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元素

リン Phosphorusー体の中の重要分子DNAの構成成分。肥料にも多用される

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遺伝物質であるDNAや核酸などの構成物質であるリン。リンには、炭素のようにさまざまな同素体が存在します。

 

リンの基本物性データ

分類 非金属、ミネラル
原子番号・原子量 15 (30.973761)
電子配置 3s23p3
密度 1823kg/m3
融点 44.2℃
沸点 280℃
硬度
色・形状 無色/赤/銀白色・固体
存在度 地球100ppm、宇宙 1.04 x 104
クラーク数  0.08%
発見者  ヘニング・ブラント(1669年)
主な同位体 31P(100%), 32P(β, 14.262日)
用途例 食品添加物、研磨剤、不凍液、DNA、RNA、肥料、サリン、マッチ、配位子
前後の元素 ケイ素ーリンー硫黄

さまざまな同素体がある元素

リンの発見は元素発見の歴史の中でもかなり古く、1669年にドイツの錬金術師であったプラントが、錬金術の実験のため尿を蒸発している際に発見しました。リンの英語名Phosphorusは、ギリシャ語で「光を運ぶもの」にちなんでいます。

リンには炭素や硫黄と同様に多くの同素体が存在し、白リン(黄リン)、赤リン*、紫リン、黒リンなど、その色によって名前がつけられています。白リンを無空気下、3000℃以上に熱すると、マッチの先に使われている赤リンに変化します。白リンは空気中で自然発火しますが、赤リンは空気中でも安定な物質です。紫リンは金属のような光沢をもっているため、金属リンともよばれます。

リンの同素体と結晶構造(出典:wikipedia)

リンの同素体と結晶構造(出典:wikipedia)

 

体のエネルギー源、遺伝子情報を持つ分子の主要構成元素

人間の体には体重の1割ほどのリンが含まれています。特に体に重要なリン成分は、遺伝物質であるDNA(デオキシリポ核酸)や体のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)、細胞膜の主要な構成元素であるりん脂質などです。

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体に重要なりん成分

 

化学肥料の原料

肥料は、三大要素とよばれる元素:窒素、カリウム、リンが非常に重要な役割を果たしています。リンが欠乏すると植物は暗緑色となり、開花や結実が遅れる、花数が少なくなるといった問題が生じます。また、動物の栄養としても、植物中のりん含有量は重要です。リンを含む肥料の代表的なものは過リン酸石灰です。そのほか有機系の肥料としては骨粉、鶏糞などがあります。

 

猛毒サリン

1995年に起こった地下鉄サリン事件で使われたサリンも、リンを有する化合物です。とはいっても、リン化合物がすべて毒だとは思わないでください。

サリンは戦前のドイツで毒ガスとして生産されていた化合物で、アセチルコリンエステラーゼという神経の情報伝達に関わる酵素を阻害し、死に至らしめます。しかし、非常に不安定なので、水分と反応しフッ化水素とメチルホスホン酸イソプロピルに分解し、さらにメチルホスホン酸イソプロピルはイソプロピルアルコールとメチルホスホン酸に分解され無毒になります。そのため、実験室レベルでは比較的容易に合成可能ですが、大量に合成するとなると、水や空気を完全に遮断しなければならないため非常に大掛かりな設備が必要となります。

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サリンとサリンの水による分解

コラム:地下鉄サリン事件と松本サリン事件

日本で起きたサリン散布事件は2つあります。一つは1995年3月20日に東京都の地下鉄でカルト新興宗教教団のオウム真理教が起こした無差別テロ事件、地下鉄サリン事件です。 毒ガスのサリンが散布されて、死者を含む多数の被害者(死者12人、重軽傷者5600人)を出し、日本の社会に大きな衝撃を与えました。

また、その1年前の1994年には、長野県松本市で猛毒のサリンが散布され、死者7人・重軽傷者660人を出しました(松本サリン事件)。この事件では、原因がサリンであることがわかった後、農薬からサリンがつくれるという誤報により、有機リン系の農薬を所有していた第一発見者が関与を疑われ、冤罪を受ける事態となりました。確かに農薬は有機リン系の化合物から作られているものが多いのですが、同じリン化合物だからといって、そこからサリンを作ることはできません。

ただし、中毒になった場合の解毒剤は有機リン系農薬もサリンも同じで、プラリドキシムヨウ化メチル(PAM)という化合物を使います。この化合物がなかったら、地下鉄サリン事件では死者がさらに600人以上も増えていたとも言われています。

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リンに関するケムステ記事

 

関連書籍

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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