[スポンサーリンク]

ケムステニュース

トムソン:2007年ノーベル賞の有力候補者を発表

[スポンサーリンク]

2007年ノーベル賞受賞者発表に先立ち、トムソンはノーベル賞受賞の可能性のある研究者として、2007 Thomson Scientific Laureates (トムソンサイエンティフィック栄誉賞)をここに発表します。(引用:トムソンISI)

 

いよいよ今年もノーベル賞のシーズンがやって参りました!気になる化学賞は10月10日・日本時間19時45分発表です。待ち遠しいですね!

一ヶ月前のこの時期には、トムソンISI社によってノーベル賞の授賞予想が例年発表されています。トムソン社は世界最大級の特許・学術文献データベースを提供している会社で、文献引用数などの分析結果を参考にして、受賞者を予測しているようです(これについてはSciencePortalの解説記事が詳しいです)。

今年の物理学賞候補には日本人の名前も見られますが、ここは化学のブログなので、化学賞候補について簡単に紹介してみることにします。

 

物理、化学分野の革命を起こすきっかけとなったカーボンナノチューブの先駆的な研究に対して

飯島澄男 (名城大学 教授、NEC特別主席研究員)

 

iijima.jpg
(写真:Nanoscienceworks.org)

今ではナノテクノロジーの花形材料として名高い、カーボンナノチューブを発見された方です。専門分野の関係上、物理学賞候補として取り上げられていますが、化学賞での受賞も十分に考えられます。それほど応用性・注目度の高い材料のひとつです。

 

精密有機合成における多大な貢献・業績

Samuel J. Danishefsky (コロンビア大学教授・スローン・ケッタリング記念癌研究所教授)

 danishefsky
(写真:Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)

Dieter Seebach (スイス連邦工科大学チューリッヒ校名誉教授)

seebach.jpg
(写真:Tetrahedron Symposium)

Barry M. Trost(スタンフォード大学教授)

 trost
(写真:Thieme Chemistry)

トムソンのトピックでは各々違う風に書かれていますが、要はどれもが精密有機合成の進歩に大きく貢献した研究者達です。

ダニシェフスキーは、トムソン予想でノーベル賞候補とされたニコラウと並ぶ、複雑天然物の全合成研究における大御所です。ぜーバッハはジチアン法などをはじめとする画期的な合成手法の開発で有名です。トロストはパラジウム触媒を用いるアルキル化(辻-Trost反応)の開発で顕著な業績を上げており、最近ではグリーンケミストリー潮流のさなか、効率的化学変換プロセスの評価指標である「アトムエコノミー」概念を提唱しています。

 

ところで、例年大々的に発表されるトムソン予想ですが、その的中率は2002年から「24人中4人」ということで、お世辞にも高いとは言えません。その理由はおそらく客観的統計データからの受賞者予測が難しい、ということに尽きるのでしょう。

 

論文引用数は研究者の業績を測る上で役立つ指標です。しかし、「ノーベル賞学者はみな沢山論文を出しているのか?引用数がとても多い論文を報告しているのか?」と問われれば、過去の例を見る限り必ずしもそうではないようです(2002年ノーベル化学賞の田中耕一さんなどは良い例でしょう)。原始報告にインスピレーションを受け革命的発見を成し遂げた科学者がいたが、ノーベル賞を受けたのは原始報告をした科学者のほうだった、という例もあり得るわけです。

 

また、革命的な発見であっても、インパクトファクターの低い(平均引用数の少ない)ジャーナルに報告されてしまうことは少なくありません。トップジャーナルのレフェリーは流行分野には強いのですが、既存の価値観に基づく評価をしがちなため、時代の先を行き過ぎている発見を評価しきれずリジェクトしてしまう、ということが往々にして起こりえるためです (今ではノーベル賞候補との呼び声も高い化学反応「鈴木-宮浦カップリング」も、最初の報告はトップジャーナルではありませんでした)。

 

勿論Nature、Scienceという超一流ジャーナルに載った研究論文が決め手になった、という例も沢山あるので少々複雑なのですが、いずれにせよ単純に研究者の知名度や論文引用数だけで受賞が決まる、と言うわけではなさそうです。

 

とはいえ過去のノーベル賞を見ていると『”現在”重要視されている分野を発展させた人たちから選ばれる』ような傾向は確かにあるようです。つまりどんなに画期的であっても、先を行きすぎて現時点で全く役に立ってなかったり、王道になってないような研究分野からは選ばれにくい傾向にあるようです。このあたりを考えに入れれば、受賞分野はある程度読めそうです。

 

いずれにせよ、トムソンISIの調査で候補に挙がるような研究者は疑いなく「当該分野で超一流」といって良いでしょう。?受賞者を自分で予想したいなら、「ノーベル賞に匹敵するような権威ある賞」の受賞者も要チェックです。そういった賞の受賞者も、もちろん超一流の研究者ですから。

 

などは、ノーベル化学賞受賞との相関が高い賞です。

発表が楽しみですね!

 

外部リンク

cosine

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 室温で液状のフラーレン
  2. 理化学研究所、植物の「硫黄代謝」を調節する転写因子を発見
  3. 三菱ケミカル「レイヨン」買収へ
  4. 理研も一般公開するよ!!
  5. 三菱化学、酸化エチレン及びグリコールエーテルの価格を値上げ
  6. EU、玩具へのフタル酸エステル類の使用禁止
  7. 京のX線分析装置、国際標準に  島津製・堀場、EU環境規制で好調…
  8. 「ペプチドリーム」東証マザーズ上場

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 面接官の心に刺さる志望動機、刺さらない志望動機
  2. スティーブ・ケント Stephen B. H. Kent
  3. フェルキン・アーン モデル Felkin-Anh Model
  4. モンサント酢酸合成プロセス Monsanto Process for Acetic Acid Synthesis
  5. 1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物:1,2,3,4-Cyclobutanetetracarboxylic Dianhydride
  6. 「つける」と「はがす」の新技術|分子接合と表面制御 R3
  7. アンソニー・スペック Anthony L. Spek
  8. 続・名刺を作ろう―ブロガー向け格安サービス活用のススメ
  9. N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン:N,N,N’,N’-Tetramethylethylenediamine
  10. 低温低圧・常温常圧窒素固定の反応開発 最新情報サマリー その1

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年9月
« 8月   10月 »
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

注目情報

最新記事

【四国化成工業】新卒採用情報(2023卒)

◆求める人財像:『使命感にあふれ、自ら考え挑戦する人財』私たちが社員に求めるのは、「独創力」…

四国化成工業ってどんな会社?

私たち四国化成工業株式会社は、企業理念「独創力」のもと「有機合成技術」を武器に「これまでになかった材…

ポンコツ博士の海外奮闘録 外伝② 〜J-1 VISA取得編〜

ポンコツシリーズ番外編 その2 J-1 VISA取得までの余談と最近日本で問題になった事件を経験した…

結合をアリーヴェデルチ! Agarozizanol Bの全合成

セスキテルペンAgarozizanol Bの全合成が初めて達成された。光照射下で進行するカスケード反…

有機合成化学協会誌2022年1月号:無保護ケチミン・高周期典型金属・フラビン触媒・機能性ペプチド・人工核酸・脂質様材料

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2022年1月号がオンライン公開されました。本…

第167回―「バイオ原料の活用を目指した重合法の開発」John Spevacek博士

第167回の海外化学者インタビューは、ジョン・スペヴァセック博士です。Aspen Research社…

繊維強化プラスチックの耐衝撃性を凌ぐゴム材料を開発

名古屋大学大学院工学研究科有機・高分子化学専攻の 野呂 篤史講師らの研究グループは、日本ゼオンと共同…

反応化学の活躍できる場を広げたい!【ケムステ×Hey!Labo 糖化学ノックインインタビュー②】

2021年度科学研究費助成事業 学術変革領域研究(B)に採択された『糖鎖ケミカルノックインが拓く膜動…

UiO-66: 堅牢なジルコニウムクラスターの面心立方格子

UiO-66 は六核ジルコニウムオキシクラスターを SBU に持ち、高い熱安定性 · 化学安定性を示…

危ない試薬・面倒な試薬の便利な代替品

実験室レベルでは、未だに危険な試薬を扱わざるを得ない場合も多いかと思います。tert…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP