[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

bothの使い方

形容詞もしくは代名詞の働きをする場合(接続詞としての用法もあります)、「both」は日本人学者によって誤って使用されることがよくあります。

最もよく見られるのは、「both」で2つの物事の「関係」を表わそうとするという誤りです(これは日本語の「両」が「both」に相当するという、日本人の通念に起因するものと思われます)。

実際には、「both」は2つの物事をまとめて指し示すことはできても、「関係を表す」という役割を果たすことはできません。以下に、この語を用いた典型的な誤用例と修正例を示します。

[誤] Both experiments yielded consistent results.
[正] These (two) experiments yielded consistent results.
[正] The results of these (two) experiments are consistent.

 

[誤] There is a difference between the responses for both treatments.
[正] There is a difference between the responses of the two treatments.
[正] The responses of these (two) treatments differ.

 

[誤] Both functions have the same asymptotic form.
[正] These (two) functions have the same asymptotic form.
[正] The asymptotic forms of the (two) functions are identical.

 

これらの例文で著者は「both」を用いて2つの(明記されている)物事の「関係」を述べようと意図しましたが、ここで「both」は著者が意図したものどうし(experiments、treatments、functions)を単にまとめて指し示すだけで、実際に示されるのは著者が意図したものどうしの関係ではなく、「明記されている」2つの物事と「明記されていない」物事との関係なのです。

たとえば最初の例文は、「both experiments」が指す2つの実験による結果が互いに一致しているという状況ではなく、これらの実験が個別に他の(明記されていない)実験の結果、あるいは理論と一致しているという状況を表しているのです。

より詳しい解説についてはグレン・パケット:『科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現』(京都大学学術出版会,2004)の第28章をご参照ください。

出典元:エナゴ学術英語アカデミー

化学論文での「Both」の利用例

He also showed that phosphines can both coordinate and decompose catBCl. DOI: 10.1021/jacs.6b02914

Electronic modulation of the aryl ring was found to have a negligible effect on stereoselectivity for both the ethyl and methyl derivatives. DOI: 10.1021/jacs.5b07136

Both 13 and 15 were crystallized, and their structures were determined by X-ray crystal structure analysis. DOI: 10.1038/NCHEM.2174

This sequence was recently employed in the synthesis of both enantiomers of the natural product artelu- dovicinolide A. DOI: 10.1002/anie.201309886

%e8%8b%b1%e6%96%87%e6%a0%a1%e6%ad%a3%e3%82%a8%e3%83%8a%e3%82%b4

The following two tabs change content below.
webmaster
Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院准教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 炭素繊維は鉄とアルミに勝るか? 2
  2. クロスメタセシスによる三置換アリルアルコール類の合成
  3. 【速報】2013年イグノーベル化学賞!「涙のでないタマネギ開発」…
  4. 地方の光る化学企業 ~根上工業殿~
  5. 【追悼企画】化学と生物で活躍できる化学者ーCarlos Barb…
  6. 科学は夢!ロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞2015
  7. リガンド指向性化学を用いたGABAA受容体の新規創薬探索法の開発…
  8. 有機合成化学協会誌2017年7月号:有機ヘテロ化合物・タンパク質…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. カネボウ化粧品、バラの香りの秘密解明 高級香水が身近に?
  2. ヘイオース・パリッシュ・エダー・ザウアー・ウィーチャート反応 Hajos-Parrish-Eder-Sauer-Wiechert Reaction
  3. 遷移金属の不斉触媒作用を強化するキラルカウンターイオン法
  4. ゾムレ・ハウザー転位 Sommelet-Hauser Rearrangement
  5. アンモニアがふたたび世界を変える ~第2次世界大戦中のとある出来事~
  6. トムソン・ロイターのIP & Science事業売却へ
  7. ADC薬基礎編: 着想の歴史的背景と小分子薬・抗体薬との比較
  8. 化学のちからで抗体医薬を武装する
  9. トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III) : Tris(2,4-pentanedionato)iron(III)
  10. 東亜合成と三井化学、高分子凝集剤の事業統合へ

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2017年12月号:四ヨウ化チタン・高機能金属ナノクラスター・ジシリルベンゼン・超分子タンパク質・マンノペプチマイシンアグリコン

2017年も残すところあとわずかですね。みなさまにとって2017年はどのような年でしたでしょうか。…

イミデートラジカルを経由するアルコールのβ位選択的C-Hアミノ化反応

オハイオ州立大学・David A. Nagibらは、脂肪族アルコールのラジカル関与型β位選択的C(s…

翻訳アルゴリズムで化学反応を予測、IBMの研究者が発表

有機化学を原子や分子ではなく、単語や文と考えることで、人工知能(AI)アルゴリズムを用いて化学反応を…

細胞をつなぐ秘密の輸送路

細胞から細く長く伸びるワイヤー状の管。サイトネームやトンネルナノチューブと呼ばれるこの管は、離れた細…

IGZO

インジウム (Indium) 、ガリウム (Gallium) 、亜鉛 (Zinc) 、酸素 (Oxy…

微生物細胞に優しいバイオマス溶媒 –カルボン酸系双性イオン液体の開発–

第129回のスポットライトリサーチは、金沢大学理工研究域生理活性物質工学研究室の黒田 浩介(くろだ …

Chem-Station Twitter

PAGE TOP