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化学書籍レビュー

The Art of Problem Solving in Organic Chemistry

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内容

This long-awaited new edition includes updated organic reactions and helps students understand and solve the complex mechanistic problems that organic chemists face. Using 60 solved and worked-through problems the author uses a step-by-step approach to discuss each through the application of various problem-solving techniques. He also addresses questions for students as a guide to help them find their own way before relying on the author’s solutions…. (Wiley社内容紹介より)

対象

  • 天然物合成・医薬合成などの複雑な有機合成を専門とする大学院生~研究者
  • 反応機構考察についての演習書を必要とする方。

解説

本書は1987年刊行の古典的演習書が大幅改訂を経て、第2版として2014年に刊行されたものである。

高度に設計された複雑化学反応がどのように進行しているか、予想外に見つかった化学反応に関し直面する問題をどのように解決したか・・・などなどの現実例に即した有機化学の問題を数多く取りあげている。それをを自ら解決する能力を磨くことに主眼を置いた演習書である。

構成は以下の通り。

1. Problem Analysis in Organic Reaction Mechanism
2. Electron Flow in Organic Reactions
3. Additional Techniques to Postulate Organic Reaction Mechanisms
4. Solved Problem Collection

問題を解くために必要な分析法・捨象、電子の流れに関する原理原則、反応機構を推測する技術や考え方などが、まず1~3章で丁寧に解説される。普通の教科書では明確に述べられない内容・考え方も多く含まれ、この部分を読むだけでもレベルアップできるだろう。現場の合成研究に十分応用可能なものも多い。

4章まるまるが問題集であるが、全60問と数自体は多くない。その反面、約300ページ強にもおよぶ解説が非常に充実しているのが特徴。元ネタとなった原著論文が付記されることは勿論、Webでsupplementary contentsが公開されており、発展的理解も手伝ってくれる。

かなりハイレベルの読者を対象としているようで、粒揃い・難問揃いである。基本的には易問から難問へ配列されているが、最後のほうは相当に歯ごたえがある。
以下にラスボス問題(59問目)を紹介しておく。こんなものでも解答は必ずあるし、至極丁寧な解説もあるので心配無用。(※現場の先端研究には「解けるかどうかを見極める作業」がこの上に要求されるので、さらに難度は高い!)

art_of_problem_solving_oc_1

これほどのハイレベル問題集は、研究室で行なわれる問題会資料のWeb公開版を探すか、ラボぐるみで原著論文を当たって自作したものを選別する以外に入手法はないと思う。

基礎的な問題集を数冊こなしたうえで、一層のレベルアップ・チャレンジを考える飽くなき意欲をもつ方、教科書レベルを脱し、研究レベルの思考感を紙面から掴みたい方は、是非ご覧になってはいかがだろうか。

関連書籍

化合物合成に実用される有機反応機構を題材とした演習書には、他に以下のものがある。

「有機反応機構の書き方  基礎から有機金属反応まで」
(原書:The Art of Writing Reasonable Organic Reaction Mechanism)
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基本的な有機化学反応~遷移金属反応を多く集め、有機反応の電子の動きを理解させることを目的とした演習書。本書ほど高度な内容ではない。学部レベルの教科書を一通り終えたタイミングでレベルアップを目指す目的に適する。院試に挑む学生、院試を突破した学生、反応開発研究に入門した方はここから手を付けてみると良い。

「演習で学ぶ有機反応機構 大学院講義から最先端まで」(いわゆる”福山本”)
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実用ツールとしての「巻矢印」の徹底的習得を主眼としている。問題数は300問と多く、院試レベルから研究者レベルでも頭を抱える非常にハイレベルなものまで幅広く含まれる。理論よりも現場的な定性理解を重視するスタンスなので、解答は文章を極力排し、反応スキームでさらりと述べるに留まっている。裏付けされる詳細な理屈については、別の教科書から補足的に得ていく必要がある。

本書は福山本のB~C問題ばかりを集めて解説をぶ厚くしたような構成なので、数をこなすか深く学ぶか、目的に応じて並列的に参照すると良いだろう。

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cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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