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浅野 圭佑 Keisuke Asano

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浅野 圭佑(あさの けいすけ)は、日本の有機化学者である京都大学大学院 工学研究科 助教。専門は有機反応化学、有機合成化学、分子触媒化学。研究テーマは有機触媒に特有の速度論に基づく選択的反応手法の創出。学術変革領域研究(B)「糖鎖ケミカルノックインが拓く膜動態制御」(略称:糖化学ノックイン)班員。第24回ケムステVシンポ「次世代有機触媒」講師。

経歴

2003年3月    私立 六甲高等学校 卒業
2007年3月    京都大学 工学部 工業化学科 卒業(指導教員:松原 誠二郎 教授)
2008年5月~2008年7月 BASF海外インターンシップ(独,Ludwigshafen本社,Klaus Ditrich 教授 グループ)
2009年3月    京都大学大学院 工学研究科 材料化学専攻 修士課程 修了(指導教員:松原 誠二郎 教授)
2012年3月    京都大学大学院 工学研究科 材料化学専攻 博士課程 修了(指導教員:松原 誠二郎 教授)
2012年3月    工学博士(京都大学)取得
2010年4月~2012年3月 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2012年4月~2013年3月 京都大学大学院 工学研究科 合成・生物化学専攻 特定助教(吉田 潤一 教授 研究室)
2013年4月~現在     京都大学大学院 工学研究科 材料化学専攻 助教(松原 誠二郎 教授 研究室)

受賞歴

2014年 第30回 井上研究奨励賞
2014年 有機合成化学協会 エーザイ研究企画賞
2015年 日本化学会 第95春季年会「第29回 若い世代の特別講演会」
2015年 第39回 内藤コンファレンス ポスター賞
2019年 第68回 日本化学会進歩賞
2020年 Thieme Chemistry Journals Award 2020
2020年 第12回 井上リサーチアウォード
2021年 第10回 新化学技術研究奨励賞

研究業績

有機触媒は、複数の穏和な活性部位を分子骨格に配置し、速い反応においてもそれらが基質に対して協働的に作用して初めて反応を促進するように設計できる。浅野グループは、この有機触媒の生体酵素のような速度論とキラル反応場が多点相互作用により基質分子の特定の立体配座を認識することに効果的であることを見いだし、有機触媒を利用することで、他の触媒では活性が高過ぎるために実現不可能だった高選択的不斉反応を開発した (①~③、総説[1])。また、従来の有機触媒は活性部位が主にヘテロ原子で構成されていたため、炭素原子に基づく構造の触媒機能開拓は反応化学の可能性をさらに拡張するという着眼点に基づき、新奇触媒を開発した (④)。

 

① 不斉環化反応

分子内ヘテロマイケル付加反応は生物活性が期待される複素環を簡便に構築できる有用な反応だが、効果的な不斉触媒はこれまで確立されていなかった。浅野グループは、水素結合による穏和な活性化を多点で複合的に利用できる二官能性有機触媒に着目した[2–7]。不斉誘導に効果的な多点相互作用の構築には、多点で活性化して初めて反応を促進する穏和な有機触媒が有効だった。様々な複素環化合物を高エナンチオ選択的に合成し、生体の脂質代謝に関わる L-カルニチン[3] や農薬開発につながる昆虫フェロモン・(2S,5S)-カルコグラン[5] などの不斉合成も達成した。また、高難度な四置換不斉炭素構築や複数キラル炭素の不斉一挙構築を伴う環化反応も開発し、複雑な生物活性環状化合物の最短合成経路を確立した[5–7]。また、最近はこれらの研究をきっかけに、官能基集積型四置換不斉炭素の触媒的不斉構築反応 (多官能性ケトンの不斉シアノ化反応など) の開発をさらに展開している。

 

 

② 軸不斉構築反応

二官能性有機触媒による多点水素結合を軸不斉化合物の立体配座認識にも応用し、医農薬・光電材料・触媒などに利用できる軸不斉化合物の高エナンチオ選択的合成を実現した[8]。本研究には、従来合成が難しかった軸不斉化合物のエナンチオ選択的合成を実現したことに加え、学術的にも二官能性有機触媒の新しい不斉制御機構を開拓した功績がある。

③ α,β-不飽和アシルアンモニウム触媒

共有結合と非共有結合を複合利用することで高酸化状態基質 (カルボン酸誘導) の多点活性化に効果的な触媒系 (α,β-不飽和アシルアンモニウム種を鍵中間体とする触媒) を開発した。この触媒系により、硫黄のマイケル付加を経由する環化反応が高立体選択的に進行することを見いだした[9–11]。特に、代表的な医薬候補分子である 1,5-ベンゾチアゼピン類の高位置・立体選択的環化付加合成法を初めて開発し、様々な置換形式の誘導体合成に展開できる本手法は、その簡便・迅速不斉ライブラリ合成を可能にした [10-12]。生成物のひとつを利用して、抗うつ剤・チアゼシムの最短合成経路も確立した。

④ 炭素–炭素二重結合の触媒機能開拓

有機触媒の反応性・選択性・機能性をさらに拡張する活性部位として炭素–炭素二重結合に初めて着目して、そのルイス塩基性が効果的に機能する不飽和中員環骨格(トランスシクロオクテン)を創出し、新奇有機触媒を開発した[13]。炭素不飽和結合の触媒機能を開拓したことで、ヘテロ原子で構成される既存の塩基とは異なる触媒活性・選択性、炭素官能基に特有のデザイン性・生体適合性などを獲得した。また、同様の不飽和炭素骨格を利用した遷移金属触媒の不斉配位子も開発した[14]。これはトランスシクロオクテン誘導体の面不斉を利用した初めての不斉触媒である。

関連文献

  1. “Multipoint Recognition of Molecular Conformations with Organocatalysts for Asymmetric Synthetic Reactions” Keisuke Asano, Bull. Chem. Soc. Jpn,. 2021, 94, 694. DOI: 10.1246/bcsj.20200343
  2. “Asymmetric Catalytic Cycloetherification Mediated by Bifunctional Organocatalysts” Keisuke Asano and Seijiro Matsubara, J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 16711. DOI: 10.1021/ja207322d
  3. “Organocatalytic Asymmetric Oxy-Michael Addition to a γ-Hydroxy-α,β-Unsaturated Thioester via Hemiacetal Intermediates” Takaaki Okamura, Keisuke Asano, and Seijiro Matsubara, Chem. Commun, 2012, 48, 5076, DOI: 10.1039/C2CC31602A
  4. “Procedure-Controlled Enantioselectivity Switch in Organocatalytic 2-Oxazolidinone Synthesis” Yukihiro Fukata, Keisuke Asano, and Seijiro Matsubara, J. Am. Chem. Soc, 2013, 135, 12160, DOI: 10.1021/ja407027e
  5. “Asymmetric Synthesis of Spiroketals with Aminothiourea Catalysts” Naoki Yoneda, Yukihiro Fukata, Keisuke Asano, and Seijiro Matsubara, Angew. Chem., Int. Ed, 2015, 54, 15497, DOI: 10.1002/anie.201508405
  6. “Organocatalytic Enantio- and Diastereoselective Cycloetherification via Dynamic Kinetic Resolution of Chiral Cyanohydrins” Naoki Yoneda, Yuki Fujii, Akira Matsumoto, Keisuke Asano, and Seijiro Matsubara, Nat. Commun, 2017, 8, 1397, DOI: 10.1038/s41467-017-01099-x
  7. “Enantio- and Diastereoselective Construction of Contiguous Tetrasubstituted Chiral Carbons in Organocatalytic Oxadecalin Synthesis” Yuuki Wada, Ryuichi Murata, Yuki Fujii, Keisuke Asano, and Seijiro Matsubara, Org. Lett, 2020, 22, 4710, DOI: 10.1021/acs.orglett.0c01501
  8. “Bifunctional Organocatalysts for the Enantioselective Synthesis of Axially Chiral Isoquinoline N‑Oxides” Ryota Miyaji, Keisuke Asano, and Seijiro Matsubara, J. Am. Chem. Soc, 2015137, 6766, DOI: 10.1021/jacs.5b04151
  9. “Asymmetric Isomerization of ω-Hydroxy-α,β-Unsaturated Thioesters into β-Mercaptolactones by a Bifunctional Aminothiourea Catalyst” Yukihiro Fukata, Takaaki Okamura, Keisuke Asano, and Seijiro Matsubara, Org. Lett, 2014, 16, 2184, DOI: 10.1021/ol500637x
  10.  “Facile Net Cycloaddition Approach to Optically Active 1,5‑Benzothiazepines” Yukihiro Fukata, Keisuke Asano, and Seijiro Matsubara, J. Am. Chem. Soc, 2015, 137, 5320, DOI: 10.1021/jacs.5b02537
  11.  “Asymmetric Net Cycloaddition for Access to Diverse Substituted 1,5-Benzothiazepines” Yukihiro Fukata, Koichi Yao, Ryota Miyaji, Keisuke Asano, and Seijiro Matsubara, J. Org. Chem, 2017, 82, 12655, DOI: 10.1021/acs.joc.7b02451
  12.  “Catalytic Approaches to Optically Active 1,5-Benzothiazepines” Keisuke Asano and Seijiro Matsubara, ACS Catal, 2018, 8, 6273, DOI: 10.1021/acscatal.8b00908.
  13. trans-Cyclooctenes as Halolactonization Catalysts” Shunsuke Einaru, Kenta Shitamichi, Tagui Nagano, Akira Matsumoto, Keisuke Asano, and Seijiro Matsubara, Angew. Chem. Int. Ed, 2018, 57, 13863, DOI: 10.1002/anie.201808320
  14.  “trans-Cyclooctenes as Chiral Ligands in Rhodium-Catalyzed Asymmetric 1,4-Additions” Tagui Nagano, Shunsuke Einaru, Kenta Shitamichi, Keisuke Asano, and Seijiro Matsubara, Eur. J. Org. Chem, 2020, 7131, DOI: 10.1002/ejoc.202000956

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創薬化学者と薬局薬剤師の二足の草鞋を履きこなす、四年制薬学科の生き残り。
薬を「創る」と「使う」の双方からサイエンスに向き合っています。
しかし趣味は魏志倭人伝の解釈と北方民族の古代史という、あからさまな文系人間。
どこへ向かうかはfurther research is needed.

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2021年度科学研究費助成事業 学術変革領域研究(B)「糖化学ノックイン」の広報アカウントです。生体分子現象の一つ「糖タンパク質の膜動態」にフォーカスし、生命系を理解し制御するための新たな反応化学技術「ケミカルノックイン」の確立を目指しています。
領域ホームページ:https://glycan-chemical-knockin.com/

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