[スポンサーリンク]

日本人化学者インタビュー

第64回「実際の化学実験現場で役に立つAIを目指して」―小島諒介 講師

[スポンサーリンク]

第64回目の研究者へのインタビューは京都大学大学院医学研究科の小島諒介 先生にお願いいたしました。

小島先生はもともと化学畑ではなく、今をときめく人工知能(AI)研究がご専門です。ただ、その応用先としての化学分野にも強い興味を持っておられ、学術変革領域A「デジタル有機合成」の一班員としての研究も進められています。

このようなご経歴とご専門から、第41回ケムステVシンポの講師としてお話し頂けることになっています。

それでは今回もインタビューをご覧ください!

Q. あなたが化学者になった理由は?

私は化学者というわけではないですが,「実際に使える人工知能」をテーマに研究をしています.専門はどちらかというと計算機なのですが,計算機はその中ですべて0と1の組み合わせで非常に複雑な計算を行っていますが,それとの関連で,特に有機化学という分野は炭素などの少ない原子の組み合わせで複雑なものを表現するという点で,計算機と同じく非常に面白い分野であると思っています.

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

もし,今の専門でなかったとしても,何らかの形で研究をしていたいと思っています.
世の中にまだないものを作ったり,できないことをやったりしてみたいと思っているので,形が違ってもそういったことをやってるんじゃないかなと思ってます.

Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

AIというと莫大な量のデータが必要というイメージがありますが,一つの研究施設やラボで用意できるデータは限られているので,そのような手元にあるデータは限られている状況でのAIによるサポートとしてどういったことが出来るかといった研究を行っています.
実際の化学実験のラボなどで使ってもらえるくらいのクオリティのものができていくといいなと思っています.

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

計算機の基礎を考えたアラン・チューリングとかでしょうか,今だとどうしても既存の計算機に引っ張られてしまうので当時どうしてその発想になったのか聞いてみたいですね(理解できるかはおいておいて)

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

計算機実験ですが,最近は非常に大規模なデータで学習することで,様々なタスクに応用できる基盤モデルと呼ばれる技術に注目しており,その学習を行うための複数の計算機を用いた大規模実験の試みをいくつか行っています.これによっていったん大量データで学習した後はそれほどデータがない状況でも活用できるのではないかと考えています.

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

「砂漠の島」と言われてパッとイメージできなかったですが,調べてみたら実在するんですね.
高校の図書館にあって私が人工知能や計算機に興味を持った本ですが,時間がたくさんあったら今もう一度読んでみたいと思っています.

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

ダグラス・R. ホフスタッター
¥6,380(as of 04/28 23:17)
Amazon product information

Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

そんなに知り合いが多くないですが,同じく機械学習と化学を扱ってる横浜市立大学の寺山慧 先生を上げたいと思います.機械学習と化学を両方やってる人がそんなに多くない中で,私よりも長く活躍されているので面白い話が聞けるのではないかと思います.

*本インタビューは2023年11月9日に行われたものです

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第137回―「リンや硫黄を含む化合物の不斉合成法を開発する」St…
  2. 第67回―「特異な構造・結合を示すランタニド/アクチニド錯体の合…
  3. 第32回 液晶材料の新たな側面を開拓する― Duncan Bru…
  4. 第172回―「小分子変換を指向した固体触媒化学およびナノ材料化学…
  5. 第15回 触媒の力で斬新な炭素骨格構築 中尾 佳亮講師
  6. 第48回「分子の光応答に基づく新現象・新機能の創出」森本 正和 …
  7. 第89回―「タンパク質間相互作用阻害や自己集積を生み出す低分子」…
  8. 第47回―「ロタキサン・カテナン・クラウンエーテルの超分子化学」…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 向山・鈴木グリコシル化反応 Mukaiyama-Suzuki Glycosylation
  2. 神戸製鋼所が特殊合金粉末を開発 金属以外の多様な材料にも抗菌性付加
  3. スマホページをリニューアルしました
  4. 息に含まれた0.0001%の成分で健康診断
  5. 熱を効率的に光に変換するデバイスを研究者が開発、太陽光発電の効率上昇に役立つ可能性
  6. 複雑天然物Communesinの新規類縁体、遺伝子破壊実験により明らかに!
  7. ポンコツ博士の海外奮闘録 外伝② 〜J-1 VISA取得編〜
  8. 2007年秋の褒章
  9. 小山 靖人 Yasuhito Koyama
  10. タミフル、化学的製造法を開発…スイス社と話し合いへ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2023年11月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP