[スポンサーリンク]

ケムステニュース

2021年、ムーアの法則が崩れる?

[スポンサーリンク]

「集積回路の実装密度は18カ月ごとに2倍になる」。このムーアの法則は、1965年にインテル共同創業者のゴードン・ムーア氏が唱えた。経験則だが、集積回路(半導体)の歴史はこの法則を、回路上のトランジスタやリード線といった素子を微細化することで実現してきた。時間とともに技術は進歩し集積回路は高密度化し、それが結果として高性能化、高速化と低価格化を伴う。(中略)

しかしこの法則は、2021年、つまりあと5年で崩れるという。米国半導体工業会(SIA)が出した「2015年の半導体国際ロードマップ」と題するレポートで予測されている。(引用、ITmedia ニュース 8月16日(火)11時44分配信

科学者への影響

科学者に身近なところでは計算化学が最も影響を受けます。10 年前は計算することのできなかった大きな分子も、最近では cpu の性能向上に伴い計算できるようになりました。このまま cpu の性能が向上し続ければ、量子化学計算なんて一瞬で終わるようになるのではないか?と思ってしまいますよね。しかし、 cpu の性能は現在頭打ちになろうとしています。

引用元の記事では、今後は 3 次元方向への回路の拡張が研究されていると書かれています。そのような解決方法に加え、コンピューターの処理性能を上げるという観点で注目されているものに、並列化と量子コンピューターもあります。

並列化?

cpu 1 枚当たりの性能は限界近くまで来てしまったので、それらを複数枚使用して実行速度を上げようという試みです。

スーパーコンピューターに代表されるように、現在並列化の研究が盛んに行われています。しかし、効率的に並列化するためには、ある処理を複数の cpu に割り振り分けることができるようにプログラムも少し書き換えなければなりません。

これは、研究やスポーツに例えることができます。一人では、できることに限界がありますが、研究室または会社など周りの人と協力(並列化)することにより、大きな成果を上げることができます。しかし、複数人に割り振ることができず、一人でこなさなくてはいけない仕事も時にはあります。そのような場合には、割り振ることのできる形にしなくてはなりません(並列化用にプログラムを書き換えなければいけないことに相当)。

量子コンピューター

通常、半導体上の回路に電気が流れる状態を 1 、流れていない状態を 0 と考えます。(そのため、プログラムの実行ファイルであるバイナリーファイルは 0 と 1 で書かれています。)

量子コンピュータには、これら 0 と 1 の重ね合わせの状態が追加されます。そのため、はるかに多くの処理が可能になると考えられていますが、まだまだ研究途上です。

まとめ

ノートパソコンやスマートフォンの普及、家電の高性能化などは、間違いなく半導体の高性能化によって支えられてきました。しかし、それが頭打ちとなろうとしています。どのようにして事態を打開していくのか、今後の展開に注目です。

関連書籍

[amazonjs asin=”4756150772″ locale=”JP” title=”過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042)”]
Avatar photo

ゼロ

投稿者の記事一覧

女の子。研究所勤務。趣味は読書とハイキング ♪
ハンドルネームは村上龍の「愛と幻想のファシズム」の登場人物にちなんでま〜す。5 分後の世界、ヒュウガ・ウイルスも好き!

関連記事

  1. 可視光全域を利用できるレドックス光増感剤
  2. パーキンソン病治療の薬によりギャンブル依存に
  3. ひらめききらめく:/1 「創」のとき、夢の鼓動 /北海道
  4. 毒を持ったタコにご注意を
  5. 国際化学オリンピック2022日本代表決定/化学グランプリ2022…
  6. 住友製薬-日本化薬、新規抗がん剤で販売提携
  7. 第一製薬、仏サノフィに脳梗塞予防薬の営業権を返還
  8. 米デュポン、高機能化学部門を分離へ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ゲルセジン型アルカロイドの網羅的全合成
  2. エタール反応 Etard Reaction
  3. パラジウム光触媒が促進するHAT過程:アルコールの脱水素反応への展開
  4. 初めてTOEICを受験してみた~学部生の挑戦記録~
  5. 内部アルコキシ効果 Inside Alkoxy Effect
  6. 小さなケイ素酸化物を得る方法
  7. ヘゲダス遷移金属による有機合成
  8. 接着系材料におけるmiHub活用事例とCSサポートのご紹介
  9. ハロゲン移動させーテル!N-ヘテロアレーンのC–Hエーテル化
  10. 計算化学:汎関数って何?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年8月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP