[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

フィル・バラン Phil S. Baran

フィル・S・バラン(Phil.S.Baran、1977年8月10日-)は、アメリカの有機化学者である(写真:Search Scholars Program) 。米国スクリプス研究所教授。

経歴

1997 ニューヨーク大学 学士号取得
2001 スクリプス研究所 博士号取得(K.C.Nicolaou教授)
2001 ハーバード大学 博士研究員(E.J.Corey教授)
2003 スクリプス研究所 助教授
2006 同研究所准教授
2008 同研究所教授

受賞歴

2016 Elias J. Corey Award for Outstanding Original Contribution in Organic Synthesis by a Young Investigator
2014 Mukaiyama Award
2013 MacArthur Fellowship
2013 Royal Society of Chemistry Synthetic Organic Chemistry Award
2013 ACS San Diego Section Distinguished Scientist Award
2012 ISHC Katritzky Heterocyclic Chemistry Award, 2011
2010 Thime-IUPAC Prize in Synthetic Organic Chemistry
2010 ACS Award in Pure Chemistry
2009 Sackler Prize
2007 Hirata Gold Medal
2007 National Fresenius Award
2008 Pfizer Award for Creativity in Organic Chemistry
2006 Beckman Young Investigator Award
2006-2008 Alfred P. Sloan Foundation Fellow
2006-2010 BMS Unrestricted “Freedom to Discover” Grant
2006-2010 NSF Career
2005-2006 Eli Lilly Young Investigator Award
2005 AstraZeneca Excellence in Chemistry Award
2005  DuPont Young Professor Award
2005 Roche Excellence in Chemistry Award
2005 Amgen Young Investigator Award
2005 Searle Scholar Award
2005-2006 GlaxoSmithKline Chemistry Scholar Award
2003 Nobel Laureate Signature Award for Graduate Education in Chemistry, ACS
2001-2003 National Institutes of Health Post-Doctoral Fellowship Award, Harvard
2000 Hoffmann-La Roche Award for Excellence in Organic Chemistry
2000 Lesly Starr Shelton Award for Excellence in Chemistry Graduate Studies
1998-2001 National Science Foundation Pre-Doctoral Fellowship Award, Scripps

研究

学位研究ではK.C.Nicolaou研究室にてCPMolecules[1]の合成に携わり、ポスドク時代はE.J.Corey研究室にてOkaramine N[2]の合成を達成する。院生時代から、その卓抜した合成センスは世界中の有機合成化学者に知られるところであった。独立後、Haouamine A[3]やChartelline C[4]といった歪構造をもつアルカロイドを斬新な方法論を用いて合成することに成功している。

chartellineC.gifokaramineN.gifhaouamineA.gifCP263_114.gif

2007年、Nature誌に「保護基フリーの天然物の全合成」を報告[5]。純粋天然物合成がNature誌に掲載されることは現在では極めて稀で、サイエンスとして認知されうる合成研究を行っていることの証明でもある。その後も、前人未到で非常に困難な構造を有しているため、激しい合成競争が行われているpalau’amineの類縁体であるaxinellamineA, B[6]の初の全合成、新規血管新生阻害剤Cortistatinの全合成[7]やグラムスケールの合成が可能なPsychotrimine、Kapakahines Bの全合成などその驚くべきプロダクティビティと華麗な合成戦略には古典的な手法を多く取り入れているのにもかかわらず、賞賛に値する。さらには2009年に骨格合成と直接的な酸化反応による”2段階”のテルペン合成ををNatureに提唱し、まだまだ改良の余地はあるものの「骨格に対する直接的な官能基化反応」という新合成手法を実現させている。[8]


baranCH.gif

2010年、天然物合成界における最難関化合物の一つといわれていた、海洋性アルカロイドPalau’amineの全合成を達成し、 [9]多数のメディアで報道された。

 2011年にはタキサン類、タキサノンの効率的合成[10]、2013年には抗ガン天然物インゲノールの超短工程全合成を報告し、これまで数十工程かかっていたインゲノールの超短工程合成(14工程)に成功している。[11]

2015-05-17_21-07-49 最近では、反応開発にも取り組み、ヘテロ芳香環の直接官能基化反応や、官能基化オレフィンのクロスカップリング[12]、芳香族ニトロ化合物を用いたオレフィンのヒドロアミノ化反応[13] 、ひずみのある化合物の直接アミノ化[14]を開発している。また脱炭酸型の官能基化反応にも注力している[15,16]

 

コメント&その他

  1. ウッドワードの再来、ポストコーリー、合成化学のライジングサンと称される、スクリプス研究所のバラン教授はいまだ37歳(2015年5月現在)。弱冠26歳にして研究室を運営しはじめ、複雑骨格を有する多数の天然物をいとも簡単に合成しています。 若手の合成化学者の中では頭一つ抜けている印象を受けます。
  2. 収率が全体的にあまりよろしくないことがよく批判の対象になることは多いですが、効率的な合成に向けてそれだけ針の穴を通すような条件で合成していることは確かだと思います。ただ、brsmで表記するのは若干問題があるかと。
  3. 卓越した合成能力とプロダクティビティだけでなく、合成化学に新たなコンセプトを打ち出せる数少ない人材です。今後どのような方向に向かっていくのか。。。非常に楽しみです。
  4. 最近ibookでヘテロ環合成の書籍を販売。(iBooksで有機合成化学を学ぶ:The Portable Chemist’s Consultant
  5. 研究室のブログをはじめて、研究の裏話や、自身で開発した反応の正確な実験手順などを公開している。
  6. 既にBaran研究室出身の多くの学生、ポスドクが世界中で活躍している。学生はRyan Shenvi (スクリプス研)、Noah Burns(スタンフォード)をはじめ、Tom Maimone(UCバークレー),Tim Newhouse (エール大)、Ian Seiple (UCサンフランシスコ)など。
  7. 若干39歳で米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)会員に選出される。通常は50ー60歳代の研究者が選ばれる。

 

関連文献

  1. Nicolaou, K. C. et al. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 2183, 2190, 2202. DOI: 10.1021/ja012010l 
  2. Baran, P. S.; Guerrero, C. A.; Corey. E. J. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 5628. DOI:10.1021/ja034491+
  3. Baran, P. S.; Burns, N. Z. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 3908. DOI: 10.1021/ja0602997
  4. Baran, P. S.; Shenvi, R. A. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 14028. DOI: 10.1021/ja0659673
  5. Baran, P. S.; Maimone, T. J.; Richter, J. M. Nature 2007, 446, 404. DOI:10.1038/nature05569
  6. O’Malley, D.P.; Yamaguchi, J.; Young, I.S.; Seiple, I.B.; Baran, P.S. , Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 3581. doi: 10.1002/anie.200801138
  7. Shenvi, R. A.;  Guerrero, C. A.; Shi, J.; Li, C.-C.; Baran, P. S. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 7241 doi: 10.1021/ja8023466
  8. Chen, K.; Baran, P. S. Nature, 2009, ASAP. doi: 10.1038/nature08043
  9. Seiple, I. B.; Su, S.; Young, I. S.; Lewis, C. A.; Yamaguchi, J.; Baran, P. S. Angew. Chem. Int. Ed. Early View. DOI: 10.1002/anie.200907112
  10. Mendoza, A.; Ishihara, Y.; Baran, P. S. Nature Chemistry 2011, ASAP. DOI: 10.1038/nchem.1196
  11. Jørgensen, L.; McKerrall, S. J.; Kuttruff, C. A.; Ungeheuer, F.; Felding, J.; Baran, P. S. Science 2013341, 878. doi:10.1126/science.1241606
  12. Lo, J. C.; Gui, L.; Yabe, Y.; Pan, C.–M.; Baran, P. S. Nature 2014516, 343. DOI:10.1038/nature14006
  13. Gui, J.; Pan, C-M.; Jin, Y.; Qin, T.; Lo, J. C.; Lee, B. J.; Spergel, S. H.; Mertzman, M. E.; Pitts, W. J.; La Cruz, T. E.; Schmidt, M. A.; Darvatkar, N.; Natarajan, S. R.; Baran, P. S., Science 2015, 348, 886–891. DOI: 10.1126/science.aab0245
  14. Gianatassio, R.; Lopchuk, J. M.; Wang, J.; Pan, C-M.; Malins, L. R.; Prieto, L.; Brandt, T. A.; Collins, M. R.; Gallego, G. M.; Sach, N. W.; Spangler, J. E.; Zhu, H.; Baran, P. S., Science, 2016, 351, 241-246. DOI: 10.1126/science.aad6252
  15. Li, C.; Wang, J.; Barton, L. M.; Yu, S.; Tian, M.; Peters, D. S.; Kumar, M.; Yu, A. W.; Johnson, K. A.; Chatterjee, A. K.; Yan, M.; Baran, P. S. Decarboxylative Borylation, Science, 2017. DOI: 10.1126/science.aam7355
  16. Edwards, J. T.; Merchant, R. R.; McClymont, K. S.; Knouse, K. W.; Qin, T.; Malins, L. R.; Vokits, B.; Shaw, S. A.; Bao, D.-H.; We, F.-L.; Zhou, T.; Eastgate, M. D.; Baran, P. S. Decarboxylative Alkenylation, Nature, 2017 DOI: 10.1038/nature22307

 

関連書籍

関連動画

外部リンク

 

The following two tabs change content below.
webmaster
Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院准教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。
webmaster

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院准教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. モーリス・ブルックハート Maurice S. Brookhar…
  2. イリヤ・プリゴジン Ilya Prigogine
  3. ポール・ロゼムンド Paul W. K. Rothemund
  4. サミュエル・ダニシェフスキー Samuel J. Danishe…
  5. エチオ・リザード Ezio Rizzardo
  6. F. S. Kipping賞―受賞者一覧
  7. ブライアン・ストルツ Brian M. Stoltz
  8. クレイグ・ヴェンター J. Craig Venter

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ペイン転位 Payne Rearrangement
  2. エリック・アレクサニアン Eric J. Alexanian
  3. アセト酢酸エステル/マロン酸エステル合成 Acetoacetic Ester / Malonic Ester Synthesis
  4. ウォルフ転位 Wolff Rearrangement
  5. バルビエ・ウィーランド分解 Barbier-Wieland Degradation
  6. PACIFICHEM2010に参加してきました!②
  7. ノーベル化学賞・受賞者一覧
  8. ビッグデータが一変させる化学研究の未来像
  9. グライコシンターゼ (Endo-M-N175Q) : Glycosynthase (Endo-M-N175Q)
  10. 化学系プレプリントサーバー「ChemRxiv」のβ版が運用開始

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

役に立たない「アートとしての科学」

科学の研究には、真理の探究という側面と、役立つ発明という側面があります。この二面性を表す言葉…

表現型スクリーニング Phenotypic Screening

表現型スクリーニング(Phenotypic Screening)とは、特定の生物現象に影響を与える化…

NMR解析ソフト。まとめてみた。①

合成に関連する研究分野の方々にとって、NMR測定とはもはやルーティーンワークでしょう。反応を仕掛けて…

エリック・アレクサニアン Eric J. Alexanian

エリック・J・アレクサニアン(Eric J. Alexanian、19xx年x月x日-)は、アメリカ…

光C-Hザンチル化を起点とするLate-Stage変換法

2016年、ノースカロライナ大学チャペルヒル校・Eric J. Alexanianらは、青色光照射下…

硤合 憲三 Kenso Soai

硤合 憲三 (そあい けんそう、1950年x月x日-)は、日本の有機化学者である。東京理科大学 名誉…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP