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一般的な話題

セミナー/講義資料で最先端化学を学ぼう!【有機合成系・2016版】

先端論文を紹介する機会としての文献セミナー・抄録会などは、どこの研究室でも開催されていると思います。近年ではそこで使った解説資料(handout)をWeb公開しているラボがかなり増えています。またラボの主宰者(PI)が担当する講義資料も公開されていたりします。

多くはトピック毎に簡潔にまとめられ、未知の分野を勉強するとっかかりとして、便利に活用できます。最先端知識を日夜詰め込む研究者達が、特定テーマに沿って簡潔にまとめた資料ですので、内容もある程度正確です。当座の理解を得るだけならこれらを当たるほうが、原著論文を地道に当たっていくよりずっと速く済むことがあります。

今回はそんな「セミナー資料を公開している研究室ウェブサイト」をまとめて取り上げてみたいと思います。

以前からのリストを統合し大幅な加筆を加え、【2016年版】として再公開します。分野は筆者の趣味から有機合成系に限ってしまいますが、ご容赦くださいm(_ _)m。

充実度・クオリティ高し!!お手本にしたいラボ

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有機合成化学の大御所・Evans研では、2010年頃までの文献紹介セミナー資料を公開しています。内容は天然物の全合成研究や有機合成方法論に関するものが主です。セミナー資料の他にも、化合物の酸性度(pKa)一覧表(PDF)や、Advanced Problems in Organic Chemistry(有機合成問題集)も公開しており、情報価値の高いページです。レイアウトも見やすく、情報発信の良いお手本となってくれるでしょう。

天然物の全合成研究における大御所・Myers研では、講義資料をPDF形式で公開しています。内容は「酸化」「ハロゲン-リチウム交換」などの括りで、有機合成法をまとめたものです。定石とされる方法論ばかりが集められているので、有機合成を現場で研究する人にとってのリファレンスとして、大変重宝します。

独創的なルートの天然物合成研究で脚光を浴びるBaran研。近年は医薬合成化学の枠組でかなり幅広い研究展開を見せているようですが、公開されるセミナー資料も複雑化合物合成に関するトピックが中心です。資料から推し量られるメンバーのレベルの高さには驚嘆するばかり。

またBaran教授が担当する複素環合成の講義資料も別に公開されています。本職の製薬研究者なども受講しているようで、非常にクオリティが高いです。電子書籍の形でもまとめられていますので、要チェックです(ケムステでの紹介記事)。ブログ「Open Flask」で最新の話題を積極的に発信してもおり、アピールにも余念がありません。

独自の不斉有機触媒フォトレドックス触媒を用いる革新的合成法を発表し続けるMacMillan研。2000-2015年のセミナー資料を公開しています。内容は反応開発研究に関するものが多いですが、天然物合成や有名化学者の研究経歴、基礎化学なども取り上げています。資料のフォーマットがラボで統一されており、とても見やすい資料になっているのは素晴らしいですね。

問題会や雑誌会の資料に加えて、化学系Webサイトのリンク集が充実しておりとても便利です。在籍者の博士論文リストも公開されており、Webベースの情報発信に意欲的に取り組む研究室の代表格といえます。

ケイ素を使う合成、ルイス塩基有機触媒を用いる合成などで世界的に有名なDenmark研でも、文献紹介セミナーの資料を公開しています。現在も休まず更新されており、継続性が高いため最新の話題もカバーされているのが高評価ポイントです。

最近、MIDAボロネート法を用いる革新的な自動合成装置の開発で評判をかっさらったMatin Burke研。有機合成やケミカルバイオロジーを題材とした論文紹介、反応機構問題会の資料が公開されています。こちらも継続度が高いです。

  • Gregory R. Cook 研 (ノースダコタ大)

CourseのリンクからCook教授が担当する有機化学クラスの講義動画が閲覧できます。数・量とも充実しており、基礎的な内容を学びたい人や授業の組み立ての参考にしたい人には良いコンテンツと思えます。

反応機構の問題資料、合成穴埋め問題資料が公開されています。あまりに良くできているので、そのまま勉強会に流用できてしまいます(笑)

圧倒的美麗なデザインの講義資料が多数公開されています。スライドづくりのセンスを学ぶ良いお手本になるでしょう。

  • Dirk Trauner研(ルードヴィヒ・マクシミリアン大ミュンヘン)

Denkspotのリンクにラボで行われる問題会(全合成スキームの穴埋め)資料が公開されています。良い点はChemDraw版も公開されているため、自分でアレンジして使うことが可能な点。Teachingのリンクからは「Neuroscience for Synthetic Chemist」と題する講義資料が多数公開されています。このような題材は非常に貴重で有り、光化学遺伝学を推し進めるTrauner教授ならではといえます。

フラッシュカード形式で全合成の穴埋めクイズに取り組めるChemistry By Design、医薬品に関するポスター(1)(2)など、他では見られないコンテンツを公開してます。

こちらも全合成・反応開発に関するセミナー資料を公開しています。Shenvi、BurnsともにBaran研出身の若手PIでいずれも似通ったスタイルの資料なのですが、育ったラボの文化が根強く受け継がれていく、と言うことなのかも知れません。

講義資料のパワーポイントファイルが公開されています。Classics in Total Synthesisの執筆者だけあり、教育には力を入れているようです。

有機化合物の分析および発展的な有機化学に関する講義資料を公開しています。なかなかしっかり作られており、勉強になります。

有機反応、有機金属反応に関する反応機構の問題集が公開されています。新しいものが多い点はポイント高し。

最新の有機合成反応、全合成研究、医薬合成研究などを見やすくまとめた資料が公開されています。クオリティ高いです。

 日本で天然物合成といえばまずはこの研究室だ、というぐらいの福山透研です。以前よりラボで行われている問題会の資料は継続的に公開されています。ご覧になればわかりますが、とんでもなく難しいです。この問題会の内容をレベル別にまとめて出版した書籍がご存じ「演習で学ぶ有機反応機構」であり、今では学生から研究者まで幅広く使われる名著となっています。実験テクニックに関する資料なども充実しており、役立つ日本語情報が満載のサイトです。

前任の柴崎正勝教授時代から、ホームページ上で文献紹介資料を公開しています。後任の金井求教授になった現在でもこれは継続されています。有機合成・医薬化学が主体ですが、新しいラボになって以降、トピックの幅は大幅に広がっています。そのほか、研究マニュアル類便利な文書類など様々な便利コンテンツが満載です。

毎週作成される文献抄録集文献紹介セミナー、問題会の資料が公開されています。アクティブに更新されており、一見の価値ありです。

東大理学部の各研究室の学生が集ってセミナーを行っているようで、その資料が公開されています。有機材料系のお話も多く、なかなか貴重な情報源です。他の大学・学部でもこういうラボ横断型セミナーはもっと増えていいんじゃないでしょうか。

日本人が達成した天然物全合成のスキーム集「天然物の全合成2000-2008」を穴埋め形式にアレンジした形の問題集「天然物合成道場」が公開されています。同書をお持ちの方は、補助資料として活用してみると良いでしょう。

有機化学研究に関わる分析化学の大学院講義資料を公開されています。現場研究の入門的位置づけなので高度ではありますが、分かりやすく作られているのでとても参考になります。このような内容が日本語で学べる資料は少なく、大変貴重です。

更新頻度低めかな・・・?なラボ/グループ

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プリンストン大学化学科に属する研究者が行っているラボ横断型勉強会のようです。2007年までで一旦停止。

Lectureのリンクから、Nicolaou教授の講演資料でダウンロードできます。グラフィックスタイルは斬新ではあるんですけど、やや見づらいような気も・・・

White教授が担当する有機金属化学の講義資料、文献セミナーの資料が公開されています。

ラボで行っている文献紹介セミナーの資料を公開しています。全合成の研究室だけあって、その周辺トピックに特化しています。ただし2010年分まで。

  • William D. Wulff研  (ミシガン州立大)

有機合成の文献紹介、人名反応などがトピックですが、公開数と資料の種類がとても多く、大変充実しています。 ただし2010年までで更新停止。

2010-2014の文献紹介セミナー資料を公開しています。

基礎有機化学・有機合成触媒に関する講義資料ですが、端的まとまっています。

Youtubeのチャンネルで、講義動画を公開するユニークな試みがなされています。

2014年までのグループセミナー資料が公開されています。

ケミカルバイオロジー系のセミナー資料が公開されています。2011年までで停止。

2015年までの文献セミナー資料が公開されています。全合成研究が主体です。

おわりに

日々の研究活動が忙しいためか、「ネットを通じて情報発信する」ことに積極的な化学系ラボはそれほど多くないように感じます。雑誌会や勉強会などはどこの研究室でも日常的に開催されているものと思いますが、インターネットという開かれたメディアを通じて、最先端の内容を世界中の研究者達と共有できれば、お互い得るものも少なくないことでしょう。

最先端の研究者が何を考え、どういう情報を活用して日々過ごしているのかを積極的に発信していく姿勢は、それだけで内外の研究者達にとって有益・刺激的なものになるのではないでしょうか。日本ではまだまだそういう意識が育っていない気もしますので、このような試みはもっと増えていって欲しいと思います。

今回は有機合成系をメインに紹介しましたが、他の化学分野でもこういうのがあれば素晴らしいですね。セミナー資料公開をしている研究室について、皆さんのほうで追加情報をお持ちでしたら、コメント欄もしくはTwitter(@chemstation)にお知らせください!適宜追加していきたいと思います。

 

関連リンク

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cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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