[スポンサーリンク]

化学工学

ベーシック反応工学

[スポンサーリンク]

「化学工学って社会に出てから使えますかね?」

という言葉を、何かの拍子にとある学生から言われたことがあります。
結論から言うと

めっちゃ必要で大事!

と筆者は思います。

ちなみに筆者は農芸化学出身で、就職するまで「化学工学?何それおいしいの??」レベルで全く触れたことがない分野でした。

筆者は化学メーカーに就職し、スケールアップやコストダウンのために反応の条件検討をしているのですが、そこで初めて化学工学に出会いました。化学工学は”反応について相手に説明し、納得してもらうツール”として非常に強力な効果を発揮しています。本当に安全な反応なの?どのくらい発熱するの?どのくらい冷却すればいいの?どれぐらい時間がかかるの?・・・などなど、モノ作りの現場では次々と質問が降ってきます。安全で確実なモノ作りのため、研究員は最も反応を熟知している者として、そういった質問にしっかりと答えて上司や現場の作業員の方々に納得してもらわなければいけません。

さて、前置きが長くなりました。そんな化学工学の中でも、研究員にとって最も身近で、身に着けなければいけない学問が反応工学であると筆者は考えています。学生時代にほとんど触れたことがない領域だけに、現在進行形でせっせと勉強しています。

そんな勉強で使った書籍の一つ、「ベーシック反応工学」をご紹介したいと思います。

[amazonjs asin=”4759818065″ locale=”JP” title=”ベーシック反応工学”]

 

内容説明

大学2年生以上を対象としたテキスト.分子と分子,分子と組織の反応工学について,主に“濃度”,“分圧”および“反応速度”に注目,動的過程を数式モデ ルで記述し,因果性を追求できるよう配慮した.例題・章末問題と解答が充実し,専門力が醸成できるよう工夫がなされている.(化学同人HPより)

全体の印象

学部の2年生以上を対象にしているということで、比較的軽めの内容なのかな?と思っていたのですが、図や数式をふんだんに使い、かなり細かいところまで説明されていると感じました。ちなみに筆者は若干数式アレルギーの気もあるので(←おい)所々つっかかりましたが、読みやすくする気遣いや、知識を体系的に身に着けてほしいという工夫を随所に感じられたため、全体を通して楽しく読むことができました。
まず、本の両サイドの空白に、要所要所で「ONE POINT」という補足やミニコラムがあり、ふと浮かんだ疑問の多くはそこでさらっと解決してくれます。化学同人さんのHPで本書の内容をちょこっとだけ見ることができますが、そこで雰囲気をつかめると思います。

 

basickakouonepointONE POINTの例(本書より)

その他、HPでは見ることができませんが、各章の最後には「学習のキーワード」として、重要な専門用語がまとめられています。章を読み終わった後で、それぞれのキーワードの意味をちゃんと説明できるか?と一つ一つチェックしていくことで、現時点での自分の理解がどの程度なのかを把握することができます。そこで理解し切れていないならばその部分を読み返し、結果として漏れのない知識を得られる素晴らしい工夫だと思います。

 

詳しい内容

1章 単一の反応について(反応速度、反応次数)
2章 複数の反応を取り扱おう(並行反応,逐次反応,逐次並行反応)
3章 反応器の成分操作とは(回分反応器,押出し流れ反応器,二段式反応器)
4章 反応器の温度操作とは(等温反応器,断熱反応器,開放系反応器)
5章 滞留時間分布操作とは(滞留時間分布、槽列モデル、混合拡散モデル)
6章 気液接触反応を取り扱おう(反応吸収,反応係数)
7章 固体原料反応の取扱い(未反応核モデル)
8章 固体触媒反応を取り扱おう(チーレ数)
9章 生物細胞反応の取扱い(モノーの式)(化学同人HPより)

全9章で構成されています。1章~8章はよくある内容のように思いますが、

本書は,反応工学に関わる他の書籍と比べ,反応率(転化率)という専門用語の出現頻度が低く,濃度の出現頻度が高い.これは,反応率は因果性の観点からすると結果であり,反応を進めている駆動力となる変数は濃度,分圧であるためである.(本書「はじめに」より抜粋)

とあるように、他の書籍とは少し違った表現で説明されている部分もあり、こういうことだったのかと理解が深まる箇所がいくつもありました。
さらに9章の内容は、こういった基礎的な反応工学の本では他にない(少なくとも筆者が知っている中では)、生物細胞反応についてまとめています。正直に言いますとまだ完全には理解しきれていないのですが、最近話題となったSpiber株式会社ように、微生物を使った物質生産などが盛んに研究されている昨今、細胞の培養にはこういった知識が活かされているのかと目を通すだけでも価値があるように思います。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4254256027″ locale=”JP” title=”反応工学解析 (シリーズ新しい化学工学)”][amazonjs asin=”4873266599″ locale=”JP” title=”プロセスケミストのための化学工学 (基礎編)”]
Avatar photo

らくとん

投稿者の記事一覧

とある化学メーカーで有機合成関係の研究をしている人。一日でも早くデキる企業ケミストになることを夢見ているが、なかなか芽が出ない残念ケミスト。化学も好きだけど生物も大好きな農芸化学出身。

関連記事

  1. 北川 進 Susumu Kitagawa
  2. マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-
  3. 免疫(第6版): からだを護る不思議なしくみ
  4. Guide to Fluorine NMR for Organi…
  5. 【書評】現場で役に立つ!臨床医薬品化学
  6. トップ・ドラッグ―その合成ルートをさぐる
  7. 麺の科学 粉が生み出す豊かな食感・香り・うまみ
  8. 切磋琢磨するアメリカの科学者たち―米国アカデミアと競争的資金の申…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 危険物に関する法令:危険物の標識・掲示板
  2. 子育て中の40代女性が「求人なし」でも、専門性を生かして転職を実現した秘訣とは
  3. 酵素触媒によるアルケンのアンチマルコフニコフ酸化
  4. 東北地方太平洋沖地震に募金してみませんか。
  5. すべてがFになる
  6. フローケミストリーーChemical Times特集より
  7. トシルヒドラゾンを経由するカルボニル化合物の脱酸素ヒドロフッ素化反応によるフルオロアルカンの合成
  8. 分子の聖杯カリックスアレーンが生命へとつながる
  9. 【速報】2010年ノーベル化学賞決定!『クロスカップリング反応』に!!
  10. 花王、ワキガ臭の発生メカニズムを解明など研究成果を発表

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年11月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

CIPイノベーション共創プログラム「有機電解合成の今:最新技術動向と化学品製造への応用の可能性」

日本化学会第106春季年会(2026)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「有機電解合…

CIPイノベーション共創プログラム「世界を変えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第106春季年会(2026)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「世界を変え…

年会特別企画「XAFSと化学:錯体, 触媒からリュウグウまで –放射光ことはじめ」

放射光施設を利用したX線吸収分光法(XAFS)は、物質の電子状態や局所構造を元素選択的に明らかにでき…

超公聴会 2026 で発表します!!【YouTube 配信】

超公聴会は、今年度博士号を取得する大学院生が公聴会の内容を持ち寄ってオンライン上で発表する会です。主…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part II

さて、Part Iに引き続きPart II!年会をさらに盛り上げる企画として、2011年より…

凍結乾燥の常識を覆す!マイクロ波導入による乾燥時間短縮と効率化

「凍結乾燥は時間がかかるもの」と諦めていませんか?医薬品や食品、新素材開発において、品質を維…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part I

まだ寒い日が続いておりますが、あっという間に3月になりました。今年も日本化学会春季年会の季節です。…

アムホテリシンBのはなし 70年前に開発された奇跡の抗真菌薬

Tshozoです。以前から自身の体調不良を記事にしているのですが、昨今流行りのAIには産み出せな…

反応操作をしなくても、化合物は変化する【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか温度を測ること…

ジチオカーバメートラジカル触媒のデザイン〜三重項ビラジカルの新たな触媒機能を発見〜

第698回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(大井研究室)博士後期課程1年の川口…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP