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有機合成化学協会誌2021年9月号:ストリゴラクトン・アミド修飾アリル化剤・液相電解自動合成・ビフェニレン・含窒素複素環

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2021年9月号がオンライン公開されました。

9月ってこんなに慌ただしかったでしたっけ…という9月を過ごしています。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

有機合成化学協会誌は今月号も充実の内容です。

キーワードは、ストリゴラクトン・アミド修飾アリル化剤・液相電解自動合成・ビフェニレン・含窒素複素環です。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:研究分野を変えてみるのは如何ですか

今月号は、北海道大学大学院薬学研究院 周東 智 教授による巻頭言です。

 

筆者自身は興味をもとに突き進んできてしまって結局分野は変えられてないのですが、変えることの勇気とワクワク感、難しさと楽しさを想像し、たまにとても変えたくなります。オープンアクセスです。

追悼:根岸英一先生のご逝去を悼む 

今月号は、北海道大学 高橋 保 名誉教授による追悼記事があります。

知らないひとはいないかと思いますが、根岸先生は2011年のノーベル化学賞受賞者です。筆者は当時学部4年生で研究を始めたばかりで、自分の関わる分野でノーベル賞が出たことに大きく感動し、興奮しました。
今のキャリアがあるのも根岸先生の影響があると思っています。何度か講演を聴かせていただきました。また聴きたいです。ご冥福をお祈りいたします。

有機合成化学を基盤とするストリゴラクトン研究

滝川浩郷*

*東京大学大学院農学生命科学研究科

ストリゴラクトン類の合成の歴史と最新の成果が分かりやすく記載されています。2021年現在のこの分野を知るには、第一に読むべき論文です。

アミド修飾したアリル化剤を利用するα-メチレン-γブチロラクトンおよびα-メチレン-γ-ブチロラクタムの選択的合成

仙石哲也、依田秀実*

*静岡大学工学部

生理活性天然物にみられるα-メチレン-γ-ブチロラクトンと、ラクトンの酸素を窒素に置き換えた類縁構造を確実に作り分ける合成法が紹介されています。不斉合成だけでなく、水中で安定なアリル化剤の開発など注目点多数の論文です。

液相電解自動合成によるオリゴグルコサミンの合成

矢野君晟、佐々木紀彦、伊藤敏幸、野上敏材*

*鳥取大学工学部化学バイオ系学科

オリゴ糖の効率的な合成法が探求されている中、筆者らは液相合成に基づく自動合成法の開発に取り組んでいます。電気化学的手法の理解と装置の考案によって、生物活性オリゴ糖や、環状オリゴ糖の簡便な合成を成し遂げた研究展開が丁寧に解説されています。

遷移金属触媒によるビフェニレン類の変換反応の開発と多環式炭化水素合成への展開

髙野秀明*柴田高範**

*北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)

**早稲田大学先進理工学部化学・生命化学科

遷移金属錯体を用いたビフェニレン類の炭素-炭素結合の開裂を起点する新しい多環式芳香族化合物 (PAHs) の合成法に関する論文であり、興味深い光学特性を有する様々なPAHの合成に成功している。反応機構としても興味深く、多くの研究者に読んで欲しい総合論文である。

含窒素複素環をコアに有する星型(D-π)3-A分子の合成と光物性

村岡宏樹*小川 智*

*岩手大学理工学部化学・生命理工学科

中心の芳香環から放射状に伸びたπ共役側鎖を有する星型π共役分子は、幾何学的な構造美に加えて、直鎖型類縁体とは異なる光・電子物性から注目されている。本総合論文では、著者らの星型ドナー・π・アクセプター分子について、詳しく紹介されている。

Review de Debut

今月号のRebut de Debutは1件です。オープンアクセスなのでぜひ。

・フォルダマー触媒 (東京大学大学院工学系研究科)齋藤杏実

感動の瞬間:ささやかな成功の力 

今月号の感動の瞬間は、名城大学大学院総合学術研究科の森 裕二教授による寄稿記事です。

 

「正しく努力する人は 必ず成功する」というメッセージが随所に感じられる記事です。オープンアクセスです。

 

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

関連書籍

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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