、(作業に一手間かかりますが)簡易ガス置換マニホールドとしても使えるかも?真空漏れを起こさないと分かれば、アイデアは無限大∞です。

費用も上の3連のものなら5000円(税別、安価な方のバルブを使った場合)ほどで、ガラス製のものよりは安いはずです。ぜひお試し下さい。

おまけ

実施例その2

この工夫を個人的に教えて貰ったところかなり良さそうでしたので、筆者(副代表)のラボでも早速部品を買って一つ作って見ました(下記写真)。いまのところ真空漏れしている様子はなく、普通に使えています。耐圧ゴム管にガラス製3方コックを3つつないで同じラインを作ると、それだけで1万円ぐらいの出費になってしまいます(スリ付ガラスは高価!)。一方のこちらは、一度作っておけば半永久的に使えそうですし、重量と作業手間はあるもののなかなかイケてそうです。是非皆さんのラボでもお試しあれ!

 

追記2019/3/29

岐阜薬科大学・平山祐 先生より金属成分を減らしたマニホールドの作成法をご提供頂きました。詳細はこちらの記事をご参照ください。

追記2019/9/30

神奈川大学・辻勇人 先生より、不活性ガス置換を可能とする改良版の作成法をご提供頂きました。「アソー ホースニップル HN-1208」を「アソー エースボール 【切換用】ホースニップル一体型 BH-5288」に置き換えるだけでOKです。

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 自由の世界へようこそ
  2. 島津製作所がケムステVシンポに協賛しました
  3. クリーンなラジカル反応で官能基化する
  4. 個性あるTOC
  5. 有機合成化学協会誌2019年7月号:ジアステレオ選択的Joull…
  6. PACIFICHEM2010に参加してきました!Final!
  7. 反芳香族性を有する拡張型フタロシアニン
  8. Ns基とNos基とDNs基

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. マテリアルズ・インフォマティクスにおけるデータの前処理-データ整理・把握や化学構造のSMILES変換のやり方を解説-
  2. ゼナン・バオ Zhenan Bao
  3. 高脂血症薬がウイルス抑制/C型肝炎で厚労省研究班
  4. 医薬各社、アルツハイマー病薬の開発進まず
  5. 論文チェックと文献管理にお困りの方へ:私が実際に行っている方法を教えます!
  6. ポンコツ博士の海外奮闘録 〜ポスドク失職・海外オファー編〜
  7. ワッカー酸化 Wacker oxidation
  8. 新たな環状スズ化合物の合成とダブルカップリングへの応用
  9. Brevianamide Aの全合成:長年未解明の生合成経路の謎に終止符
  10. 【速報】2022年ノーベル化学賞は「クリックケミストリーと生体直交化学」へ!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年1月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP