[スポンサーリンク]

日本人化学者インタビュー

第28回「ナノバイオデバイスが拓く未来医療」馬場嘉信教授

[スポンサーリンク]

さて、今回の研究者へのインタビューは名古屋大学工学研究科の馬場嘉信教授。第7回の杉本教授、第21回の深瀬教授からのご推薦です。馬場教授の研究は最先端のナノデバイス開発。なかでも医療への応用を目指す「ナノバイオデバイス」に注目し、ナノピラーやナノファイバー、量子ドットなど様々なナノバイオデバイスを生み出しています。簡単に健康状態のチェックや診断ができるシステムの開発を究極の目標として、その第一線を走っている馬場先生。恒例になりますが、どうして化学者を目指したのか。そこから聞いていきたいと思います。それではどうぞ!

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

記憶はありませんが、父曰く、私は3~4歳の頃から、将来は科学者か指揮者になると言っていたそうです。小学1年生になり、夏休みの理科の自由研究で賞をもらったことなどから、さらに科学に興味を持つようになりました。県の自由研究の発表会に出て、小学1年生でポスター発表したのをおぼろげながら覚えています。ただ、これも母に聞くと、この自由研究は当時小学校の先生だった父の手が随分(ほとんど)入っていたそうです。

大学受験時に、理学部の物理か化学で悩んだ結果、高校までの物理と化学では、化学のほうが面白そうだったので、化学の道に進みました。その後、九州大学で大橋茂先生の研究室に入り、現在の研究テーマの芽に出会いました。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

前述の通り、小さいときから、科学者(化学者)でなければ、指揮者になりたかったようです。これも、私が3~4歳のときに、Bruno Walter指揮のベートーベンの運命のレコードを父が購入して、私に良く聞かせていたそうで、レコードを聴きながら指揮の真似事をしていたそうです。音楽は全く手を付けたことはありませんが、今でも、一度でいいので、オーケストラを指揮したいという気持ちがあります。

 

Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

現在、ナノバイオデバイスの研究を進めています。半導体超微細加工技術および自己組織化ナノ構造構築技術を駆使して、これまで不可能であったゲノムの超高速解析、バイオマーカーの超高感度検出、単一分子・単一細胞計測などの基礎研究の展開と、がん診断、がん治療、iPS細胞の再生医療などのバイオメディカル分野で実用化可能な技術開発を行っています。今後は、私のグループでしかなし得ない新たなナノバイオデバイスの創製とナノバイオデバイスに基づいた新たな産業分野の開拓を進めていきたいと思います。

2015-10-15_19-07-22

細胞から超高速に遺伝情報を読み取るナノバイオデバイス

 

2015-10-15_19-08-01

いつでも・どこでも健康診断できるイムノピラーデバイス

 

Q. あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

11世紀の紫式部、12世紀の平清盛、13世紀のMarco Polo、14世紀の世阿弥、15世紀のLeonardo da Vinci、16世紀の織田信長、17世紀のIsaac Newton、18世紀のWolfgang Amadeus Morzartと名古屋最古の料亭で、花見の宴を催したいと思います。これだけのメンバーが集まれば、幅広い分野のとてつもなく面白い話しができると思います。

2015-10-15_19-38-23

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

最後に実験したのは、徳島大学で教授になって数年たった1999年頃だと思います。そのときは、疾患関連遺伝子をPCRで増幅して、マイクロチップで解析しました。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

音楽であればBruno Walter指揮のシンフォニー、本であれば、何度読んでも1帖の最初で挫折する源氏物語を持って行きます。

 

Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

東大院工 片岡一則先生、東大院工 北森武彦先生、東工大 三原久和先生を推薦します。

 

関連動画

 

関連書籍

 

関連リンク

 

馬場嘉信教授の経歴

2015-10-16_11-22-36

1981年九州大学理学部化学科卒業。1986年同大学院理学研究科化学専攻博士課程修了、1986年大分大学助手・講師、1990年神戸薬科大学講師・助教授、1997年徳島大学教授を経て、2004年より名古屋大学・工学研究科教授。同大学先端ナノバイオデバイス研究センター長、同大学シンクロトロン光研究センター長、同大学未来社会創造機構教授、同大学医学系研究科協力講座教授、産業技術総合研究所健康工学研究部門研究顧問を歴任。専門は分析化学、ナノバイオサイエンス。[受賞]Merck Award(2004), 日本化学会学術賞(2008)、日本分析化学会学会賞(2015)他

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 第55回―「イオン性液体と化学反応」Tom Welton教授
  2. 第53回「すべての化学・工学データを知識に変える」金子弘昌准教授…
  3. Christoph A. Schalley
  4. 第124回―「生物・医療応用を見据えたマイクロ流体システムの開発…
  5. 第32回「生きている動物内で生理活性分子を合成して治療する」田中…
  6. 第46回―「分子レベルの情報操作を目指す」Howard Colq…
  7. 第176回―「物質表面における有機金属化学」Christophe…
  8. 第99回―「配位子設計にもとづく研究・超分子化学」Paul Pl…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 高分子鎖デザインがもたらすポリマーサイエンスの再創造 進化する高分子材料 表面・界面制御アドバンスト コース
  2. 博士課程の夢:また私はなぜ心配するのを止めて進学を選んだか
  3. 【書籍】セルプロセッシング工学 (増補) –抗体医薬から再生医療まで–
  4. 2009年1月人気化学書籍ランキング
  5. 理研、放射性同位体アスタチンの大量製造法を開発
  6. Lindau Nobel Laureate Meeting 動画集のご紹介
  7. 化学研究ライフハック: Evernoteで論文PDFを一元管理!
  8. 本当の天然物はどれ?
  9. 連続アズレン含有グラフェンナノリボンの精密合成
  10. 電気化学的HFIPエーテル形成を経る脱水素クロスカップリング反応

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年10月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP