[スポンサーリンク]

元素

カリウム Potassium 細胞内に多量に含まれる元素

[スポンサーリンク]

カリウムは、ナトリウムと並んでミネラルの代表格です。様々な化合物と塩を作ります。なかには青酸カリなど有毒なものもありますが、決してカリウムが悪いわけではありません。

カリウムの基本物性データ

分類 アルカリ金属、ミネラル
原子番号・原子量 19 (39.0983)
電子配置 4s1
密度 862kg/m3
融点 63.65℃ 
沸点 774℃
硬度 0.4
色・形状 銀白色・固体
存在度 地球9100ppm、宇宙 3370
クラーク数 2.4% (7位)
発見者 ハンフリー・デイビー(1807年)
主な同位体 39K(93.2581%), 40K(0.0117%), 41K(6.7302%)
用途例 光電子素子、写真の製版(KBr)、花火(クロム酸カリウム、塩素酸カリウム)、非常用酸素発生剤
前後の元素 アルゴンカリウムーカルシウム

カリウムとポタシウム

植物の灰であるポタシ(ptash: 苛性カリ)の中に何らかの新しい元素が存在することは古代から知られていましたが、19世紀はじめまで単離することができませんでした。デービーは電気化学に精通しており、1807年に苛性カリを電気分解することによってはじめてカリウムを単離しました。

名前は、見てのとおり、ポタシ(potash)からポタシウム(Potassium)と名付けられました。日本での呼称「カリウム」は実はドイツ語であり、アラビア語で植物の灰を意味するqualikalijanに由来しています。

細胞内にはカリウム、細胞外にはナトリウム

体内には多くのカリウムが含まれています。しかし、体内のカリウムは細胞の内側と外側とで、大きな濃度差があります。カリウムの約98%はカリウムイオンK+として細胞内に存在し、細胞外には2%しかないのです。これに対して、同じように体内に多く含まれているナトリウムは、ほとんどがナトリウムイオンNa+として細胞外に存在しています。

2016-10-27_03-19-32

どうしてこのようなことが起こるのでしょう。それは、カリウムを細胞内に取り込み、ナトリウムを細胞外に排出するポンプがあるからです。これをナトリウム・カリウム・イオンポンプといいます。

2016-10-27_03-07-31

このポンプの正体はナトリウムカリウムATPアーゼという酵素です。この働きによりカリウムとナトリウムを細胞間で行き来させることで、神経刺激の伝達や筋肉の収縮、細胞内の浸透圧の保持、酸アルカリ平衡の保持を行っています。そのためカリウムが欠乏すると、これらに問題が生じます。逆に多すぎてもよくないので、食物として摂取されたカリウムは腎臓の働きにより半分程度が尿や汗などとともに体外に排出されて、一定の量が保たれています。

 

カリウムの塩

カリウムは様々なものと塩を形成し、そのカリウム塩は多くのところで利用されています。例えば硫酸塩(硫酸カリウムK2SO4)と塩酸塩(塩化カリウムKCl)はカリ肥料として用いられ、硝酸塩(硝酸カリウムKNO3)は、石鹸になります。

また、シアン化水素(青酸 HCN)のカリウム塩であるシアン化カリウム(KCN)は俗に青酸カリとよばれ、歴史上多くの毒殺に使われてきました。もっとも、カリウム自体に毒があるわけではありません。体内でかい離したシアン化物イオンがヘム鉄に結合して酸素との結合を阻害することにより、酸素の供給が困難となり死に至るのです。

カリウム塩 用途
塩化カリウムKCl 肥料(カリ肥料)
硫酸カリウムK2SO4 肥料(カリ肥料)
硝酸カリウムKNO3 燃料補助剤
脂肪酸+カリウム 石けんの原料
臭化カリウムKBr 犬やネコの抗てんかん薬
リン酸化カリウムK3PO4 緩衝液
ヨウ化カリウムKI デンプンの検出

カリウムに関するケムステ記事

関連動画

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 希少金属
  2. 元素ネイルワークショップー元素ネイルってなに?
  3. アルミニウム Aluminium 最も多い金属元素であり、一円玉…
  4. ネオン Neon -街を彩るネオンサイン
  5. 硫黄 Sulfurーニンニク、タマネギから加硫剤まで
  6. リン Phosphorusー体の中の重要分子DNAの構成成分。肥…
  7. 森田浩介 Kosuke Morita
  8. 「元素戦略プロジェクト」に関する研究開発課題の募集について

注目情報

ピックアップ記事

  1. 配糖体合成に用いる有機溶媒・試薬を大幅に削減できる技術開発に成功
  2. ペロブスカイト太陽電池が直面する現実
  3. ピラーアレーン
  4. シアノヒドリンをカルボン酸アミドで触媒的に水和する
  5. 化学実験系YouTuber
  6. 令和元年度 のPRTR データが公表~第一種指定化学物質の排出量・移動量の集計結果~
  7. 危険物データベース:第2類(可燃性固体)
  8. 自宅での仕事に飽きたらプレゼン動画を見よう
  9. 合成化学発・企業とアカデミアの新たな共同研究モデル
  10. カラムやって

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年10月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP