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海外化学者インタビュー

第57回―「アニオン認識の超分子化学」Phil Gale教授

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第57回の海外化学者インタビューは、フィリップ・ゲール教授です。英国サウサンプトン大学化学部に在籍(訳注:現在はシドニー大学に在籍)し、超分子化学、特にアニオン種の結合・センシング・輸送に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

3人から影響を受けています。

リバプールのGateacre Comprehensiveスクールに通っていましたが、Dave Lutnerという優秀な化学の先生がいました。彼の授業は感動的で、本当に楽しかったです。当時は世界的にも健康・安全への配慮はそこまででもなかったので、楽しい実演を見る機会や、自分たちでも実際にやる機会はかなり多くありました。

1990年初頭の大学時代、オックスフォード大学のPaul Beerのグループで学部生(丸1年、フルタイムで研究をします)として働き始めるまでは、自分の居場所を見つけられませんでした。Paulは超分子化学者であり、当時、ビピリジル基を含むビスクラウンエーテル分子を研究していました。遷移金属への配位によって、分子の立体配座制御に使用できる分子です。分子を分子機械と捉えることができるというアイデアには、心底魅力を感じました。

Paulのもとでカリックスアレーン化学に関する研究で博士号を取得したあと、テキサス大学オースティン校のJonathan Sesslerのグループに移りました。刺激的なメンターであるJonathanと一緒に仕事をする機会を得たことと、新たなアニオン受容体クラスの重要な発見につながるプロジェクトに取り組めたことは、とても幸運でした。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

出版業にますます興味を持つようになり、編集委員会や編集者として多くの雑誌に寄稿する機会を得ました。この経験は本当に楽しく、科学出版にフルタイムで従事することは、面白いチャレンジになると思っています。化学におけるオープンアクセスジャーナルの潜在的台頭とジャーナルの一般的普及によって、今後はその品質維持が争点になると思います。そのための努力は、本当に価値ある目標だと思います。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

化学者はすでに世界全体に大きな貢献をしていると思いますが、一般の人々には認識されていないことが多いです。化学コミュニティ外のグループと協力することで、こういった問題を解決することができるでしょう――彼らが小学生であろうと政治家であろうと。この状況を改善するために何らかの努力をする心づもりがなければ、「化学の評判が悪い」と文句を言うことはできないでしょう。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

Adolph von Baeyerです。19世紀後半に彼は、私がキャリアのなかで取り組んできた多くの化学を始めています。NMR、結晶構造、HPLCなどは使っていませんでした。彼の研究と、彼の師であるKekuléについて話したいと思います。

Adolph von Baeyer(1835-1917)写真:Wikipedia

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

分子模型を使うものでよいなら、3時間ほど前です!

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

CDは、若かりし思い出させるNew Orderの「Substance」でなくてはなりません。

島で蚊を退治するための大型本(蚊にアレルギーがあるもので)が必要ですね。昔からずっと人気のある「ロード・オブ・ザ・リング」を持っていこうと思います。

原文:Reactions – Phil Gale

※このインタビューは2008年3月28日に公開されました。

cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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